1個88万円、1キロ200万円の白トリュフを使用… 「世界一高いアイスクリーム」を生んだ「ハッタリ」力

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「世界一高いアイスクリーム」としてギネス世界記録に認定され、各メディアで話題を集めている「Cellato(セラート)」。値段はなんと、1個88万円というから驚きだ。開発したのは、元「楽天市場」史上最年少プロデューサーで、著書に『ハッタリの作法』がある大原昌人氏。このインパクト抜群の商品はどのようにして生まれたのか、本人が明かしてくれた。

アイデアはどのように生まれたのか?

ECコンサルやプロカメラマン、YouTubeプロデューサー、ビジネス書の著者など、さまざまな顔を持つ私にあえて1つだけ肩書をつけるとすれば「プロデューサー」ということになるでしょう。ジャンルを問わず、ありとあらゆるモノやサービスについて、さまざまな方法を用いてその価値を高めるのが私の仕事です。

プロデューサーの仕事のうち、直近でもっとも成功した自社ブランドは、アイスクリームです。もちろん、ただのアイスクリームではありません。1個88万円、ギネス世界記録にも認定された「世界一高いアイスクリーム」を発売し、日本はもとより世界中で大きな話題を集めているのです。

この商品の着想は、仙台市のパウンドケーキ専門店が「世界一高いパウンドケーキ」を売り出したというニュースを見てひらめきました。

そのお店では、普段は1本3000円〜5000円程度のパウンドケーキを売っているらしいのですが、北日本の食材を全国に広めるために、福島産ブランド桃「とろもも」を使った8万8000円のパウンドケーキを開発。

それが「世界一高いパウンドケーキ」としてギネス世界記録に認定されたことで、テレビをはじめとする多くのメディアに取り上げられ、注文が殺到し、タイアップも次々と決まったそうです。

「世界一高いアイスクリーム」の誕生

そのニュースを見た私は「これぞまさにハッタリだ」と感動しました。権威に弱い日本人にとって、ギネス世界記録はそれだけで「すごいものだ」と錯覚させることができる、とてつもなくPR効果が高いハッタリであることに、改めて気づかされたのです。

「私もギネス世界記録という大ハッタリをかましたい!」

そこから、ギネス世界記録取得ありきのアイスクリーム開発が始まりました。

材料は、一般の人が高級食材と聞いてまず思い浮かべる、トリュフかキャビアかフォアグラのどれかを使おうと決めていました。

監修をお願いしたシェフからは「もっと別の高級食材を使って複雑な味を表現してはどうか」という提案もいただきましたが、説明しないとわからないような食材ではメディアが話題にしにくいので、世界三大珍味という超わかりやすいところに絞りました。

それで完成したのが1キロ200万円の最高級白トリュフを使ったアイスクリーム「Cellato(セラート)」で、審査の結果、世界一高いアイスクリームとしてギネス世界記録に認定されました。

すると狙いどおり、国内外のメディアから取材依頼が殺到しました。「200万円の白トリュフを使った世界一高いアイスクリーム」という、いかにもメディア好みのキャッチーな売り文句がうまくハマった結果といえるでしょう。

世界200以上のメディアで取り上げられる

どれくらい取材が来たかというと、ギネスが確定した約1週間後にTBS『ひるおび』で取り上げられたのを皮切りに、日テレ『DayDay』、テレ朝『ナニコレ珍百景』、TBS『ラヴィット』『東大王』、フジテレビ『ノンストップ』と、すべてのキー局がCellatoを紹介。

さらに雑誌『GINZA』や『ホットペッパー』に『週刊女性』、Webメディアでは『Forbes』『CNN』『中央日報』『BIGLOBE』『ねとらぼ』『ドバイ放送局』や海外のビジネスジャーナルなどなど、確認できているだけで世界200以上のメディアで取り上げられました。

反響はすさまじかったです。1個88万円のアイスクリームなんて、ふつうに考えたらそうそう売れるものではありません。少なくとも一般の人はまず買わないでしょう。

しかし、世界中のメディアがこぞって「世界一高いアイスクリーム」を宣伝してくれたことでCellatoの評判は海外のセレブにまで届き、想定をはるかに上回る注文が入りました。サッカー界の英雄ネイマールが来日の際にCellatoを食べてくれたことも、とてもいい宣伝になりました。

Cellatoのニュースは、白トリュフの産地であるイタリアのアルバにまで及んでいました。

数カ月前、私が新しい仕入先を開拓するためにアルバの専門店を訪れたところ、店主から身分を尋ねられたので「これこれこういう、世界一高いトリュフアイスを作っている者だ」と名乗ったら、店主は大喜び。

「その話はイタリアの新聞で読んで知っている。お会いできて光栄だ。ぜひうちの娘と記念撮影をしてくれ」と、まるで超有名人のような扱いを受けました。

ビジネスではハッタリが重要である

なお、1個88万円のアイスクリームは開発に1年を要しており、初期の開発費はそれなりにかかったものの、単純計算では1個で70万円以上の利益が出ます。

一般的な飲食店の利益率は10%前後と言われているので、70万円の利益を出そうと思ったら、700万円の売上を作らなければなりません。汗水流して働いて1食1000円の定食を7000食売って、ようやく70万円の利益が残る計算です。

ところが1個88万円のCellatoは、その70万円を一瞬で稼いでくれる。この話だけでも、ビジネスにおいてハッタリがいかに重要であるか、おわかりいただけるのではないでしょうか。

また、Cellatoは1個88万円の「白夜」のほか、高級シャンパンのドン・ペリニョンを使った15万円の「春雷」、黒トリュフとチョコレートで作った3万円の「星月夜」もラインナップしています。

このように「松・竹・梅」の3つの価格帯を用意するのも代表的なハッタリ技術で、88万円の後に15万円、3万円の商品を見せられると、割安な気がしてつい買ってしまう。

実際には一番安い3万円でもハーゲンダッツ約100個分ですから、まったく安くはないのですが、「3万円でCellatoを味わえるならお買い得だ」と思わせる戦略で、数としてはこの3万円の「星月夜」が一番多く売れています。

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