たまごを1日3つ食べると起きるすごい効果…人間が「自力でつくれない栄養」がとれるベスト食材

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私たちの体にあるさまざまな細胞の材料となり、体を作っているものの総称がたんぱく質。健康な体を維持するのに欠かせない栄養素ですが、これが豊富にとれてバランスもいいのが「たまご」。

地域医療と高齢者の健康増進についての豊富な経験と、自身の筋トレ、食生活などの実体験が話題となり、著書や全国での講演も多数こなす医師の鎌田實さんの新著『長生きたまご』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。

もも肉を食べても太ももが隆々にならないワケ

片手におさまる小さな鶏卵にこれほどの栄養があるなんて、「さすが生命のモトであるたまご」と感動します。筆頭にあげるのは、たまごのたんぱく質の栄養バランスの良さです。

血液の赤血球にはヘモグロビン、筋肉のなかにはアクチンやミオシン、皮膚細胞にはコラーゲン、髪の毛や爪にはケラチン。──これらはみんなたんぱく質でできています。小腸でたんぱく質を分解する消化酵素トリプシンや、免疫反応でできる抗体さえも、たんぱく質です。

このたんぱく質をもう少し細かく見ると、各種のたんぱく質はどれも「アミノ酸の連なり」。人間が必要とするアミノ酸は全部で20種あって、それがさまざまな設計どおりに連なって、各種のたんぱく質に合成され、いろいろなはたらきをするのです。

たとえば牛のもも肉を食べたとき、そのたんぱく質は僕らの小腸で細かく分解され、バラバラのアミノ酸になり、体のどこかへ運ばれて、そこで改めて何らかの設計どおりの「アミノ酸の連なり」に再合成され、たんぱく質として利用されます。

必ずアミノ酸の分解、再合成の仕組みを経るので、牛もも肉をたくさん食べたからといって僕らの太ももが隆々になるわけではないし、ケラチンやコラーゲンをたくさん食べたからといって、必ずしも髪や肌の細胞に生まれ変わるわけではありません。

この仕組みがあるがゆえに、たんぱく質(アミノ酸)は、各種バランス良く摂取しなければ、必要な20種のアミノ酸を満たせません。何かが不足すると体のなかで、何らかのはたらきに支障が出てしまうことになります。

とくにアミノ酸のなかで、僕らが必要とする量をほとんど自力では合成できないものは9種あって、それは「必須アミノ酸」と呼ばれます。

体内で合成できない、必ず「食べる」ことで摂取しなければならないアミノ酸、という意味です。

たんぱく質は「量」より「質」が大事なそのワケ

さらに、この必須アミノ酸が体内でたんぱく質に合成されるときには、1つやっかいな法則があり、必須アミノ酸はそれも考慮して、バランス良く摂る必要があります。

やっかいな法則とは、たんぱく質を摂取したとき、それに含まれる「いちばん少ないアミノ酸」の量によって、ほかのアミノ酸のたんぱく質合成に利用される量も制限されてしまう、というものです。

この法則はよく「桶(おけ)の理論」で説明されます。図を見てください。9つの板でできた桶の絵です。9つの板=9種の必須アミノ酸ですね。

この桶に水を汲む場合、短い板の高さまでしか水は汲めません。同様に、9種の必須アミノ酸を摂取しても、どれかが少なければ、その分しかたんぱく質の合成には利用されない、という理論です。

そこで、たんぱく質に含まれる必須アミノ酸の含有率が、栄養学的な基準からみてどうか、食品ごとに評価した「アミノ酸スコア」が示されています。

すべての必須アミノ酸が基準値より多く含まれていて、摂取したアミノ酸をたんぱく質合成に十分に活用できる場合、スコアは100。

そう、たまごはアミノ酸スコア100の食品なのです。

人が自力で合成できず、私たちが摂らなくてはならない必須アミノ酸のなかでも、とくにバリン、ロイシン、イソロイシンの3つをまとめてBCAAと呼びます。

わざわざそう呼ぶのは、この3つが筋たんぱく中に多く含まれ、筋肉の合成にも関わり、筋肉を動かすときのエネルギー源にもなる重要なアミノ酸だと注目されているからです。

3つとも分子構造が似ていて、「分岐鎖アミノ酸」なので、英語ではBranched Chain Amino Acidという表記となり、その頭文字からBCAAと呼ばれます。

たまご3個で摂れる「BCAA」が筋肉維持に効く

筋肉をつくるために、このBCAAの3つがとても大切。なおかつ、ほかのアミノ酸も必要になるので、たまごやサンマ、赤身の刺身、鶏むね肉など、BCAAも摂りながら、ほかのアミノ酸も摂れるたんぱく質を摂ることを心がけましょう。

筋肉を複利で増やすには、このBCAAを1日8〜16gは摂りたいところですが、たまご3つで約8g摂れます。これで最低量を確保できますね。

そこに、昼と夜のおかずに、中くらいのサンマ(BCAA約4・8g)、まぐろ赤身刺身8切れ程度(同約4g)、鶏むね肉手のひら大(同約4g)、鶏もも肉手のひら大(同約3g)などを食べると、必要量が食べられることになります。

食事の支度に時間がかけられないときや、おやつでも食べやすいたまごで、複利貯筋に欠かせないBCAAが最低量確保できるのはいいでしょう?! みなさんもぜひ「たまご3つでBCAA◎」を覚えて、日々意識して召し上がってください!

貯筋に励んでいる人のなかには、最近はBCAAをサプリメントで摂る人も増えているようですが、僕はサプリメントには頼らず、毎日の食事で「食べて必要量を摂る」ようにしています。

筋肉を大きく肥大させたいボディビルダーがプロテインを利用するのは理解できますが、一般の人はむしろ自然なかたちで、たまごなどをしっかり食べてBCAAを摂ることが大事だと考えているのです。

ただし、僕の内科外来にかかっている高齢の方で、あまり食欲がない人の場合は、サプリでプロテインを摂ることをお勧めしています。

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