選挙集会で演説するトランプ前大統領=19日、米ペンシルベニア州/Evan Vucci/AP via CNN Newsource

(CNN)共和党の大統領候補であるトランプ前大統領は、11月に行われる大統領選の最終局面にさしかかる中、有権者に向けて最後の主張を行う方向にかじを切った。

少なくとも、トランプ氏がペンシルベニア州ラトローブで19日にステージに立つにあたり、トランプ氏の陣営はそう語った。

しかしトランプ氏はプロレスラーの入場曲に続いて登場した直後、地元空港の名前の由来となった伝説的プロゴルファー、故アーノルド・パーマー氏の逸話をとりとめもなく話し始めた。地域の象徴である人物を引き合いにだすという以外にほとんど意味をなさないようなこの話は15分近く続き、その中にはパーマー氏の莫大な富や裸体に関する脱線した発言がいくつか含まれていた。

ある集会参加者は「今夜そんなことを聞くことになるとは思わなかった」とコメントした。

そこからトランプ氏は、民主党の対立候補であるハリス副大統領を「クソ副大統領」と呼び、スクリーンでは支持者に不在者投票を早めに済ませるよう促すメッセージが表示される中、郵便投票を攻撃した。

MSNBCのインタビューでトランプ氏のコメントについて尋ねられたハリス氏は、「米国民ははるかにもっと良いものに値する」「米大統領は基準を定めなければならない。我が国のためだけでなく、国として世界のために定める必要のある基準を理解しなければならない」と述べた。

トランプ氏の19日の集会では、低俗で奇妙な瞬間の合間に、選挙戦での最後の訴えも垣間見えた。トランプ氏は原稿を表示する「テレプロンプター」の文章を読み上げながら、有権者の支持によって国の強さ、優位性、繁栄、誇りを取り戻すことができると群衆に語りかけた。

一方で、選挙活動のメッセージの核心をまさに伝えようとしているように見えた瞬間にあらかじめ用意していた発言を中断する場面もみられた。

ラトローブでのイベントに先立ち、トランプ陣営はトランプ氏が現状の緊急性に合わせ、ハリス氏との対比を明確にさせるため、メッセージを調整し始めるだろうと示唆していた。

トランプ氏の最高顧問ジェイソン・ミラー氏は「今日の発言はその枠組みの冒頭となるものなので重要だと思う」と語った。

しかしトランプ氏の発言は、選挙期間中に行ってきた多くの演説とほぼ違いはなかった。同氏は移民やハリス氏の精神的能力をののしった。元大統領としての自身に対する訴訟や、大統領就任当初につきまとったロシアの選挙介入に関する捜査について不満を述べた。

トランプ氏が不安定な振る舞いを見せた19日の集会は、通常より観客の数は少なく、エネルギーに欠けていた。この集会の直前には想定外の状況が続いていた。

ミシガン州デトロイトで18日に行われた集会は、予約した会場が満員にならず、演説はマイクの技術的な問題で中断された。トランプ氏は演壇のそばで所在なげに修理が終わるのを待ち、音響システムを納入した業者への支払い拒否を誓った。

先週にはタウンホール(対話集会)で聴衆の1人が体調不良になったため、トランプ氏は質問に答えるのをやめた。その代わりに音響システムで音楽を流し、ステージ上で体を揺らしながら腕を振り、それ以上質問に答えることなく40分後に退席した。

この出来事は、選挙戦終盤を迎えトランプ氏が錯乱し不安定になっていると主張するハリス陣営の最近の攻撃材料になった。