義母が「毎日」家に来る…ストレスを感じ始めた嫁が考える「これは善意なのか?」

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現在2人の娘の母で、白目をむきながら子育てに奮闘するママの姿を描いたコミックエッセイ「子育てしたら白目になりました」の著者である漫画家・イラストレーターの白目みさえさん。臨床心理士・公認心理師として精神科に勤務しながら、InstagramやX(旧Twitter)で漫画を随時更新しています。

子育てや仕事に忙しい白目さんですが、現在、二世帯住宅に暮らす義父母とのやりとりにも思わず白目をむいてしまうことも多いそう。なかでも義母の行動には、ありがたさを感じつつ負担に感じることも多々……。今回は、二世帯住宅の建設中に、義実家近くにアパートを借りて住んでいた頃を振り返り、「ちょっとやりすぎでは?」とも思える義母のエピソードを綴っていただきました。

まずは“近距離別居”で様子を見たい

現在、夫と2人の娘、義父母と義弟と二世帯住宅に住んでいますが、それが建つまでは義実家から車で15分ほどの距離に住んでいました。

当時、長女の妊娠を機に私は仕事を退職しており、通勤しやすいエリアなどを気にすることもなかったので、どこに住んでも良い状態。それなら義実家の近くに住んだほうが「出産後も何かと助けてもらえるだろう」という夫の助言もあり、義実家近くに住むことを決めました。

一応、その決断をする前に「近距離ではなく同居をするのもひとつだけど?」という提案もありましたが、義母とはいえ他人と暮らすことに耐えられる自信が全くなかったので、まずは近距離別居で様子を見たいとお断りしました。

私が引っ越したのは、ちょうど妊娠後期に差しかかった頃。お世話することが大好きな義母は、それはもう心配をして気を遣ってくださり、「毎日来てくれた」のです。比喩ではありません。「毎日のように」ではありません。本当に「毎日」来てくれました。ここからが私のストレス生活の始まりです。

その当時、夫は単身赴任状態でした。本来なら、夫も同じ時期に人事異動によって勤務地が変わる予定だったので、夫婦で引っ越してくる計画でしたが、色々と事情があり、それが遅れてしまったのです。そのため夫は週末だけ新居に帰ってくるものの、それ以外の日は前のアパートに住んだまま、隣県で仕事をしている状態でした。

「何かあったらどうするのか」

臨月に一人きりで見知らぬ土地に引っ越してきた私は、心細い日々を過ごしていたかといえば、意外とそうでもありません。家にいる間は引っ越しの荷解きや赤ちゃんを迎える準備などで大忙し。

コンビニは歩いて3分のところにありましたし、スーパーも歩いて15分ほどの距離にあって、のどかな川沿いを散歩がてら行って帰ってこられるので、とてもいい気晴らしになっていました。お米やお水など重さのあるものの買い物は、ネットで頼めば届けてくれますし、週末に夫に運んでもらえば別に不自由はありませんでした。

でも義母は来るのです、「毎日」。

「買い物に行ってはいけない。何かあったらどうするのか」

「重いものを持ってはいけない。何かあったらどうするのか」

「どこかに行きたいなら私も行く。何かあったらどうするのか」

「外に一人で出歩いてはいけない。何かあったらどうするのか」

というように、「何かあったら」を連呼しながら義母は毎日やってくるのです。

一体何があるのですか? 私が知らない間に街にゾンビでも大量発生しているのですか? 毎日監視されているような気分で……初孫が心配なのはわかりますが、お義母さんが自宅にいると運動不足により体重が激増します。

そして義母が来るとなると、私はパンツ一丁ではいられません。義母に連行……いえ、連れていってもらったお店で、半ば無理やり買ってくれたマタニティ服に着替えて、毎日お出迎えをしなければなりません。

とはいえ、別に義母が来ても特段やることはないので、お茶を出して座って2時間ほど会話。帰ってもらってから、見つからないようにこっそり買い物に行くのです。土手沿いを歩きながら「私は何をやっているんだ」としみじみ思いつつ。

ある日、こっそり散歩に出かけると…

ある日いつものように義母が帰ってから、こっそり散歩に出かけるため歩いていたら、忘れ物を取りに来た義母と鉢合わせしてしまったのです。

義母は私を見つけるや否や、数メートル先に車を停めて出てきて、「どこに行くの!言ってくれたらいいのに!何かあったらどうするの!」と言い、グイグイ車に乗せられました。見る人が見たらちょっとした誘拐です。

車に乗って「さぁどこに行くの?」と満面の笑みの義母。妊婦の定期検診以外でどこにも連れて行ってもらうことはなかったので、嫁と孫(胎内)と買い物に行ける!と、とても嬉しかったのだと思います。

でもお義母さん。私は散歩に行きたいんです。先日の定期検診で体重増加を指摘されているんです。きっとお義母さんと毎日お茶しながら和菓子を食べているせいだと思います。毎日持ってきてくださるもんだから、つい。

とはいえ、その頃はまだ『良い嫁キャンペーン中』で猫かぶり中の私にそんなことは言えるはずもなく。「郵便局(徒歩1分)に行こうかと……」と言って、角を曲がるためだけに車に乗り、別に必要ではない80円切手を1枚買いました。

夫に手紙でも書こうかしら……でもまたその手紙を出しに行くために車に乗せられるのでしょうか。

ついに義母に本音を伝えることを決意

お義母さんのご厚意は大変ありがたいのですが、さすがに苦しくなってきた私は思い切って義母に告げることにしました。

「お義母さん…あの…私の性格が本当に捻じ曲がっていて申し訳ないんですが…人がいると、どんなにいい人でもどうしても緊張しちゃって…一人でゆっくりしたいんです」半泣きになりながらそう義母に伝えました。

すると義母は「あらあらあら、そうだったの!ごめんね、気づかなくって!」と、荷物をまとめていそいそと帰ってくれました。「何かあったら呼んでね。すぐに来るからね」と言い残して。和菓子も残して。これ、賞味期限は今日ですね。食べなきゃですね。

閉まった扉を前に、義母の車のエンジン音を聞きながら、「なんだ、こんなに簡単なことだったのか」と私はほっと胸を撫で下ろしました。理解してくれた義母の心の広さと自分の勇気に心の中でそっと乾杯して、私はその日数日ぶりにゆっくりと眠りについたのです。

翌日から義母は1日おきに来るようになりました(苦笑)。

お義母さん……何もわかってくださっていなかったようですね。今思えば、ここから義母の悪意にも感じてしまう善意と戦う日々がスタートしたのでした。

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