ファミリーマートの「ファミチキ担当者」が明かした「誰もがやみつきになるヒミツ」

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あのロングセラー商品はどのようにして生まれ、どのようにヒットをつづけてきたのか。その道のりをたどる「ロングセラー物語」。今回は、発売から18年となる、ファミリーマートの「ファミチキ」にスポットを当てる。現在のブランド担当者が商品の歴史と今を語る。

〔撮影:西崎進也〕

和田健太郎さん わだ・けんたろう/'77年、奈良県生まれ。大学卒業後、スーパーなどを経て、'13年にファミリーマート入社。スーパーバイザーから'21年に商品本部に。'22年からファミチキを担当。

発売以来、製法もレシピも変わっていない

もともとファミリーマートは、'01年に骨つきのフライドチキンを発売していました。しかし、食べにくいという声がある中で、手軽に食べられる骨なしのチキンができないか、という着眼点から'06年に発売になったのが「ファミチキ」でした。

大きな特色は、何よりその食べやすさ。またサクサクッとした衣の食感と柔らかくてジューシーな鶏肉の旨みが楽しめること。さらに、やみつきになるスパイス感です。

当時、コンビニで骨なしチキンというのはなかったようで、発売当初から人気商品となり、累計販売数が22億個を超えた今でも販売が伸び続けています。

「ファミチキ」には、鶏のもも肉で最もジューシーなサイという部位だけを使っています。貴重な部位を使用し、カット工程も技術が必要なんです。

スパイスは開発時にかなり研究されたのだと思いますが、本当に飽きが来ない、やみつき感があります。

私は月に2回ぐらい船便で到着した「ファミチキ」の抜き打ちでの検食を実施しており、一度に数十個食べることもあるんですが、何回食べても飽きないんです。「ファミチキ」という商品のすごさを、自分で毎月、実感しています。

実は「ファミチキ」は、発売以来、製法を変えていません。レシピも変わっていないんです。

リピーターの方がかなり多い商品でもあるので、あえて変えていません。

一方で、店舗で揚げるための油は何度も改良を重ねています。専用油を開発、いろいろな工夫を重ね、「ファミチキ」がさらにおいしくなるよう追求しています。

実際、「ファミチキ」を家の油で揚げても、同じ味にはなりません。あの旨みは出ない。「ファミチキ」誕生15周年のとき、特別に冷凍の「ファミチキ」を販売したことがありましたが、このときも、油とセットでの販売でした。油はとても重要なんです。

お店では、その油を使い、専用フライヤーで決まった分数で揚げてもらっています。ボタン一つで、一番おいしい状態で提供できるよう、仕組みが作られています。

いろいろな味のソースをインする「ファミチキ」

もちろんコンビニは新しい商品を期待して来店される方も多いので、味の異なる新しい味種にも挑んでいます。

他社の人気商品とコラボすることもありますし、オリジナルで開発することもあります。これまで、約30種類が出ていますが、今年度も7種類ほど出す計画です。

タイの工場で製造しますので、半年前には商品企画を決めていなければいけません。リサーチをしたり、アイデアをメンバーで出し合ったり、社内でアドバイスをもらったり、あの手この手で考えています。出してみないとわからないところもありますが、好評をいただけるとホッとします。

コラボは簡単そうに見えて、実は難しいです。基準になる味があり、それに近づけないといけないからです。コラボといっても、味のレシピや配合はコラボ先から教えてもらえるわけではありません。自分たちで考えて近づけていくしかないんですね。そして持って行って味を確認してもらう。簡単ではないんです。

最近だと、肉自体に味付けをするだけでなく、いろいろな味のソースをインする「ファミチキ」も好評をいただいています。

'24年2月に初めて出したソースインが、「タルタルソースinファミチキ」でした。第2弾として6月から「油淋鶏ソースinファミチキ」を発売しました。

ソースを入れることによって本格的な味わいを出せることは大きな魅力で、今後いろんなバリエーションができると考えています。

ソースインの開発には苦労もあり、時間もかかりましたが、やはりチャレンジは常に必要です。フライドチキンは、どうしても似た味になりがちなところがあるので、目新しさを出すのが、最も難しいところです。

実際、新しい味種が出ると、お店でも努力をいただいていることはもちろんあるんですが、大きな売り上げが出ることが少なくありません。やはり、新しい商品に関心を持ってくださっている方、楽しみにしてくださっている方も少なくないのではないかと思います。

ただ、「ファミチキ」の驚くべき点は、新たな味種を出してヒットしても、通常の骨なしプレーンの販売は大きく変わらないことです。

ですから、新商品を出すことができれば、プラスの売り上げを獲得することができる。これもまた、「ファミチキ」の強さだな、と思います。

ファミリーマート全商品の中で売上数量ナンバーワンを誇る、看板商品なんです。

「ファミチキ」を炊飯器に入れて「炊き込みご飯」

「ファミチキ」の購買層の中心は、30代から40代。これはファミリーマート全体の客層とも合致しています。このうち女性は約4割。

同じチキンの商品ですと「スパイシーチキン」は男性比率がもっと高いんですが、女性のファンの多さも「ファミチキ」の特徴だと思います。

手が汚れないということに加えて、小さい頃から食べてきた、ということも大きいようです。昔から慣れ親しんだ味、ということですね。

また、新しい味種は、20代から30代がメインと、若い層に寄る形になっています。

最も売れる時間帯は、お店にもよりますが、やはりお昼でしょうか。おむすびと「ファミチキ」という買われ方も多いですね。また、夜だとお酒と「ファミチキ」の組み合わせも少なくありません。

「ファミチキ」といえば、店頭で包まれて渡される黄色と白の縦縞のパッケージを思い出す人も多いかもしれません。「ファミチキ」イコール、あの袋だ、と。

この袋に替わったのは、'17年のこと。そして、このタイミングで登場したのが、キャラクター「ファミチキ先輩」でした。「ファミチキ」同様、人気をいただいています。

私は大学を卒業後、スーパーに入社。メーカーを経て、ファミリーマートに転職しました。スーパーバイザーを約8年経験し、商品本部のファストフーズグループに異動。チキンを担当し、新機軸の商品ができないか、常に考えています。

目新しいだけでなく、また買いたくなる味を目指しています。

「ファミチキ」はいろんな味わい方をしていただいている商品でもあります。はさんで食べられる専用バンズもあったりしますが、お客さまから独自のアレンジメニューをSNSにご投稿いただいているケースも少なくありません。

例えば、ご飯を炊くときにそのまま入れて、炊き上がったときにほぐして食べる炊き込みご飯。「ファミチキ」の旨みとスパイスが楽しめるとのことです。

「ファミチキ」がいかに愛されているか、改めて感じます。

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