「ライバルは広大な選挙区」…区割り見直しで大阪府の2倍超の和歌山2区、遊説先で宿泊しながら巡る候補も

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 今回の衆院選(27日投開票)は、「1票の格差」を是正するために見直された新たな小選挙区の区割りで実施されている。

 地方の小選挙区を10減らし、都市部の小選挙区を10増やす「10増10減」。地方に巨大な小選挙区が生まれ、和歌山2区は27市町村からなり、総面積は大阪府二つ分以上の約4000平方キロ・メートルとなった。各陣営は戸惑いながら、東奔西走している。(竹内涼)

予定組むのも苦労

 「私の最大のライバルは他の候補者ではなく、この広大な選挙区です」

 ある候補者は17日夜、和歌山県印南町で開いた個人演説会で聴衆にこう訴えた。

 沿岸部沿いの市町を演説して回るだけでも、4日を費やした。時には事務所に戻らず、遊説先で宿泊しながら選挙カーを走らせる。

 陣営関係者は「準備期間が短く、予定を組むだけでも一苦労だ。候補者が訪れられない場所での呼びかけは、支援者頼みになる」と苦しい胸の内を語った。

直線で100キロ

 区割りの変更は、2022年に成立した改正公職選挙法で決まり、今回の衆院選で初めて適用された。

 県内の小選挙区は、旧1区(和歌山市)、旧2区(海南市、橋本市など9市町)、旧3区(田辺市、新宮市など20市町村)から、和歌山市、紀の川市、岩出市からなる1区とそれ以外の27市町村で構成する2区に再編された。

 20年の国勢調査に基づき、1区、2区の人口規模はほぼ同じとなった。ただし、2区は県土の約9割を占め、約4000平方キロの面積となった。北部の橋本市から南端の串本町まで直線距離で約100キロ。産業も、文化も、抱える課題も異なる。県幹部は「ますます地域の声が届きにくくなる」と懸念する。

「国会で議論を」

 衆院選公示の15日、2区の複数の候補者が、海南市で第一声を上げた。和歌山市の県庁で立候補の届け出を済ませ、いち早く演説を始める狙いがあったとみられる。それでも、演説などに必要な「七つ道具」の到着が間に合わず、開始が遅れた陣営もあった。

 有権者の思いも複雑だ。田辺市で行われた個人演説会に参加した自営業の男性(57)は「選挙期間中、候補者と会えるのは一度きりかもしれないと思って訪ねた。小選挙区が広すぎることに違和感がある。誰が当選したとしても、選挙制度の課題を国会で議論してもらいたい」と話した。