「子供の話を聞かずに発達障害と診断を出してしまう」...一部の医療機関で横行している「ヤバすぎる診断体制」と「避ける唯一の方法」

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'02年に文部科学省が発達障害の調査結果を発表してから社会全体での認知度が上がっていった。その一方で、過剰ともいえる診察が横行し、中には誤診まで。そうした現状の背景を見ていこう。

前編記事『「小学生の10%に発達障害の可能性」ってホントですか...「子供たちが被害者」となっても学校が「いい加減すぎる運用体制」を取る「衝撃の理由」』より続く。

発達障害児急増のワケ

だが、発達障害の子供が急増した原因はそれだけではない。ロクな知識もないのに、安易に診断をくだす医師も増えているのだ。

「そうした子供が増えているのは、保護者や教師が知識を持ち、敏感になっていることもあります。『発達障害かもしれないので診察してほしい』というニーズが急増したため、専門家の数が足りず、専門家でない一般医の外来にも受診希望者が殺到。非専門医による『疑わしきは診断』といった過剰診断が増えている可能性があります」(原田氏)

そもそも発達障害は、正確な診断が難しく、誤診が生まれやすい。前出の榊原氏はこのように解説する。

「発達障害は、その人の行動の特徴から診断せざるを得ず、血液検査や脳波検査で診断できるものではありません。ADHDやASD、学習障害にはそれぞれ別の診断基準があり、丁寧に判断するのが一般的です」

医者の誤診で薬漬け?

たとえば自閉症の診断の補助にMーCHATというチェックリストが使われる。これを使えば50%程度の確率で自閉症を診断できるというものだ。しかし、このチェックリストだけでは漏れもあるので、正確に診断するには複数回の確認が推奨されている。

「ところが、1日に何十人も対応している医師のなかには、子供から直接話を聞かずに親の所感をもとにチェックリストを埋めている場合があります。そこである一定のスコアが出たら、自動的に自閉症と診断をくだすクリニックがあるのです」(榊原氏)

問題はそれだけではない。クリニックによっては薬を処方して、子供を落ち着かせようとする医師もいる。

「特にADHDとASDの併存が疑われる場合は、ADHD治療薬と抗精神病薬などの薬を組み合わせて投与する医師がいます。たとえばあるADHD治療薬の場合は、脳内の快楽物質であるドーパミンの働きを強める作用があり、子供を落ち着かせるという意味では、一定の効果が出てしまいます」(榊原氏)

本当にADHDであれば、薬で症状を抑えることができるだろう。しかし、そうではない子供が飲み続けても、ただ薬漬けにされるだけで、問題解決には至らない。

発達障害はその子の特性

こうした事態を避けるためにも、万が一、学校などで「発達障害の可能性がある」と言われたときに、どう対処すればいいのだろうか。

まず大切なのは慌てないことだ。学校で問題が起きたのだとすれば、実際に何が起きていたのかを子供と教師からしっかりと聞く。それでも、どうしても病院に行かなければならない場合は、専門医など、信頼のおける医者を選ぶ。ポイントは複数の専門家に子供を診てもらうことだ。前出の岩波氏はこう解説する。

「児童精神科がある医療機関であれば、発達障害に対応しています。たとえば東京都内だと都立小児総合医療センターが代表例でしょう。単に相談するだけであれば、都道府県にある発達障害者支援センターでも専門家のアドバイスをもらえます」

また、たとえ発達障害と診断されても、悲観しすぎてはいけない。前出の原田氏は「発達障害は病気ではなく特性です」と言う。

「発達障害は、足が速いというのと一緒で、環境が整えばよい方向にも働きます。個々人に違いがあるだけで、優劣があるわけではない。発達障害の専門家は、診断だけでなく、その子がやりたい方向、生きたい方向に向かってサポートもしてくれます。プロの支援があれば、うまく特性を発揮しながら社会の中でも活躍していけるはずです」

トラブルになったからといって、すぐに障害があると疑うのは子供の個性を否定することに繋がりかねない。安易なチェックリストで子供の人生が変わってしまうことのないよう、親も知識を得ることが肝要だ。

「週刊現代」2024年9月28日号より

「小学生の10%に発達障害の可能性」ってホントですか...「子供たちが被害者」となっても学校が「いい加減すぎる運用体制」を取る「衝撃の理由」