【戦後81年】慰霊碑は誰が守る?遺族会の高齢化や資金難で維持が困難に 街の声からは“複雑な心境”も
慰霊碑をめぐる課題。高齢化や資金難などで、残したいという思いと、維持できない現実に直面しています。
民間で建てられた戦没者の慰霊碑。全国に1万6000基以上。
今、この「慰霊碑の管理」が課題になっています。名古屋市天白区・平針地区の慰霊碑もその1つです。 管理しているのは、平針地区戦没者遺族会・近藤幸文さん(72)が、中心となっています。
「自分の意思とは関係なく戦地に赴いたことがあったということを分かってほしい」(近藤さん)
近藤さんが伝えたいのは、慰霊碑に刻まれた戦争の記憶です。しかし、その記憶を守る人が少なくなっています。
「数年前は10人を超える人が集まって今や5人。少ないときは1人とか2人とか。高齢化でしょうね。大きな石ですので、もしもたまたま近くにいたときに下敷きになったらほんとに大変なことになってしまう」(近藤さん)
仲間の減少。石碑の劣化。そして、追い打ちをかけるのが「資金難」です。
「会員の負担。保善していくにはなかなか経費がかかる」(近藤さん)
慰霊碑の規模を縮小し、維持管理を軽減したい考えですがそれにも資金は必要なため、なかなか進められないといいます。
愛知県を含む全国のほとんどの自治体では、民間の慰霊碑に対する補助はありません。
一方、国には民間で作った慰霊碑の補修や移設、撤去のために費用の半分・最大100万円を地方自治体に補助する取り組みがあります。
ただ、原則として対象となるのは、「管理する人がいなくなった慰霊碑」。
遺族会等が管理している限り、補助は出ません。
特例として、管理者全員が80歳以上の高齢者などの条件で補助を認めたケースもありましたが、これまでに認められたのは数件に留まっています。
慰霊碑の今後の在り方について街の人は
「どうしても忘れさっていってしまうので、何かしらの形で残していかないと」(30代女性)
「未来の人に何があったか伝えるためにも、できることなら残した方がいいのではないか」(大学生)
ただ、慰霊碑を訪れる機会がある人は決して多くありません。
「(慰霊碑のところに)行ってみて学ぶことはあるかもしれないが、行く機会があまりなかったので(碑から)学ぶということがあまりなかった」(10代)
「どんなことがあったとか誰が亡くなったとか、調べたらいっぱい出てくると思うので、難しいんだったら無理に維持する必要もないのではないか」(大学生)
また、課題となっている維持管理や税金による負担については多くの人が複雑な心境を口にします。
「管理をするということは、そのものを管理するだけでなく、これがどういうものかという情報すら管理して伝えていかないといけないと思うので、なかなか難しい話かなと」(30代)
「決めてはいけないと思うが(慰霊碑は)あまり身近ではないので、子育てや自分の住んでいる地域のことの方が優先順位が高くなるのは当たり前だと思うので、そこの価値観がひとそれぞれ違ってくると(税金の負担は)難しいと思う」(20代)
「日本のために戦争に出てくれたと(慰霊碑から)確認できるので残してはいただきたいが、自分も維持していけるかというとそれは難しい」(40代)
戦争の記憶をどう次の世代に伝えるか
日本の近代史を研究する愛知学院大学の広中一成准教授は、行政のより積極的な寄り添いが必要だといいます。
「お国のためというスローガンで出征して、命を落としていった。自治体や国が、慰霊碑を財源が少ないからといって放置するのも、それはそれで残酷なことなのではないか」(広中准教授)
広中准教授は、点在する慰霊碑を維持管理しやすくするために、集約するのも一つの策だと話します。
「周辺自治体と一緒になって1つに集約するとか、知恵を絞って存続させていく必要がある」(広中准教授)
実際に、滋賀県米原市では、おととし、維持が難しくなった市内12基の忠魂碑を集約し、6000万円かけて新設。
同じ敷地に、広島のアオギリを植えるなどして、平和学習の場としての意味合いを持たせています。
慰霊碑をそのまま残すのか。それとも、形や場所を変えて残すのか。戦争の記憶をどう次の世代に伝えていくのかを、慰霊碑が私たちに問いかけています。
