アジア「壊滅」させる米中「軍拡競争」最恐のシナリオに戦慄…!

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知らぬ間に「米国のミサイル基地」と化していた日本

日本にとっての「最悪のシナリオ」とは?

政府による巧妙な「ウソ」とは一体…?

国際情勢が混迷を極める「いま」、知っておきたい日米安全保障の「衝撃の裏側」が、『従属の代償 日米軍事一体化の真実』で明らかになる。

※本記事は布施祐仁『従属の代償 日米軍事一体化の真実』から抜粋・編集したものです。

米国とソ連による「核軍拡競争」の時代

冷戦時代、米国とソ連は核兵器の軍拡競争を繰り広げました。

冷戦末期の1986年には、米国は約2万4000発、ソ連は約4万5000発もの核兵器を保有していました。

これは、互いに相手の国を丸ごと壊滅させるのに十分過ぎる数でした。米国もソ連も、相手から核兵器による大規模な先制攻撃を受けても、確実に反撃できる態勢をとっていました。どちらかが核兵器を使えば、双方とも確実に壊滅する関係が作り出されたのです。

こうなると双方とも核兵器は使用できなくなります。これを、「相互確証破壊に基づく戦略的安定」と呼びました。

しかし、この関係を維持するのに、こんなに多くの核兵器は必要ありません。冷戦末期、米国とソ連は軍備管理の交渉を行い、相手国に壊滅的な被害を与える戦略核兵器の配備数を双方とも6000発に減らす「戦略兵器削減条約(START)」を結びます。

ソ連は1991年に崩壊しますが、この条約はロシアに引き継がれ、現在は2010年に締結された新STARTに基づき、米国とロシアの戦略核兵器の配備数は1550発まで減っています。

対中戦略で、「核軍拡競争」時代へ逆戻りか?

中国が米国との間で「相互確証破壊に基づく戦略的安定」を達成するには、米国に近い戦略核兵器を持つ必要があります。中国は2035年までに、それを目指しているのではないかと米国は考えているのです。

米国政府は今のところ、中国の核軍拡に対応するために核兵器の配備数や保有数を増やす考えは示していません。オースティン国防長官も2022年12月、「核抑止は単なる数合わせのゲームではない。このような考え方は、危険な軍拡競争に拍車をかける可能性がある」と発言しました。

一方、米議会の諮問機関として設置された「米国の戦略態勢に関する諮問委員会」は2023年10月に最終報告書を発表し、「米国には迫りくる二つの核大国(ロシアと中国)の脅威に対処する包括的な戦略とそのような戦略が必要とする戦力構造が欠如している」と政府の対応を批判。「(米国の)核戦力の規模と構成は、ロシアと中国による複合侵略の可能性を考慮しなければならない」として、配備核弾頭数の増加など核戦力の強化を提言しました。

この提言どおり、米国も配備核弾頭数を増やすなどの対応をとれば、人類は再び危険な核軍拡競争の時代に逆戻りすることになります。

戦域核兵器の軍拡競争も

核軍拡競争が懸念されるのは、戦略核兵器だけではありません。むしろ、地域紛争での限定的な核使用を想定した戦域核兵器の方がその危険性が高いと私は考えています。

戦略核兵器の保有数では米国が中国を圧倒していますが、戦域核兵器では核弾頭も装着できる地上発射型中距離ミサイルを2000発以上保有しているとみられる中国が優位に立っています。

米国もかつては核弾頭を装着できる地上発射型中距離ミサイルを大量に保有していましたが、1987年にソ連とINF全廃条約を締結してすべて廃棄しました。

また、水上艦や潜水艦に搭載していた核弾頭型トマホーク巡航ミサイルも、冷戦終結後にすべて撤去しました。

米国が現在保有・配備している戦域核兵器は、(1)欧州に配備している戦闘機で投下する核爆弾(B61)、(2)戦略原子力潜水艦から発射する弾道ミサイルに装着する低出力の核弾頭(W76−2)、(3)B52戦略爆撃機から発射する核巡航ミサイル(ALCM)──の3種類です。

米議会の超党派の諮問機関「米中経済・安全保障調査委員会」は2021年11月に公表した報告書で、中国が核兵器の限定的な先制使用という新たな戦略を採用する可能性があると指摘し、「この戦略は、例えば台湾有事において、米国の介入の抑止や第三国に対する脅迫といった政治的目標のための道具となり得る」と警鐘を鳴らしました。

2022年ウクライナに侵攻したロシアは、核兵器の先制使用をちらつかせてNATOが介入しないよう牽制しました。同じように、中国も台湾有事の際、米国が介入しないよう、また日本などが協力しないよう核兵器の先制使用をちらつかせて脅迫するのではないかと懸念しているのです。

こうした懸念を踏まえて、同報告書は米国政府に対して、「戦域レベルにおける中国の核戦力の質的・量的優位への対応」を勧告しました。

前出の「米国の戦略態勢に関する諮問委員会」が2023年10月に発表した最終報告書も、アジア太平洋地域に戦域核兵器を配備する必要があると提言しています。

アジア太平洋地域が「軍拡競争」の渦中に…

今後、米国政府が中国に対抗して戦域核兵器をアジア太平洋地域で再び運用する可能性は、おおいにあるというのが私の見解です。

考えられるシナリオは三つです。

一つ目は、現在は欧州に配備している核爆弾投下任務を持つ戦闘機をアジア太平洋地域でも運用するシナリオです。

欧州ではこれまでF16戦闘機に核爆弾投下任務が与えられていましたが、今後はステルス性能を持つF35A戦闘機に置き換えられる予定です。

2024年7月、米軍は青森県の三沢基地に配備されているF16戦闘機36機をF35A戦闘機48機に置き換える計画を発表しました。将来的にはこれを、欧州に配備しているF35Aと同様、「核・非核両用機」(DCA:Dual Capable Aircraft)として運用する可能性があります。

二つ目は、潜水艦から発射する核弾頭型巡航ミサイル(SLCM−N)の再導入です。

このミサイルについては、トランプ政権時代の2018年、地域紛争における相手国の限定的な核使用への抑止力の強化を目的に再導入する方針が決定されていました。しかし、バイデン政権は2022年、前出のW76−2で抑止力は確保されているとして、導入の中止を決定しました。これを復活させるシナリオです。

三つ目は、これからアジア太平洋地域に配備する計画の地上発射型中距離ミサイルを、中国と同じように通常弾頭と核弾頭の両用に変更することです。

これは核弾頭の管理・運用という点でも、核戦争へのエスカレーションの危険性という点でも、かなりリスクが高い選択なので可能性としては低いとは思いますが、絶対にないとは言い切れません。

実際、米国は1980年代、ソ連の地上発射型中距離核ミサイル「SS20」に対抗して、「パーシング2」という地上発射型中距離核ミサイルを欧州に配備した経験を持っています。

このように米国が戦域核兵器の増強に踏み出せば、中国もこれに対抗してさらに戦域核兵器を増強するでしょう。さらに、ロシアや北朝鮮も対抗措置をとるでしょう。

東アジアでは今後、米中を軸として周辺国も巻き込み、ミサイルと核兵器の軍拡競争が過熱化する事態が予測されます。

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