「金持ち農家」は”みんなと同じもの”を作り、「貧乏農家」はコロコロ変える…その「意外なワケ」

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農地法の改正や「地方創生」の後押しにより、今注目を集めている農業ビジネス。サラリーマン時代より稼ぐ「金持ち農家」も増えているという。農業に興味がある人にとって一番知りたいのは、「何をつくれば儲かるか?」ではないだろうか。『金持ち農家、貧乏農家』の著者で、農業経営コンサルタントの高津佐和宏氏が、この問いにズバリ答える。

その地域で一番生産されている品目を作る

「何を作れば儲かりますか?」

この質問を何度されたことでしょう。

あえて何を作ればいいか、品目を答えるなら、「その地域で一番生産されている品目を作るのが、儲かる近道です」と答えます。

みんなが作っているものを作って儲かるのか? と疑問に思う方もいるかもしれませんが、それが農業業界なのです。みんなが作っている品目をお勧めする理由は3つあります。

(1) その品目を作っている農家が多いということは、その品目を作って生活できている人が多いという事実

(2) 地域ナンバーワンの品目ということは、その品目の生産技術がその地域に蓄積されているとともに、生産技術を教えてくれるJAや行政の農業普及指導員、農家が多い

(3) さらに、その品目が全国的にトップシェアである産地なら、JA出荷でも有利に販売しやすい(他県に負けにくい)

納得していただけましたでしょうか?

新しい品目への挑戦を繰り返すのは危険

一見、誰も作っていない品目は、ブルーオーシャンに見えて、儲かりそうですが、実はそんな品目が一番危険です。なぜなら、先ほど挙げた3つの理由と逆のことが起こるからです。

(1) その品目を作って生活している農家がいない。つまり、その品目を作って生活ができている人が少ない

(2) 地域で誰も作っていないので、生産技術が地域に蓄積されていない。生産技術を教えてくれる先生となる人もいない

(3) 他に大産地があるので、シェア争いでも負けてしまい、産地としての影響力が小さい

これから新規就農したい方で品目選定がまだの方は、この事実を参考にしてください。

さて、農家の中には、生産している品目がうまくいかないからといって、新しい品目に挑戦を繰り返す人がいます。しかし、この選択は残念な結果を招くことが多いでしょう。

うまくいかない原因が、うまく作れないことが原因ならなおさらです。ある品目の生産がうまくいかない場合、他の品目に切り替えて成功する保証はどこにもありません。

さらに、「今まで蓄積した生産技術がゼロになってしまう」ことや「農業機械や施設が使えなくなってしまうことが多い」ことも、新しい品目に切り替える際のデメリットです。

メインとなる品目だけを極めたほうがいい

とはいえ、これまで多くの農家がいろいろな品目に手を出してきたことも確かです。いろいろな品目に手を出してもうまくいくやり方はあるのでしょうか?

まずメインとなる品目がしっかりしていて、収益が取れていることが前提です。その上で、やってみたいという気持ちや地域で生産振興している品目だからという理由でチャレンジしている方も多いようです。

しかし、結局、片手間で手を出した品目は長続きせずに、メインとなる品目だけを極めていく金持ち農家が多いのが私の印象です。

宮崎県にある私の実家も、菊をメインに、ストックやスターチスなどを生産していました。ひまわりを育てていたこともあります。確か、1年でやめていたように思います。気がついたら結局、菊だけになっていました。

近年では、ラナンキュラスにも挑戦していたようです。宮崎県が振興品目として助成などもしていました。しかし数年でやめて、結局は菊だけに戻っています。私の実家のような経験は、どの農家にもあるのではないでしょうか。

社会の変化に乗って、生産品目を変えるのもひとつのやり方ですが、農業において、需要がなくなる品目はほとんどありません。結果的に、生産する品目の生産技術を極めていくことのほうが、金持ち農家への近道になります。

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