スープ作家・有賀薫さんもおススメする、アルモンデ料理っていったい何?

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「いま家にアルモンデ」「季節にアルモンデ」、手早く料理するアイデアを教えてくれるのが、アルモンデ料理家の大塚佑子さん

料理教室を開いて10年、今回はその記念のパーティに、スープ作家・有賀薫さんと、生徒さんたちが集まりました。

材料は、その日届いた野菜と乾物など。2時間で、なんと12品の野菜料理が出来上がり!

第1回は、1種類の食材だけで作れる一品と、アルモンデ料理の基本の考え方をお伝えしました。今回は、2回目です。

有賀薫さん流、アルモンデのコツ

アルモンデ料理家、大塚佑子さんは、スープ作家、有賀薫さんのアシスタントを長く務めています。アルモンデという考え方には、有賀さんも賛成。

「家にあるもので何かを作る、というのは、とても大事。忙しくて買い物に行けないなんて、しょっちゅうですから。

スープが専門なので、残り野菜を使うことは多いですが、そこで大事なのは、素材をよく見て対話すること。キャベツに合うのは何だろう、ベーコンかな、ひき肉かな、とイメージをふくらませていく。残り物をなんとかしたい=消したい、ではなく、どう生かすかと考えることでしょうか

食材の知識も大事と言います。

「たとえば、白菜を外側からはがして使うと内側の黄色い部分が残ってしまうこと、ありますよね。でも、この部分はやわらかくてスープ向きなので、私はわざわざとっておくこともあるぐらい。これも食材との対話のひとつです」

あとは組み合わせの工夫。

「脇役で光るベテラン俳優のように、古い食材でも使い方次第で味わいが出せます。脇役だけでキャスティングするのではなく、アイドルをピンポイントで投入するように、フレッシュな食材を1点入れるとぐっと華やかになります。アルモンデというのは食材の個性の生かし方の話でもあるのです

そして大事なのは、いま自分は何が食べたいのかをイメージすること。

温かいものなのか、さっぱりしたものなのか、辛いものなのか。ここをまず決めると、発想するのが簡単です。ただ、家族がいる場合、相手が食べたい味に寄せていくことも大事。やっぱり食事って、栄養を取るだけのことじゃない。残さず全部食べてもらえるように、いつも考えて料理しています」

家にあるもので料理するとき、ここが一番大事なポイントかもしれません。

2種類の食材を組み合わせて、ちょっと目先の変わった料理を作っていきましょう。

味付けはシンプルなので、アレンジもききます。

モロヘイヤときくらげのナムル

「モロヘイヤなどの青菜は、少量の水を入れた鍋に入れて蒸し茹でに。普通に茹でるより栄養が逃げません。シンプルな味付けなのにしみじみ美味しい。いわゆる韓国風のニンニクがきいたナムルではないので、簡単に作れるし、いくらでも食べられます。いろんな野菜で作れるので、ぜひ定番にしてください」

<材料>

モロヘイヤ/きくらげ(生でも乾物でも)/胡麻油/しろたまり(白醤油or醤油)

<作り方>

【1】乾燥きくらげを使用する場合は、水でしっかり戻しておく。水で戻したもしくは生のきくらげは、熱湯で1分程茹で、水でさっと洗い流して千切りにしザルにあげておく。

【2】モロヘイヤは葉の部分をつんで水洗いする。蓋つきの鍋に水を1センチほど沸かモロヘイヤを加えたらすぐに蓋をして1分ほど蒸すように茹で、ザルにあげる。

粗熱が取れたらザクザクと粗めに切っておく。

【3】ボウルに胡麻油としろたまりを入れ、とろりとするまでよく混ぜ合わせる。モロヘイヤときくらげを加えて、さっくり和えたら出来上がり。

▼アルモンデ、ここが大切

※モロヘイヤ、カブの葉、小松菜など、葉もの野菜は少量の水分でも蓋をして蒸し茹でができます。ほうれん草はシュウ酸が強いのでおすすめしません。

※しろたまりは私の料理に欠かせない調味料です。Amazonや楽天で購入できます。ない場合は塩麹でも、塩のみでも、醤油でも美味しくできます。

冬瓜とオクラの花のサラダ

「冬瓜というと煮物のイメージが強いですが、薄切りにして茹でても美味しいんです。冬瓜以外でも、皮を剥いて薄切りにしたかぶや、斜め薄切りの長ネギでも。オクラの花は限られた季節にしか出回らないので、彩り役の野菜はおうちにアルモンデ。合わないものはないくらい、冬瓜は懐の広い野菜です。粒々マスタードは作り置きできます」

<材料>

冬瓜/オクラの花/塩

<作り方>

【1】冬瓜は皮を厚めにむき、薄切りにする。手のひらくらいの小さな冬瓜であれば縦6等分にしてから極薄切りするくらいがおすすめ。

【2】1ℓのお湯に塩を小さじ2ほど加えて沸騰させ、冬瓜をさっと茹でる。透明感が出たらザルにあげて水気を切っておく。オクラの花は根本を切り、おしべを取り除いてよく洗い、先ほど冬瓜を茹でたお湯に酢を大さじ1ほど加え沸騰させ、花をひとつひとつしゃぶしゃぶしてザルに上げる。

【3】オクラの花の粗熱が取れたら器に盛り付け、冷蔵庫で冷やす。食べる直前に粒々マスタードをかけて出来上がり。

*粒々マスタード*

<材料>

イエローマスタードシード/りんご酢(米酢)/アガベシロップ(またはハチミツ)/塩

<作り方>作りやすい量

洗って水気を切ったイエローマスタードシード50g、りんご酢100ccくらい、塩小さじ1/4、アガベ小さじ1を、清潔な空き瓶に入れてよく混ぜる。そのまま常温に置き、マスタードが酢を吸い切ってしまったら都度酢を足して2日ほど常温に置いておく。その後は冷蔵庫で2週間ほど寝かせれば出来上がり。

▼アルモンデ、ここが大切

※市販の粒マスタードを使う場合は、酢、塩、蜂蜜を加えてなめらかなソースにしてください。

※粒々マスタードは作ってすぐは苦味があります。苦味が消えたら食べ頃です。

ミニトマトが主役のサラダ

「そのままで十分美味しいミニトマト。でも今日はパーティーですから、そのままどうぞではちょっと寂しいですよね。見た目もきれいな紫玉ねぎで、ミニトマトを着飾らせてみました。紫色の野菜の色は「アントシアニン」。アントシアニンに酸味をくわえると、ピンク色に変わります。今回使った酸味は梅酢。梅酢は原液だと塩気が強すぎるので、水分を足します。梅酢がなければ、米酢と塩をあわせたものに少し砂糖やハチミツを混ぜ合わせてみてください」

<材料>

ミニトマト/紫玉ねぎ(玉ねぎ)/梅酢(米酢+塩+甘み)

<作り方>

【1】ミニトマトは洗って水気を切り、十文字の切り込みを入れておく。

紫玉ねぎはみじん切りにしボウルに入れ、梅酢:水=1:1で混ぜた梅酢水をひたひたに注いで10分ほど置く。

【2】ミニトマトの切り込みに、紫玉ねぎのマリネを詰め込んで出来上がり。大きいトマトを5mmほどにスライスしたものに、玉ねぎのマリネをかけてもOK。

なんちゃって浅漬けキムチ

「使いそびれた塩麹や甘酒が冷蔵庫にあったら、試してみてほしい即席キムチ。生の野菜の塩揉みをプラスしても美味しい。全部の調味料が揃わなくても、アルモンデ、味見をしながら作ってみてください」

<材料>

割干大根/きゅうり/塩麹/甘酒/ナンプラー/キムチ用粗挽き唐辛子/塩

<作り方>

【1】割干大根はひたひたの水で戻しておく。きゅうりは5mmほどの輪切りにし、塩で揉んでおく。

【2】戻した割干大根は2cmほどの食べやすい大きさにハサミで切り、きゅうりはしんなりしたらしっかり水気を絞っておく。

【3】ボウルに材料を入れ、塩麹:甘酒:ナンプラー:唐辛子=1:1:1:2を加えて、よく混ぜ合わせ味見をして、塩気が足りなければ塩麹を、甘味が足りなければ甘酒を足しながら好みの味に調える。すぐに食べられるが、1日冷蔵庫で寝かせるとより味が馴染んで美味しい。

▼アルモンデ、ここが大切

※割干大根は、太い切干大根のことです。普通の切干でももちろん美味しいです。切干だけでも美味しいけれど、季節の野菜の塩揉みを入れると食感が加わるのでおすすめです。これからの季節は人参やかぶもいいですね。

※甘酒はそのまま飲むものではなく、濃縮タイプをご使用ください。なければ味醂と米粉を鍋でとろりとするまで煮詰めたものでもできますが、甘酒をおすすめします。

※日本の一味唐辛子だと辛すぎるので、韓国や中国産のキムチ用の唐辛子を使ってください。ひとつあると、炒め物の最後にふりかけたり、ナムルに加えたり、少しだけ辛味が欲しい時に便利に使えますよ。

アルモンデの楽しさ

「有賀さんもおっしゃっていましたが、料理をする前に、今私はどんなものが食べたいのかな、家族は何をたべたいのかな、と自分に問いかけてみる時間を1分でもとることが大切です。一日に一食でも自分の希望を叶えるごはんをつくることができたら、幸せじゃないですか。材料がこれしかないという状況は決してネガティブなことではなくて、むしろポジティブなことです。条件が決まっているとあれもこれもと悩まないですみます。アルモンデ料理は、今あるもので自分を幸せにする、"足るを知る"料理なんです」

なかなかイメージがわかない時はどうしたらいいでしょう。

「一度成功したものを、繰り返し作り続けることをおすすめしています。何度もつくることで、手際もよくなりますし、どんどん自分好みの味になっていきます。結局、飽きないものが美味しいもの。自分の好きな定番の野菜料理がいくつかあると、料理は辛く面倒なものという思い込みを手放せますよ」

*第3回は、「しっかり味のメイン級の料理と、味付けのコツ」をお伝えします。

text by Keiko Hirose

今あるもので料理する、アルモンデ料理家の即興料理パーティに参加してきた!