11月からフリーランスも労災保険の対象に!気になる「条件」と「補償内容」は?

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仕事中や通勤途中にケガや病気になってしまった場合に補償が受けられる「労災保険」。2024年11月から、この労災保険にフリーランスとして働く人も加入できるようになります。

そこで今回は、労災保険で受けられる補償について改めて解説するとともに、加入の条件や手続きについてご紹介します! 会社員やパートとして働いているという人も改めて労災保険についておさらいしておきましょう。

そもそも「労災保険」とは?

「労災保険」と聞いて、皆さんはどのような保険なのか、具体的に思い描くことができるでしょうか。

労災保険とは、「労働者災害補償保険」のこと。似たような公的保険としてよく比較に挙げられるのが雇用保険ですが、雇用保険が、再就職先が決まらなかったり、失業したりしたときに私たちの生活を支え、再就職を促進することを目的とした保険であるのに対し、労災保険は、仕事中や通勤途中の事故や災害によるケガや病気などに対して補償することを目的としています。

また、雇用保険には「1週間の所定労働時間が20時間以上であること」、「雇用されてから31日以上働く見込みがあること」といった加入条件があるのに対し、労災保険は、正社員、パート、アルバイト、日雇いなどの契約形態に関わらず、企業に雇われるすべての労働者が必ず加入することになっています。保険料についても、雇用保険は事業主と労働者がそれぞれ負担して支払うことになっているのに対し、労災保険は事業主に全額負担する義務があります。

どのようなケースが「労災」になる?

では、労災保険で補償される仕事中や通勤途中のケガや病気とは、具体的にどのようなケースが多いのでしょうか。

労災保険の対象となるケースの中でも特に多いのが転倒事故です。職場でつまづいて転倒したり、階段で転んでケガをしたり。また、取引先を訪問するために車で移動している途中に追突事故に遭ってむち打ちになった、機械に手や足を挟まれて怪我してしまった、といったことも労働災害として労災保険の対象となります。

仕事中に自分の不注意などでケガをしてしまった場合、「退勤後に近くのお医者さんに診てもらおう」と考えたことがある人も少なくないかもしれません。でも実は、こうした仕事中や通勤途中のケガは、健康保険は使えません。こうした場合には本来、労働災害として労災保険の適用を申請するべきということになります。ちなみに、労災として認定された場合には、治療費や入院費などの自己負担はゼロになります。

「特別加入」できる対象が一気に拡大!

労災保険は契約形態に関わらず、企業に雇われるすべての労働者が必ず加入することになっている公的保険です。裏を返すと、業務委託やフリーランスの人は、労災保険に加入することはできませんでした。

しかし、2024年11月からは、いわゆるフリーランスの人でも、特定受託事業者として企業などから業務を委託された場合には、労災保険に「特別加入」できるようになります。

実はこれまでも、個人タクシーの運転手、あんまマッサージ指圧師、原付バイクなどを使用したフードデリバリーサービス(個人貨物運送業者)などごく一部の業種については、それぞれの特別加入団体を通じて特別加入することが可能でした。しかし11月からは「特定フリーランス事業」として特別加入できる対象が一気に拡大。フリーランスの人が企業などから業務委託を受けて行う場合、業種に限らず特別加入の対象となります。

こうした背景には、フリーランスとはいっても、実態としては限りなく企業に雇われているのに近い状況で働いている人が少なくないことがあります。

業務委託として働くフリーランスの人が日常的に出勤し、業務を行っている職場でケガをしたり、長時間労働やハラスメントを原因として病気になったりしても、労災保険に未加入であれば当然ですが補償の対象にはなりません。かといって発注先である企業側に補償を求めることも現実的には難しいでしょう。こうしたことから、厚生労働省が踏み切ったのが今回の「特別加入」の対象者の大幅拡大、ということになります。

労災保険で受けられる「3つの補償」

では、労災保険に加入するとどのような補償が受けられるのでしょうか。

労災保険の適用になることで受けられる補償は、大きく分けて3種類あります。1つ目は先ほどのようなケガや病気にかかった治療費や入院費など療養の補償。2つ目は療養のために仕事を休み、結果として収入を得られなかった場合の休業補償。これは、毎月決まった給与も、傷病手当金のような働けない時の給付金もないフリーランスの人にとって特に嬉しい補償といえるかもしれません。3つ目は仕事や通勤を原因として死亡してしまった場合の遺族補償。万が一の場合には、遺族が年金または一時金としてまとまった給付金を受け取ることができます。

もちろん、最終的に労災事故として認定されるかどうかは個別の状況によってきますが、何はともあれ労災保険に加入していないことにはこうした補償が受けられる可能性すらありません。そういった意味で、労災保険に特別加入できる対象が広がったことは、フリーランスとして働く人、またはいずれフリーランスとして独立したいと考えている人にとって朗報といえるのではないでしょうか。

気になる保険料と手続きは?

フリーランスの人が労災保険に特別加入する場合、企業に雇われている場合と異なり、保険料は自分で納めることになります。

保険料は、1日あたりの平均的な収入を基準とし、その365日分✕0.3%。仮に基準となる1日あたりの収入を2万円とした場合、2万円✕365日✕0.003%=2万1,900円が1年あたりの保険料となります。

特別加入の手続きは、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が行います。「特定フリーランス事業」として特別加入する場合には、特定受託業務の特別加入団体を通じて申請を行うことになります。

現在、会社員やパートとして働いているという人も、フリーランスとして働いている人も「知っておいて損はない」のが労災保険。条件や補償の内容についてしっかりと把握しておきましょう。

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