「がん」の再発を予防するために、じつは「簡単にできること」があった…!

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放っておくと筋肉は年齢と共に衰え、そのことが原因で免疫力が下がったり、生活習慣病を引き起こしたり、心の健康や、脳の認知機能にまで影響を及ぼすと言われています。とはいえ、筋肉を衰えさせてはいけないとわかってはいても、運動をコンスタントに取り入れるのはなかなか難しい……。

そこでウォーキングの提案です。ウォーキングなら家の周りを歩いてもいいし、どこかに行くついでに1駅分歩くこともできるし、すぐにでも始められます。ただ、なんとなく歩くだけでは体力アップはむずかしいことも事実です。著者は科学的に「どれくらいの速度で」「どれくらいの頻度で」「どれくらいの時間行えば」「どんな効果が得られるのか」を徹底的に研究し明確にしました。その根拠となるのは、10年余りで7000人以上のデータを取った結果と分析。それがわかりやすく示されているので、なぜどのように体にいいのか、納得できます。そのようにして確立した、効果的で継続しやすい方法「インターバル速歩」を紹介。ややきついと感じる早歩きと、ゆっくり歩きを一定間隔で繰り返すだけのシンプルな方法です。

*本記事は『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。

がん患者の生活の質の改善効果

運動ががん予防に効果的であると述べたが、すでにがんを患った方の生活の質を改善することも報告されている。私たちは、がんを患って、手術・化学療法の治療が一応終了した20名(女性18名、男性2名:年齢30〜70歳)を対象に、6ヵ月間のインターバル速歩トレーニングを実施し、その前後で体力測定、QOL(生活の質)に関するアンケート調査を行った。

がんの種類は、乳がん7名、肺がん3名、そのほか後腹膜肉腫、前立腺がん、後腹部肉腫、十二指腸腫瘍、腎がん、脳腫瘍、舌がん、子宮体がん、胆管がん、甲状腺がんが各1名ずつであった。

その結果、トレーニングの実施率は50%で2日に1回と非常に高く、6ヵ月後には最高酸素消費量が18%、膝の伸展筋力が14%向上し、血中総コレステロール値が5%低下した。

さらに、アンケート調査によれば、がん発症前の生活習慣について、まったく運動をしなかった方、あるいは少し運動をしていた程度と答えた方が全体の90%以上で、また、仕事が多忙で生活にストレスを感じて睡眠不足だったと答えた方が全体の80%もいたが、インターバル速歩によって70%以上の方が、睡眠が深くなった、体調がよくなった、思考が前向きになったと答えている。

さらに、研究を担当した大学院生が論文の中で、現在のがん医療の問題点について、次のように指摘しているのが印象的だった。

彼は、現在のがん医療は、がんの診断・治療に重点が置かれ、社会復帰後の心理的ケア、健康維持ケアがないがしろにされている、ということを指摘している。

たとえば、ある患者さんが病院で手術・化学療法など一連の治療が終わったときに医師から言われるのは、これで医師としてやるべき治療は一応終わったこと、今後5年間のがんの再発率は○%であること、などである。

患者さんが、がんの再発を予防するために何か自らできることはないかと医師に尋ねると、大抵の医師は、とりあえず何もない、定期健診にきて、後は自分に任せてくださいと答えるそうだ。その結果、自分の人生を医師に握られてしまった、という印象を持ち、いつもがんの再発を気にして、積極的に自分の人生を切り開く意欲をなくしてしまう、ということだ。

一方、運動によってがんの再発リスクを下げることができるという研究結果は、患者さんが、がんと戦える大きな武器を手に入れたと感じるようだ。そして、がん患者同士、お互い励まし合いながら運動をするという行為は連帯感を生み、社会からの孤立感を和らげることになり、生活の質が大いに改善する、というのだ。

この論文から、私自身、インターバル速歩の新たな可能性に気づかされ、さまざまな難病に苦しんでおられる方々へのインターバル速歩の導入の可能性を考えるきっかけになった。

さらに連載記事<なんと「10歳」若返る「すごい歩き方」、その「意外なやり方」を完全公開する…!>では、「インターバル速歩」の具体的なやり方を解説しています。

なんと「10歳」若返る「すごい歩き方」、その「意外なやり方」を完全公開する…!