100万円越えもあるヴィンテージTシャツ、値上がりしている「意外すぎるアイテム」の名前

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ここのところ、ヴィンテージTシャツの価格高騰が止まらない。30年前には数千円で売られていたのに、今やたった100万円を超えるものもあるという。

前編記事『Tシャツ1枚が200万円越え…! ヴィンテージTシャツの「値上がり」が止まらないワケ』に引き続き、過熱するヴィンテージTシャツの市場をレポートする。

ねらい目はどんなTシャツ?

近年のヴィンテージTシャツ市場では、ニルヴァーナと同じ時代に活躍したソニック・ユースなどのバンドはもちろん、映画や漫画、アニメなどさまざまなジャンルのアイテムが高騰している。

「映画だとクエンティン・タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』のほか、『レオン』『トレインスポッティング』あたりが数十万円で取り引きされています。アニメや漫画だと大友克洋の『AKIRA』などが人気ですね」(古着店「Whatʼz up 原宿店」店長の中村友一さん)

ほかにもブルース・ウェーバー監督の映画『レッツ・ゲット・ロスト』や『バッファロー'66』、アイスランドの歌手ビョークのライブTシャツなど、90年代のアイテムを中心に市場で高い値がつきやすいという。

ヴィンテージTシャツの本場・アメリカでは、限られたレアなアイテムをめぐって、世界中のバイヤーたちが争奪戦を繰り広げている。しかし中村さんは、ブームに反して「最近では日本から買い付けに行く人が減っている」と話す。

「飛行機代や現地のホテル代、ガソリン代などすべての経費が値上がりしているうえ、円安で商品の値段も高くなっています。日本に入ってくる商品が限られるからこそ、国内での価格が急騰しているのかもしれません」

お宝が眠っているかも

ユニクロのように大量生産されるファストファッションとは異なり、ヴィンテージTシャツはもとが同じ商品であっても、経年での変化の具合などによって価値が大きく変わる。基本的にはすべてのアイテムが一点ものであるため、「相場」を見極めるのが非常に難しい。

「ヴィンテージTシャツには定価がないので、店側は青天井で自由に売値を設定できる。それを逆手に取り、『とにかく高値で売れればいい』と考えて、過度に高い値段をつけている不誠実な古着屋が増えているのも事実です」(人気アパレル店blackmeans LABORATORY®のスタッフで、ヴィンテージTシャツに詳しい村越雄大さん)

価格をつり上げるだけならまだしも世界的なブームに便乗し、詐欺に近い手法で金儲けする不届き者も現れている。スタイリストの池田佳央さんが指摘する。

「タイやインドネシアの工場では、本物のヴィンテージTシャツを完璧にトレースして、90年代風のダメージ加工まで精巧に施したコピー品が製造されています。そのクオリティは、ベテランの古着バイヤーでも本物と間違えてしまうほど高い。

本来は数千円の新品ですが、本物のヴィンテージと偽って数十万円もの高値で売りさばいている悪徳ディーラーもいますね。シャネルやグッチの精巧な偽物が出回るのと同様の事件が、ヴィンテージTシャツでも起きているんです」

悪質なコピー品が出回るにつれて、「バブル崩壊」も近づいてきている。

「ブームはまだ続くと思いますが、いつバブルが弾けてもおかしくありません。不誠実な古着屋のせいで『裏切られた……』と感じるお客さんが増えれば、次第に値崩れし下火になるかもしれません」(前出・村越さん)

いまのうちにたんすの奥底で眠っているTシャツを引っ張り出し、専門店で価格を調べてもらうのもいいだろう。大半はいくばくにもならないだろうが、お宝が見つかるか、少なくとも懐かしい思い出には浸れるはずだ。

「週刊現代」2024年9月28日号より

Tシャツ1枚が200万円越え…! ヴィンテージTシャツの「値上がり」が止まらないワケ