「うつ」と「パニック症」の関係性は? トラウマでも「パニック症」は悪化する?

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パニック症は、パニック発作をくり返す病気です。パニック発作は、身体的な原因はないにもかかわらず、さまざまな不快な症状が突然生じるもの。パニック症の本質は、「このまま死ぬかもしれない」という強い恐怖感・不安感にあります。恐怖や不安は、危険を避けて生き延びていくために必要なものですが、行きすぎれば生活に支障をきたします。発作を避けようとしてどんどん「できないこと」が増えていけば、自己否定感が強まり、うつ状態に陥ることもあります。そんな「パニック症」の最新情報や、正しい理解のための本『名医が答える! パニック症 治療大全』より一部抜粋してお届けします。

前編<「パニック症」と似た症状、「社交不安症」「適応障害」とは​

毎日ゆううつで、なにもできません。パニック症の症状でしょうか?

ゆううつ感の有無はパニック症の診断には関係しませんが、パニック症がなかなか改善しない場合、ゆううつ感が強まるのはよくあることです。パニック発作への恐れから、家にひきこもってうつうつとした時間を過ごし、自責の念を強めていく人もいます。

疲労感が強くなにもできない状態が長く続いていたり、食欲がない、眠れないなどといった症状や、頭痛、肩こりなどの身体症状が強く現れたりしている場合には、うつ病を併発している可能性があります。パニック症とうつ病の両方に当てはまる状態の人は少なくありません。

先にパニック症を発症し、あとからうつ病を併発する人もいれば、もともとうつ病が先にあり、パニック発作をくり返すようになる人もいます。心の病気の専門医を受診し、適切な診断・治療を受けることが大切です。

うつが続いていますが、やたらに元気なときもあり、対応に困っています

うつ状態の時期と、気分が高揚して元気が出すぎた状態になる躁の時期をくり返している場合には、双極性障害(双極症)の疑いがあります。いわゆる躁うつ病です。

双極性障害でも、うつの状態の時期だけみればうつ病と同じようですが、双極性障害であればうつ病とは治療薬が異なります。

うつ病やパニック症の治療には、SSRIというタイプの抗うつ薬を使うのが一般的です。しかし、抗うつ薬を双極性障害の人が服用すると、気分が異常に高揚し、活動的になりすぎて周囲を困惑させるような言動が続くことがあるのです。これを「躁転」といいます。

元気いっぱいの時期には、受診しようという発想がないこともあります。一見うつ病のようであっても、元気がよすぎるときもあることを、医師にきちんと伝えることが大切です。

トラウマとパニック症は関連しますか?

命にかかわるような事件や事故、災害などを体験したり、目撃したりしたことがトラウマ(心の傷)となり、さまざまな変調をきたす状態が長く続く場合をPTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)といいます。PTSDがあり、トラウマを負ったときの記憶が生々しくよみがえる現象(フラッシュバック)が生じると、パニック発作を起こすことがあります。引き金になるのは「トラウマ体験時を想起させる状況」です。状況依存性のパニック発作であり、パニック症によるパニック発作とは異なります。

ただし、死を覚悟するほどの苦しいパニック発作の体験そのものがトラウマとなり、その後、パニック発作を起こしたときと同じような状況に置かれると、フラッシュバックが生じてパニック発作をくり返すこともあると考えられており、厳密には区別しにくいこともあります。

「パニック症」と似た症状、「社交不安症」「適応障害」とは