「ムダな会議」の多い日本、「効率的な会議」ばかりのドイツの決定的な違い…「議事録」づくりも会議中に
日本に比べて約1.5倍高い労働生産性、年間266時間短い労働時間、約40%多い平均賃金、GDPは日本を抜き世界第3位……。限られた時間で最高の効率を発揮し、結果を出すドイツのビジネスパーソンは、会議のやり方もきわめて合理的だ。『ドイツ人のすごい働き方』の著者で、商社駐在員としてドイツ在住17年の西村栄基氏が、「ムダな会議」が多い日本との違いを指摘する。
日本の職場も見習いたいドイツの会議
たいていは午後に設定される社内の会議でも、私は衝撃を受けました。
日本の職場では、会議はまるで迷路のようでした。もちろん、私が働いていた企業固有の問題でもあるでしょうが、多くの人がとりあえず出席し、目的が不明確で長時間にわたっていました。
しばしば結論が出ないまま終わり、同じ議題で何度も会議が行われていた記憶があります。トップへの進捗報告だけの会議も多く、情報伝達、議論、アイデア出しなど、目的がごちゃ混ぜになっていました。
一方、ドイツの職場における会議は、まるで劇場の一幕を見ているようです。そこでは、会議の目的がはっきりとしていて、参加する人にもムダがありません。
大切な決定は上から下へ自動的に伝わっていくため、会議には本当に必要な人だけが集まり、すっきりと進行します。
よりミクロなミーティングに関しても、普段は各々自分のデスクで集中して仕事をしていて、メンバー間の連携や話し合いが必要なときだけ、短時間集まります。情報を伝えるだけの集まりはなく、その程度はメールやグループウェアを使ってサッと済ませます。
「発言しない人」は会議には必要ない
ドイツの職場で働き始めた頃、上司のクラウスとこんな会話がありました。
私「クラウス、ドイツの会議の進め方は本当に効率的で、日本とはまったく異なりますね」
クラウス「そうかい? 日本の会議とどのように違うの?」
私「日本では、会議はもっと長くて、多くの人が参加します。結論が出ないこともよくあるんですよ」
クラウス「そうなんだ。こちらでは、会議は短くて目的が明確で、余計な時間を割かないようにしているんだよ」
私「ドイツでは『会議で発言しない人は次回から出席しなくてもいい』と判断されると聞きましたが、本当ですか?」
クラウス「実際、そうだよ! ここでは発言することが重要なんだよ。意見を持っていないか、何も貢献しない人は会議に必要ないとみなされるんだ」
私「『とりあえず出席しておく』ということが一般的な日本とは何もかもが違いますね」
なぜ会議中に議事録が仕上がるのか?
会議といえば、議事録の作成がついて回りますが、ここにも日本とは異なる「ドイツ流」がありました。
ある日の会議中、同僚が議事録をつけていたのですが、その速さが尋常ではなかったのです。彼は手元のキーボードで軽快な音を立てつつ、会議の流れにも集中し、時折参加者の表情にも目を走らせています。
会議が終わった後、私は思わず尋ねました。
「どうやったら、そんなに速く議事録を書けるの?」
彼は笑って答えました。
「準備がすべてだよ! 会議前に、あらかじめ議事録のテンプレートを作ってしまうんだ。日時、参加者、アジェンダ……。それに議論の内容もだいたい予想できるだろ?」
そのテンプレートに沿って、彼はリアルタイムで、効率的に議論を記録していたのです。特に重要なのは、アクションアイテム(会議で決定されたやるべきこと)です。会議の最後に、参加者全員で確認し、合意を得ます。
「私がメモした本日のアクションアイテムは、このExcelでまとめてあります。抜け漏れはないでしょうか?」
そして、彼は続けます。
「ないようでしたら、それぞれのアイテムの担当者と期限を決めていきましょう」
「速報版」と「正式議事録」を使い分ける
会議が終わると彼は一息つきながら、その日のうちに議事録の「速報版」を発行します。
「『速報版』は速さが重要だけど『正式議事録』は正確さが大切。それを心がけているよ」
まとめると、次のとおりです。
・あらかじめ議事録のテンプレートを作成(日時、参加者、アジェンダ、議論の内容)
・会議中、合間に議事録を作成する
・アクションアイテムは会議の最後に参加者の合意を得る
・会議後、全体をチェックし、その日のうちに「速報版」を発行
・「正式議事録」が必要なら作成
企業にもよりますが、日本の会議では、議事録を会議後にまとめることが一般的です。
時間が経過することで内容があいまいになったり、重要なポイントが抜け落ちたりすることがあります。事前準備で議事録作成を効率的に進められるドイツ流の方法は、速さと正確さを同時に得られるので一石二鳥です。
また、その会議が最低限の情報を関係者に迅速に共有すべきものなら速報版を、より正確を期す必要がある重要なものなら正式議事録も作成するというように、会議に合わせてスタイルを使い分けるのも、作成にかかるムダな労力と時間の削減につながります。