まさかの支持率28%!石破の「国賊解散」で自民党大苦戦の末路…結局、国民人気もなかった男と「ポスト石破」の高市早苗

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 石破政権が発足した後に時事通信が初めて実施した世論調査では、石破政権の支持率はまさかの28%。2000年以降の最低はこれまで、森内閣の33.3%よりも下回ったといい、政権維持の「危険水域」とされる2割台からのスタートとなった。”党内人気は低くても国民人気が高い”とこれまで言われてきた石破総理だが、政権が発足すると国民人気も低いことが露呈した。一体誰がこんな事態を予測できたであろうか。

 そんな中、10月27日投開票の衆院選で、主要メディアによる情勢調査報道が出始めた。政治資金パーティー収入をめぐる不記載問題で逆風を受ける自民党は、公明党と合わせた連立与党で過半数(233議席)を確保する見通しであるものの、立憲民主党など野党に勢いが見られるという。いまだ与野党の接戦区は多く流動的な要素が残るが、経済アナリストの佐藤健太氏は「過去には選挙期間中の失言が議席減に響いた例もあり、結果は最後までわからない。石破茂首相(自民党総裁)は内心ヒヤヒヤなのではないか」と見る。新内閣発足から2週間で公示日を迎える「超短期決戦」の結末やいかにーー。

読売新聞一面はは「立民増の勢い」「維新は不振」

 10月17日付の主要紙は、衆院選序盤情勢の内容を1面で大きく扱った。読売新聞は同15、16両日に実施した世論調査の結果に取材を加味して情勢を探り、「与党過半数の見通し 自民苦戦 立民増の勢い」「維新は不振」と大々的に報道。自民党は公示前の247議席を割り込む可能性があるものの、公明党と合わせた与党では衆院定数(465)の過半数を確保する見通しという。

 自民が優位な戦いを進める候補は100人前後で、120人近くが接戦。40人超は劣勢の戦いを強いられているとしている。立憲民主党は公示前の98議席から30議席前後の上積みをうかがい、日本維新の会は関西以外の地域で勢いに欠けると指摘した。

 毎日新聞は1面トップに「与党過半数の公算大 自民『単独』維持視野 立憲は議席上積みへ」との見出しで序盤情勢の内容を報道。自民党は議席を減らす公算が大きいものの、接戦区の多くで競り勝つことがあれば単独過半数を維持する可能性があるとした。全289選挙区のうち、40以上で激しく競り合っているという。立憲民主党は比例代表で前回の39議席から積み増しそうで、維新は伸び悩んでいると分析している。

最終的にどこまで当てはまるのかは不明

 日経新聞は1面トップで「自民、過半数割れの可能性 100超の選挙区接戦 立民など野党に勢い」と報道し、自民党は民主党に政権交代した2009年衆院選以来となる単独過半数割れとなる可能性を指摘した。自民の候補者が他党の候補者と接戦を繰り広げ、「優勢」または「可能性」がある状況と判断した選挙区は100超あり、接戦区の情勢次第では獲得議席が変わる可能性があるという。

 産経新聞は共同通信が10月15、16両日に実施した電話調査の結果に取材を加味し、1面トップで「与党過半数 激しい攻防 自民不記載響く 立民勢い」と報じた。自民党がリードしているのは140程度にとどまり、接戦区が多いという。比例代表では前回衆院選の72議席を下回るのは避けられない情勢としている。

 共同通信の序盤情勢分析によれば、維新は目標に掲げる「野党第1党」の奪取は困難で、共産党は公示前の10議席程度の獲得が見込まれるという。国民民主党は公示前の7議席から上積みする勢いがあり、れいわ新選組は比例で複数議席を確保できそうだとしている。

 主要紙の情勢分析は世論調査で得られた「生のデータ」に取材内容を加味しており、とりわけ序盤での予測が最終的にどこまで当てはまるのか不明な部分が多い。ただ、現時点での傾向として言えるのは、自民党と公明党の連立与党が巷間言われていたほど負けることはないかもしれないという点だろう。

石破首相の頭を悩ませる「接戦区」の多さ

 支持率が低空飛行を続けていた岸田文雄首相(自民党総裁)の下では選挙に戦えないとの声が強まり、「ポスト岸田」を決める9月の自民党総裁選で勝利した石破首相は「政治とカネ」問題に関係した12人を非公認とし、比例重複なしとの措置を講じた。読売の分析によれば、政治資金収支報告書に不記載などがあった前議員ら44人は約半数が小選挙区で遅れをとり、日経でも比例重複立候補を認められなかった候補34人のうち、有力・優勢なのは半数弱だったという。

 不記載があった候補には厳しい視線が送られる一方で、それが自民党候補の全体にまではマイナスになっていないと見ることができる。ただ、石破氏の頭を悩ませるのは、いまだ接戦区が多いということだろう。読売は小選挙区に擁立した266人のうち、自民候補120人が接戦を演じていると分析。日経は100超に上り、毎日も40以上の小選挙区で激しく競り合っているという。

首相の発言のブレから逆風は拭き続ける

 毎日が1面に掲載した「推定当選者数」を見ると、自民は203~250議席▽立憲117~163議席▽維新28~34議席▽公明24~29議席▽共産5~6議席▽国民民主13~20議席▽れいわ6議席―などと揺れ幅が大きいことがわかる。つまり、今後の選挙戦次第で結果はまだまだ異なってくる可能性があるということだ。

 思い出されるのは、2000年6月の衆院選だ。小渕恵三首相が脳梗塞で倒れ、自民党は総裁選を実施せずに就任した森喜朗首相が早期解散に踏み切った。「密室政治」批判などで内閣支持率が低迷した森首相は選挙中、「(選挙に)関心がないといって、寝てしまってくれたら良い」などと発言。有権者の反発を招き、結果は自民党が40議席近くも減らして単独過半数を下回った。この時の衆院選が連立与党としての初陣となった公明党も11議席マイナスとなっている。

 森元首相のような「失言」は今のところ見られないものの、石破首相は就任前の「自民党内野党」からの発言のブレが指摘され、内閣発足直後としては異例の低支持率にあえいでいる。政治資金パーティーをめぐる不記載問題への不信感が有権者に残る中、逆風は自民党だけでなく、連立与党の公明党にも向かう。

公明党は公示前の32議席を確保できるか怪しくなってきた

 読売新聞の調査によれば、公明党は小選挙区に11人擁立したが優位なのは2人にとどまり、残りの大半は接戦を展開。毎日新聞は4つの選挙区で優勢となっているが、石井啓一代表が立候補した埼玉14区を含む5つの選挙区は接戦で、公示前の32議席を確保できるかは微妙な情勢という。日経も公示前議席を下回る可能性があるとし、共同通信の分析でも比例は伸びを欠くとされている。公明党に焦りがにじむのは当然だろう。

 自民党が接戦区の大半を制して単独過半数を維持すれば、石破氏は思い通りの政権運営を実現できるかもしれない。だが、主要紙の分析のように与党で過半数ギリギリの結果になれば公明党の影響力が連立内で強まることも予想される。そうなれば、石破氏は仮に首相の座をキープできたとしても、「石破カラー」を前面に出していくことは困難になるはずだ。来年夏には参院選や東京都議選も控える。

 加えて、衆院選後に自民党内の勢力バランスがどうなっているかも重要だ。石破氏は9月の自民党総裁選で高市早苗前経済安全保障相に逆転勝ちした。だが、高市氏は自らに近い保守系政治家たちと「ポスト石破」を狙っている。

共同通信の調査では小選挙区で「投票先未定」が3割近く

 麻生太郎最高顧問や茂木敏充前幹事長との連携に加え、衆院選の応援演説依頼が殺到するなど勢いを見せる。党内基盤が脆弱な石破氏としては、今回の選挙で当選した議員の多くが高市氏に共鳴すれば今後の政権運営で配慮せざるを得ない状況に追い込まれるだろう。

 石破氏が衆院選の目標とした「与党で過半数」を勝利とするならば、首相にとっては勝っても地獄、負けても地獄と言えるほど険しい道が待ち構えているのだ。もちろん、まだ序盤情勢のタイミングで結果はどうなるかはわからない。実際、共同通信の調査は小選挙区で投票先未定が3割近く存在し、日経の調査では小選挙区で2割ほど、比例代表で1割ほどが態度を決めていない。毎日の調査は小選挙区で5割近くが投票態度を明らかにしておらず、情勢はなお流動的と言える。

 首相就任から戦後最短での衆院解散・総選挙を断行した石破首相。メディアは「石破政権が信任されるかが争点」と煽るが、これまでの持論を封印して石破カラーが見えない中で有権者は何を判断材料としたら良いのか。頭を抱えるのは石破氏だけではない。