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大手広告プラットフォームは、ホリデー広告制作にジェネレーティブAI活用を推奨している。

大企業はAIツール導入に慎重だが、中小企業にとってはリソースの観点などから広告制作効率化の助けとなることは間違いない。

動画向けAI生成ツールの進化が進めば、広告業界に大きな変化が期待されている。


大手広告プラットフォームは、ホリデーシーズン向け広告の制作にジェネレーティブAIを利用することをマーケターに推奨している。だが、エージェンシーやブランドは、このようなテクノロジーを自社の戦略に組み込むことに、まだ不安を抱いているようだ。

メタ(Meta)は、ホリデーマーケティングガイドのなかで広告主に対し、同社の「アドバンテージ+(Advantage+)」広告プラットフォーム内にあるジェネレーティブAIクリエイティブ機能を使って、画像の背景を変更したり、広告画像サイズを異なるアスペクト比に合わせて調整したり、さまざまな広告メッセージを生成したりして、何が買い物客にもっとも効果的なのか見極めるよう勧めている。

Googleも、リテール広告担当シニアディレクターを務めるジョディカ・プラサド氏が「Google広告(Google Ads)」のニュースレターにおいて、ブランドが同様の機能を使ってホリデーシーズンのライフスタイルを表現した画像を新たに生成したり、新しい画像のバリエーションを作成したり、キャンペーン内の見出しやメッセージを自動で変更したりすることを推奨している。

AIツールに対する安心感はブランドごとに異なる



しかし、エージェンシーらによれば、クライアントはそうした機能を試すことに消極的なようだ。アイデア出しやコピーライティングなど、一部のクリエイティブプロセスでジェネレーティブAIを使用している広告主もあるようだが、大半の大手広告主は、いまのところすべてのコントロールをAIに明け渡すようなことはしていない。

こうした大手プラットフォームの後押しにもかかわらず、「AIツールに対する安心感のレベルはブランドごとに異なっている」と話すのは、マーケティングエージェンシーのベラルディ・ウォン(Belardi Wong)でデジタル戦略および統合マーケティング担当シニアバイスプレジデントを務めるカラー・マーフィー氏だ。同社では、クリエイティブリソースのレベルや、効率性と引き換えにブランドへのコントロールの一部を手放すかどうかについて、各ブランドと話し合いを続けているという。

「当社のクライアントの多くがクリエイティブの鍵をジェネレーティブAIに明け渡すような状況は、ことしのホリデーシーズンには見られていない」と、マーフィー氏は話す。その上で、「大手ブランドは中小ブランドと比べてジェネレーティブAIに深く踏み込むことに消極的だ」と付け加えた。

中小企業にとっては大きな助けに



中小企業にとっては、メディアバイヤーやエージェンシーを介さずにオーディエンスにリーチできることが、AIクリエイティブツールのセールスポイントとなっている。

ホリデーシーズンに広告の制作を増やすにもかかわらず、「制作のためのデザインリソースやクリエイティブリソースを持っていない企業は、ジェネレーティブAIのコンテンツ制作ツールに目を向けるかもしれない」と、eコマースの成長支援を手がけるエージェンシーのコモン・スレッド・コレクティブ(Common Thread Collective)でAIディレクターを務めるジェイコブ・ポセル氏は言う。

同氏が米モダンリテール(Modern Retail)に対して語ったところによると、「デザインやクリエイティブの戦略に関して、(ホリデーシーズンに)必要な数の広告を制作できるだけの能力やリソースを持っていないブランドは多い」と言う。だからこそ、「そのような難題を解決する重要な手段のひとつとして、AIがある。広告の制作を増やすために必要な多くのタスクをAIに任せることで、作業を大幅に効率化できる」と話す。

また、ポセル氏によれば、ジェネレーティブAIの効果が大きいのはどちらかといえばシンプルな広告を必要とし、膨大な画像ライブラリを利用しているブランドだという。

動画向けという可能性



実際、サプリメントブランドのオブビー(Obvi)の共同創業者でCMOを務めるアシュビン・メルワニ氏は、「特定のタイプの小規模ビジネスにとって、参入を妨げる障壁があったが、その障壁は打破された」と、米DIGIDAYに対して述べている。

とはいえ、オブビーがさまざまなソーシャルプラットフォームのAI搭載クリエイティブツールを試したところ、顧客向けのキャンペーンで使用できるほど進化しているツールはなかったという。「メタに対して『私の代わりにすべての作業をやってくれ。そうしたら公開する』といって、安心してその広告を出せるような段階にはいまだ達していないと思う」と同氏は語った。

それでも、クリエイティブなAI機能が進化を続ければ、ブランドにとってさらに有益なものになるかもしれない。D2C(direct-to-consumer)ブランドと仕事をしている広告エージェンシーのデジショップガール・メディア(Digishopgirl Media)でCEOを務めるカティヤ・コンスタンティン氏は、特に動画の分野でAIの生成機能に可能性を見いだしている。なぜなら、動画は制作コストがかかるが、クリエイティブミックスの重要な要素だからだ。

Amazonは9月、広告主向けにAIを搭載した動画生成ツールをリリースした。また、アドビ(Adobe)とOpenAI(オープンAI)も動画生成ツールを発表している。

「動画は、クリエイティブの面で大きな問題を抱えている分野であり、我々が見る限り、おそらくほかの分野ほど機能が充実していない」と、コンスタンティン氏は言う。「動画向けのさらに優れたツールが開発されれば、相当な規模で導入され、ゲームチェンジャーになるに違いないと私は予想している」。

[原文:Brands are cautious about Google and Meta’s generative AI holiday ad push]

Mitchell Parton(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:島田涼平)