調剤DXの旗手がシステム運営会社とドロ沼訴訟…国のビジョン「薬局は“門前”から地域へ」はうまく進まず
国(厚生労働省)は2015年に「患者のための薬局ビジョン」を策定した。
イオンがドラッグストア大手「アオキHD」への取締役派遣を中止 アオキ株保有継続で対立激化
「この頃は約40兆円の医療費のうち約7兆円が調剤費。処方箋の枚数増加が国全体の医療費を底上げしていた。理由のひとつは、門前薬局が乱立し、薬の一元管理がされていないことだった。そこで『かかりつけ薬局』を確立し、地域との連携やDX化を進めるとした。いわく『門前からかかりつけ、地域へ』でした」(厚労省担当記者)
門前薬局とは、大病院の“門前”に構える薬局のこと。そこに店舗を構えていれば、自然と患者は来店する。だがその体制が、医療費の底上げの元凶のひとつというわけだ。
それに先駆けたのが健康サロン社(東京都渋谷区)で、19年10月にサービスを開始した「あなたの調剤薬局」だ。
LINEを使った調剤フォローサービス(追跡調査業務)が、患者にも薬局にも便利で、全国1200店舗、数十万規模の利用者を獲得した。
だが24年12月に、システム運営会社と金銭トラブルが発生、訴訟にまで発展した。営業・販促で想定以上の費用がかかり、システム使用料の支払いが遅滞したからだ。ところが争いはそれで終わらず、システム運営会社は健康サロンの破産申し立てを行い、訴訟は泥沼化していた。
しかし健康サロンは増資で資産を積み増し、破産を回避。今度は返す刀で、倒産情報を流したシステム運営会社に対し、3300万円の損害賠償を求める訴えに打って出た。訴状の日付は2月25日。まさに反撃は始まったばかりだ。
ちなみに健康サロンの訴えは渋谷署にも受理されて、捜査進行中だ。
国がいくら旗振りをしようとも、物事は容易に進まない典型例といえるが、調剤分野のDX化を占う上では、ひとつの注目案件でもある。
「厚労省がビジョンを策定してから丸10年が過ぎ、2年に1度行われる26年度の調剤報酬改定では、まだ詳細は不明ながら、ビジョン推進の意図がいくつか読み取れる」(前出の担当記者)
一方、昨年12月にウエルシアとツルハが統合して巨艦のドラッグストア(薬局併設型小売店)が誕生したように、調剤薬局でもアインHD、日本調剤といった大手のM&A攻勢が目立つ事情は同じだ。
ただ24年度における処方箋の枚数は、8億9634万枚で、前年度比1.3%のプラス。増加傾向はいまだ止まっていない。
「調剤薬局は、コンビニより多い業界で、M&Aによる統合・淘汰が不可避。国がこうしたビジョンを進めざるを得ない以上、問われるのはDX推進であり、規模の大小だけではなく“選ばれる”調剤薬局になることだろう」(前出の担当記者)
いずれにしても、地域に貢献できる薬局しか残らない時代になることは間違いなさそうだ。
(横関寿寛/ジャーナリスト)
