「後期高齢者」を「最大歩行速度」まで追い込む…その結果、得られた「衝撃的な効果」

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放っておくと筋肉は年齢と共に衰え、そのことが原因で免疫力が下がったり、生活習慣病を引き起こしたり、心の健康や、脳の認知機能にまで影響を及ぼすと言われています。とはいえ、筋肉を衰えさせてはいけないとわかってはいても、運動をコンスタントに取り入れるのはなかなか難しい……。

そこでウォーキングの提案です。ウォーキングなら家の周りを歩いてもいいし、どこかに行くついでに1駅分歩くこともできるし、すぐにでも始められます。ただ、なんとなく歩くだけでは体力アップはむずかしいことも事実です。著者は科学的に「どれくらいの速度で」「どれくらいの頻度で」「どれくらいの時間行えば」「どんな効果が得られるのか」を徹底的に研究し明確にしました。その根拠となるのは、10年余りで7000人以上のデータを取った結果と分析。それがわかりやすく示されているので、なぜどのように体にいいのか、納得できます。そのようにして確立した、効果的で継続しやすい方法「インターバル速歩」を紹介。ややきついと感じる早歩きと、ゆっくり歩きを一定間隔で繰り返すだけのシンプルな方法です。

*本記事は『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。

要介護者のためには

これまでは、比較的若い中高年者について、インターバル速歩の効果を述べてきたが、後期高齢者を対象にしたインターバル速歩の効果検証も実施したので、その結果を紹介しよう。被験者は年齢75歳以上の介護度I〜IIの方々でデイケアサービスに通う方々であった。

通常の中高年の方々と同様、被験者9名に施設内の会議室などの比較的広いスペースに集まってもらい体力測定を実施した。携帯型カロリー計「熟大メイト」を腰に装着し、ストックをついたり手押し車を押したりして、彼らの最大歩行速度まで追い込む。「そんな、高齢者で体力のない方々にこのようなきつい運動をさせて、本当にやってくれるのか」と思われる読者もおられると思うが、若いスタッフに「○○さん、頑張れ、頑張れ」と声かけをしてもらうと、意外に、一生懸命歩いてくれる。「こんなに若い方々に名前まで呼ばれて応援してもらうのも久しぶり」というわけだ。そのような姿に若いスタッフの方が逆に元気をもらえる、といっていたのが印象的だ。

さて、このようにして決定した最高酸素消費量の70%のレベルをカロリー計に設定し、老健施設に週2日の頻度で来たとき、施設の廊下をスタッフと一緒に歩いてもらった。途中、休み休みだが、結局1日トータル11分の早歩きを実施した。

その結果、3ヵ月間で最高酸素消費量、膝の伸展筋力が共に10%近く上昇した。そして、なによりも担当した大学院生が感動したのが、ヒューマン・コンタクト(会話に対する応答)がよくなった、認知機能がよくなったように感じる、ということだった。この研究結果を基に、先に述べたように、秋田県由利本荘市で本格的な介入研究を実施し、5ヵ月間のインターバル速歩の認知機能改善効果を明らかにした。

このように要介護者でも最高酸素消費量を測定し、その70%以上の負荷で運動トレーニングを実施すれば期待通りの結果が得られるのだ。

さらに連載記事<なんと「10歳」若返る「すごい歩き方」、その「意外なやり方」を完全公開する…!>では、「インターバル速歩」の具体的なやり方を解説しています。

なんと「10歳」若返る「すごい歩き方」、その「意外なやり方」を完全公開する…!