認知症や身体の老化、うつにも効く…いま「たまご」に注目が集まっているワケ

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歳を取ると身体の老化や脳の機能低下が気になってくる。そんな人におすすめしたい食材が「たまご」。

地域医療と高齢者の健康増進についての豊富な経験と、自身の筋トレ、食生活などの実体験が話題となり、著書や全国での講演も多数こなす医師の鎌田實さんが、たまごの栄養の最新情報をまとめた『長生きたまご』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。

老いを遠ざける「抗酸化作用」高め!

ヒトの老化や病気の原因の1つとして「酸化」があることはよく知られるところです。呼吸で取り込んだ酸素の一部が体のなかで活性酸素になり、それが過剰になったときの悪影響が「酸化」。そのため、抗酸化力を高めることが老化や病気の予防として大切だというのも、ご存じの人が多いでしょうか。

抗酸化力を高めるにはいくつか方法がありますが、食事で抗酸化作用が高い食べ物をしっかり摂るというのは、基本的な手段の1つですね。

それで僕らはビタミンやミネラル、ファイトケミカルなど抗酸化パワーの強い栄養素を十分摂るように心がけます。そこで、「ビタミンエース(ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE)」を抗酸化ビタミンとして覚えておくと便利です。

ビタミンエースは単体で摂るより、一緒に摂ると互いの効果を高め合うはたらきをするので、“エース”と覚えておくのが◎!

このうち、たまごには、ビタミンAのほか、体内でビタミンAに変わる前駆体のプロビタミンA(βカロテン、βクリプトキサンチン)と、ビタミンEが豊富です。

「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」と「日本人の食事摂取基準(2020)」を照らし合わせてみると、たまご1個でビタミンAは1日の必要量の約24%、ビタミンEは1日の必要量の約14%摂れるようです。素晴らしいですね。

とはいえ栄養の点で超優等生のたまごにもビタミンCは含まれませんから、たまごを食べるときにはビタミンCが摂れる何かをプラスする工夫をするのが、ビタミンエースを十分に摂るコツです。

たまごは他の食品と組み合わせて調理しやすい食品ですよね。そして、野菜や果物にはビタミンCを含む食品が多く、ビタミンCは決して摂りにくい栄養素ではありません。だから、プラスの工夫もしやすいでしょう。

ただし、ビタミンCは水溶性のビタミンなので、ゆでると含有量が減少してしまいます。一方、油炒めでは若干増加するので、野菜は生か、油炒めで食べましょう。

脳ではたらく「レシチン」が摂れる「ブレインフード」

脳の重量は体の約2%にすぎませんが、脳は僕らが1日に必要とするエネルギーの約20%を消費するとされています。つまり、脳はたっぷりの栄養を要する、特別な器官というわけです。

中高年では、貯筋と同様、脳の健康もちょっと意識しますよね。できれば認知症とは無縁の人生を送るために、脳の栄養に適した「ブレインフード」を積極的に摂りたいもの。僕も気をつけていて、その意味でもたまごは王様クラスだと思っています。

なぜなら、卵黄に豊富に含まれるレシチン(リン脂質、別名フォスファチジルコリンとも)は、細胞膜の主成分で、脳神経や神経組織を構成するものだからです。これが不足すると、細胞膜と細胞のはたらきが悪くなり、脳の機能が低下します。

さらに、レシチンには「コリン」という成分が含まれ、これは脳に入ってはたらける数少ない物質の1つです。

脳や脊髄、網膜など神経組織にある血管は、血液から神経組織に必要ないものが入り込まないように管理する、言わば「関所」のような機能を備えています。これが「血液脳関門」というはたらきで、コリンはここを通過できるのです。

多角的に脳の機能低下を防げる

コリンは脳のなかに入ると「アセチルコリン」という神経伝達物質になります。アルツハイマー型認知症の患者の脳では、このアセチルコリンの量が減少するほど、認知機能の低下がみられます。

また、必須アミノ酸の1つ、メチオニンも神経伝達物質の材料となるもので、同様にアミノ酸スコア100の牛乳や大豆と比べてもたまごは含有率が高いです。このメチオニンは、抑うつなど精神症状の改善に役立つといわれています。つまり、たまごを食べることは、多角的に脳の機能低下を防ぐことになるわけです。

なお、レシチンには水と油を混ぜ合わせる乳化作用、酸化防止作用、保水作用などのはたらきもあり、たとえば、その乳化作用のおかげで血液中のコレステロールが血管壁に溜まりにくくなり、血中コレステロール量がコントロールされます。この乳化作用は、油に溶ける性質をもつビタミン(脂溶性ビタミン)のビタミンA、D、E、Kなどの吸収にも役立ってくれます。

じつはコレステロールを気にする人ほど“たまご”を食べたほうが良かった…長生きするために欠かせないワケ