映画『教場 Reunion』©フジテレビジョン ©長岡弘樹/小学館

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 2月14日にフジテレビ系の『土曜プレミアム』枠で、木村拓哉主演の映画『教場 Reunion』が地上波初放送される。2月20日に劇場公開を控える後編『教場 Requiem』へとつながるタイミングということもあり、今回の地上波放送でより多くの視聴者へ届くことになりそうだ。

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 今作で第205期生として登場しているのが、KEY TO LITの猪狩蒼弥。最近では『世界!爆笑おバカ映像GP』(フジテレビ系)や『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』(日本テレビ系)など、バラエティでの活躍も著しい猪狩だが、本作では真逆のシリアスな役に挑戦している。普段の明るさを知っている視聴者ほど、静かな演技は新鮮に映るだろう。

 猪狩が演じる渡部流は、観察力が鋭く、絵を描くのが得意な人物だ。本作で猪狩の芝居が光るのは、出来事の大きさに呑まれていく瞬間を、顔の変化だけで的確に伝えているところにある。たとえば、犯人を取り押さえた若槻栄斗(中村蒼)が最後まで手を緩めず、首を締め続けてしまう場面。目の前で起きていることを理解した途端に浮かぶ驚きの表情が、状況の異様さを説明なしに際立たせる。もうひとつ忘れがたいのが、風間公親(木村拓哉)と対峙する場面だ。風間の圧は、言葉の内容以上に、視線や間合いで人を追い詰めていく。そこで猪狩は、圧倒されていることを大げさに示すのではなく、逃げ場のない空気に身体が先に反応してしまう感触を残すから、渡部の緊張がそのまま画面の緊張になっている。

■『恋の病と野郎組』 過去作を振り返ると、猪狩の芝居は派手な表現で押し切るというより、役が置かれた位置を見極めて、その場に必要な温度を足していくタイプだとわかる。『恋の病と野郎組』(BS日テレ)で猪狩が演じたのは、五島律。通称ゴトゥーだ。見た目も言動も自信満々で、いかにも俺様タイプに見えるが、実は気が小さくて繊細。軽音部に所属し、どこか目立ちたがりな一面もある。猪狩はその“強がり”を大げさに演じるのではなく、ふとした瞬間に弱さがのぞく芝居を重ねていった。

■『全力!クリーナーズ』 『全力!クリーナーズ』(ABCテレビ)で猪狩が演じたのは、“四番”こと四村悠人だ。年下の高校生で、他のメンバーには敬語で接する。ことあるごとにジャッキー・チェンの真似をしたり、ドウェイン・ジョンソンの話を熱く語ったりするアクション映画マニアという設定もあって、場に軽さを持ち込める役回りだった。猪狩はそのキャラクター性を勢いだけで押し通さず、言葉のテンポと間で空気を整えていく。ふざけたひと言で場をほどき、次の瞬間には表情のトーンを落として、いま何が起きているかを受け止める側にも回る上手さがあった。

■『トモダチゲームR4』 『トモダチゲームR4』(テレビ朝日系)で演じた鬼瓦百太郎は、Kグループの一員で高校2年生だ。見た目は柄が悪く近寄りがたいのに、素直で正義感が強いというギャップを持つ人物として描かれる。疑心暗鬼が前提のゲームでは、少しの表情や言葉尻が疑いの材料になる。鬼瓦もまた、疑う側と疑われる側を行き来しながら、場の空気に揺さぶられていく役回りだ。猪狩は怖そうな第一印象を立てつつ、それだけで押し切らず、ふと素直さが覗く瞬間を残していく。強気な態度の奥に迷いを消し切らないから、鬼瓦が単なる荒っぽいキャラクターで終わらず、張り詰めた空気の中でも人間の温度が伝わってくる。

■『恋を知らない僕たちは』 映画『恋を知らない僕たちは』で演じた瀬波太一は、高校の軽音楽部に所属する明るくノリのいい男子だ。相原英二(大西流星)と知り合って距離を縮めていく一方で、自分のやるべきことにはきちんと向き合うタイプだった。猪狩の芝居の良さは、太一の明るさをノリだけで終わらせないところにある。友だちの輪に入るときは軽やかで、場を和ませる空気も自然に出せる。けれど、池澤瑞穂(志田彩良)のことになると、言葉はいつも通り弾んでいるのに、表情だけがふっと真剣になる瞬間があって、そのギャップが太一の一途さを際立たせていた。

 第205期生には綱啓永、齊藤京子、金子大地、倉悠貴ら同世代が揃い、個々の色がぶつかる座組でもある。その中で猪狩が、どんな存在感を残すのかは大きな見どころだ。グループ活動で鍛えた瞬発力に、俳優として積み重ねてきた経験が重なった今の猪狩が、『教場 Reunion』で見せる表情の一つひとつは見逃せない。地上波初放送は、その変化を確かめる絶好のタイミングになるはずだ。(文=川崎龍也)