「お前、おふくろの介護して」結婚20年モラハラ…容姿端麗な夫の「末路」

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「最近、介護をきっかけに離婚に踏み切るための証拠にしたり、介護を隠れ蓑にする浮気が増えています」と言うのは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんだ。彼女は浮気調査に定評がある「リッツ横浜探偵社」の代表だ。

今回相談してきたのは45歳の派遣社員・由美さん。大手企業に勤務する50歳の夫との間には18歳と15歳の娘がいる。夫は学費も含めた生活費として月10万円しか渡していない。一家が住むのは由美さんの父が贈与した一戸建てで、家賃はかからない。

大学の先輩・後輩として知り合い、由美さんが先輩でモテモテだった夫に惚れ込んで妻の座を射止めて20年になる。しかしいざ結婚すると、夫は常に自分を優先した生活を送り、由美さんは「惚れた弱み」に付け込まれていた。妊娠して仕事を辞めざるをえなくなるまで生活費はもらっていなかったし、辞めたあとも、学費などすべて含めて月10万円。大手企業に勤務する夫の推定年収は1300万円だが、由美さんと娘たちの生活は苦しい。窮状を訴えても、夫は金をくれないので、由美さんはひたすら忍従し、パートで働いていた。

なぜ、家族に金を渡さないのかというと、夫はおしゃれと飲食費に使用すると同時に、自分の実家への仕送りをしていたから。さらに、夫の父親が6年前に亡くなってから、母親を呼び寄せて近くの家賃5万円のアパートを契約。さらに生活費として月10万円も渡していたのだ。

しかも義母が認知症を発症していることに気づくいた由美さんが夫に言うと「お前、おふくろの介護してよ。俺、忙しいから」とパートをやめて介護しろとまで言うのだ。夫は由美さんに介護を押し付けるつもりでいる。その一方で明らかに浮気もしていた。このままでは、由美さんも娘2人の未来も潰されてしまうと、離婚を決意。それまで黙認してきた浮気の証拠を押さえて、慰謝料と養育費を得ようとしているのだ。

では調査の結果は……。

激しくモテていた夫

由美さんと夫との夫婦関係を再度振り返りましょう。ふたりは大学の先輩・後輩として出会います。夫は当時大人気だった俳優・窪塚洋介さんに似ており、卒業後は超大手企業に勤務していることもあり、激しくモテていました。由美さんは25歳の時に、ライバルを蹴落として結婚します。

由美さんが当時勤務していたメーカーは、産休・育休制度の前例がなかったために、現在18歳の娘を出産するための産休に入った段階で、退職に追い込まれます。夫は結婚から出産までの2年間、生活費を出しませんでしたが、由美さんが働けないことを知ると、しぶしぶ生活費として月10万円を出すようになったとのこと。3年後に次女が生まれてからも、生活費は10万円のまま。学費もすべて含めてです。由美さん一家が住む家は由美さんの父が用意したものなのに、夫は家賃さえ払わなかったそうです。由美さんは娘2人を育てるために、パートをしたり、実家からときに援助をしてもらったりして、やりくりをしていました。

それでも限界があります。ある日、高校でバレーボール部に入った次女が、ユニホームのための3万円を「お父さん、お金出してほしい」というと夫は「どうせ辞めるのにそんな大金は払えない」と言い捨てたのです。その直後、近所に住む80歳の義母から老眼鏡がなくなったと連絡が入り、いそいそとお金を渡しに行ってしまう。

さらに、この義母が認知症を発症。由美さんがそのことを夫に伝えると「お前、おふくろの介護してよ。俺、忙しいから。お前の仕事は誰にでもできる、派遣の仕事だろう?」と言われます。そのことに対して、由美さんは怒りと絶望を感じます。

さらに夫は浮気もしていました。由美さんは黙認していました。それは惚れた弱みもありますが、大手企業に勤務する夫が、退職時や老後に受け取るお金を目的に、離婚せずにいたのです。夫と離婚するためには、見て見ぬふりをしてきた浮気の証拠を押さえるしかない。そして、夫を家から追い出し、慰謝料と養育費を得るために、調査の依頼をしてきたのです。

これまでも多くのモラハラの現場を調査してきましたが、由美さんとお嬢さんたちが自立するためにもきちんと現実を抑えなければと誓いました。

「食材費と光熱費をグラム単位まで試算して出せ」

由美さんはこの連載を読んでおり、夫の1週間の行動を細かく記録していました。それを見ると、毎日、帰宅は23時で義母の家に行くことを理由にしていました。夫は結婚してからほぼ家で食事をとっていない。由美さんの料理が口に合わないと言っているそうです。

「生活費を払いたくないから、そう言っているんですよ。だって、夜中に帰ってきて、作り置きのものを食べちゃって、お弁当のおかずがなくて困ることがあります。家で食事しないどころか、隠れ“食い尽くし系夫”ですよ」と由美さん。

食い尽くし系夫、とは家族の分の食べ物を全て食べるという、配慮がない食行動を繰り返す夫のことをいいます。

由美さんが食べた分の食費を請求すると「食材費と光熱費をグラム単位まで試算して出せ」と言い、試算すると「食材のレシートを出せ。容器の重さを入れたのか。廃棄率も出せ」など揚げ足をとっては支払わないことがあったとか。とんでもない経済DVだと思いながら、由美さんの自宅前で朝6時から張り込みを開始しました。

トータルコーディネートは100万円?

夫は7時に出てきました。オリーブグリーンの高価そうなセットアップを着ており、バッグはあるハイブランドの新作で、靴はピカピカに磨かれていました。トータルコーディネートは100万円といったところ。

夫は整った顔に、引き締まった体をしており、かっこいい。ゴミを収集所の周辺で掃除をしている近所の方にも、にこやかに挨拶をしていました。どこからどう見ても優しそうで暖かな雰囲気です。

由美さんが「あいつは、異常に外面がいいんです」と悔しそうに言っていたことを思い出しました。

夫はバスと電車を乗り継ぎ、都心のオフィスへ向かいます。大手企業ですが、関連会社に出向しているようで、小規模なビルに入って行きました。

定時の18時になると、多くの社員がビルから出てきます。大企業はホワイトな職場が多いと聞きますが、まさにその通りだと。それでも夫は出てこない。今か、今かと待っていて出てきたのは20時でした。

キリッとした雰囲気で颯爽としていました。私たちの前を通ったのですが、アンバーな香りがするフレグランスが漂ってきました。この手の香水は、とても高価です。夫はカジュアルなイタリアンの奥の席に慣れた様子で入って行きます。そこでスマホを見ていると、とても華やかな女性が後から入ってきました。

会社の部下で既婚者

夫は「残業、大変だったな」などと言い、専門的な仕事の話を始めました。1本3000円程度のスパークリングワインを飲みつつ、楽しそうに話しています。二人の会話で分かったことは、由美さんの予想通り、会社の上司と部下という関係であるということ。また、この女性も結婚しているということでした。

1時間程度でレストランを出ます。この会計は割り勘でした。2人がラブホテルに行くのかと思っていたら、近くの児童公園へ。物陰で抱き合ったりキスをしたりしています。今の季節は蚊がいますので、短時間で終了。

女性は同じ沿線上に住んでおり、新宿駅からのほぼ満員の私鉄に乗り、お互いの性器を服の上から触り合っていました。中途半端な食事時間は、電車が混む時間に乗るために調整していたのかと思ってしまいました。

途中で降りた女性を追うと、別の電車に乗り換え、小さな駅で下車。立ち飲みバルのような所に行き、飲み直していました。女性は深夜1時までこのバーで粘り、近くの一戸建てに帰宅。家族が寝静まることを待っているかのようでした。

どんどん証拠が集まり…

調査2日目は会社からスタート。女性はかなり欲求不満が溜まっていることを感じましたので、この日にラブホテルに行くだろうと確信。会社の周辺か、もしくは沿線の目立ちにくいラブホテルをピックアップ。予想通り、夫と女性は沿線のラブホテルに入って行きました。

ここは壁が薄く、しっかりと音声をとることもできました。ここでわかったのは、女性は40歳でその夫も同じ会社であり、夫の元部下であるということ。女性は離婚して夫と再婚することを考えているような発言もしていました。

由美さんはこの女性からも慰謝料が取れると確信し、念には念を入れるために、もう一回のラブホテルのデートを撮影。1ヵ月間のうちに「ここだ」と決めた5日間の稼働をして、合計3回のホテル滞在を撮影して終了しました。

「俺を愛しているから許してくれますよね」

由美さんに報告すると「あ〜、やっぱりショックです。夫、こういう派手な美人が好きで、私に対して女性として魅力がないとよく言っていましたから」と泣いていました。

夫のことが好きになり、結婚し、20年間耐え続けた由美さんは、最初はとても暗い顔をして、証拠を見ていました。行為の音声も「聞かせてほしい」とおっしゃるので、動画を流したところ、「あ〜。辛い。辛いですが、なんか、滑稽ですね。夫への愛情のようなものは無くなりました」とスッキリした顔に変わっていったのです。

夫は弁が立ち、由美さんを追い込むのが上手い。私は「絶対に弁護士をたててください」と言い、由美さんはその通りにしたのです。

まず、弁護士が夫に話したところ「これは俺じゃない」と怒鳴られたそうです。そして、夫は自分に全く勝ち目がないことがわかると「由美は俺を愛しているから許してくれますよね」と言ったとのこと。

弁護士は由美さんと娘に攻撃がいくことを恐れ、2週間ほどホテル暮らしをしてもらうことにしたそうです。この間に自宅の鍵も交換。そのことで夫は由美さんが離婚に本気であることに気づき、離婚に向かって進むことを受け入れたのです。

一番お金を使っていたものは…

弁護士立ち会いのもと、夫の荷物は義母の家に運び込むことになりましたが、夫のクローゼットには高価な服が100着以上あり、バッグは40個、靴は50足以上あったそうです。当然、入り切らないのでトランクルームへ。

「私たちに何も買わずに、自分を着飾ることだけに一生懸命になっていたんですよ」と由美さん。夫には貯金がなく、NISAやiDeCoなども全くやっていなかったそうです。

「私にはやっている、と嘘をついていたんですよ。結局、慰謝料は10年後の退職金で支払うことになりました。養育費は下の娘が大学を卒業するまで、月20万円をいただきます。奴はバカだから、ゴネたんですよ。だから、給料を差し押さえてもらいました。素直に払えばいいのに、抵抗したから夫のモラハラが会社にバレてしまいました。来月、地方に飛ばされるみたいです。東京には帰ってこれないでしょうね」

証拠を押さえてから離婚まで1ヵ月でした。この間、由美さんは女性に200万円の慰謝料を請求。女性はそこから逃げ続けたので、会社と夫に浮気がバレてしまいます。

「この女も、地方支店に勤務になり、離婚するみたいです。罪は認めて謝ればいいって、誰かに教わらなかったんですかね?」

認知症の母を放置していた

夫は義母の家に行くと言っていたのに、金だけ渡してほぼ放置をしていたようです。見かねた由美さんが地域包括支援センターに行き相談すると、認知症と右足が不自由なことから要介護3の認定を受けます。

「特別養護老人ホームが40人待ちだと言われました。見捨てるわけにもいかないので、夫の妹に連絡して、引き取ってもらいました。もう離婚して他人なのだから、放置してもいいのですが、そういうわけにもいかなくて。義母は私のことがわからなくなっており“ご親切に、ありがとうございます”と言われて、複雑な心境になりました」

令和の今もなお、妻に生活を押し付けて、「働いている俺は偉い」とばかりに尊大な態度をとる夫は少なくありません。妻の間に長年溜まった怒りのようなものが、介護という引き金によって噴出した調査ともいえました。介護を家族の誰かがやらなければならないという考え方も改める必要がありますし、同時に少子高齢化の中、介護を担うエッセンシャルワーカーへのケア、事業所へのケアも本当に重要だなと改めて思わされます。

由美さんという責任感ある母のもとで、2人の娘は自由に未来を切り開いていくでしょう。彼女たちの将来が明るいことを願わずにはいられませんでした。

調査料金は50万円(5日間・経費別)です。

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