東京メトロの初値は1630円、6年ぶり大型上場に個人投資家から旺盛な需要

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Noriyuki Hirata Miho Uranaka

[東京 23日 ロイター] - 23日の東京市場で、東証プライム市場に新規上場(IPO)した東京メトロの初値は1630円となり、公開価格を35.8%上回った。衆院選の不透明感から手控えムードが強い中で、6年ぶりの大型上場には投資家からの旺盛な需要が集まっている。政府が「貯蓄から投資」への流れを進めるなか、特に個人投資家からの関心が高い。

金融情報を扱うロンドン証券取引所グループ(LSEG)のデータでは、2018年に上場した通信大手ソフトバンク以来の規模のIPOとなる。

中堅証券の引き受け担当者によると、新規口座の開設数は通常の3−4倍に膨らんだ。日本郵政の上場時ほどではなかったものの、投資家を誘引する効果があったとみられている。松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「IPOをねらった口座開設が急増した」と話す。   

個人投資家を誘引した要因の一つは、高い配当利回りと見られている。東京メトロは配当性向目標4割以上を掲げており、1株当たり配当40円を公開価格で割った配当利回りは3.3%で、他の電鉄に比べて配当利回りの高さが意識されている。   

株主優待制度も、株主数拡大の面で工夫されている。利用できるのは2単元(200株)以上保有する株主で、1単元(100株)を購入した投資家が優待制度を利用したい場合、少なくともさらに100株を追加購入する必要が出てくる。株主優待としては、所有株数に応じて全線切符や定期乗車券、駅構内で運営するそば店のかき揚げ無料券など関連施設の優待券を発行する。   

同社の業績は堅調だが、国内の人口減少が見込まれる中で輸送人員の劇的な伸びは期待されていない。成長に向けては、鉄道以外のビジネスをどう伸ばすかが焦点の一つになる。電鉄業界では、不動産や物販などで成長を図ろうとする動きが目立っており、東京メトロは都心の路線網を持つことから「地域的なポテンシャルは高い」(松井証券の窪田氏)とみられている。

日本証券業協会の森田敏夫会長は先週、東京メトロのIPOに触れ、「個人にもなじみのある会社が上場するというのは投資家のすそ野が広がるという意味でも非常に大きなメリットがある」と期待を寄せた。

※写真を差し替えました。