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石川県の能登地方で記録的豪雨の被害が拡大しています。土砂崩れや河川の氾濫が相次ぎ、これまでに1人が亡くなり、12人の行方や安否がわからなくなっています。バンキシャは、中学3年生の孫の行方がわからなくなっているという男性に話を聞きました。【バンキシャ!】

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石川県輪島市。22日も朝から大雨に見舞われた。

バンキシャ
「うわあ…」

強い風も吹き付け、視界は白くかすむ。街には、元日に起きた地震の爪痕がいまだに深く残り、そこへ強い雨がたたきつけていた。バンキシャ!は、輪島市へ。

バンキシャ
「まっ茶色な水が…至る所で冠水しています」

バンキシャ
「道路が川になってる」

あちらこちらで道路が冠水。町は濁った水に覆われていた。

前線が停滞し、記録的な大雨が続いている能登地方。輪島市、珠洲市、能登町には一時、「警戒レベル5」にあたる大雨特別警報が発表された。

行方不明者も出ている。22日昼過ぎ、列になって捜索へ向かう自衛隊。この先にある中屋トンネルでは、地震の復旧工事中だった作業員ら4人が土砂崩れに巻き込まれ、安否不明になっている。

さらに輪島市の中心部にほど近い、久手川町では川が氾濫。

バンキシャ
「流木が積み上がっています」

住宅3棟が流され、中学生1人を含む4人と連絡が取れなくなっている。

石川県によると、安否がわからなくなっている1人は輪島市の喜三翼音さん。流木の中を捜索する家族がいた。祖父によると喜三さんは21日、家に1人でいたという。

バンキシャ
「お孫さんはご自宅に?」

安否不明の喜三翼音さんの祖父
「そうそう、2階に避難して。電話で話していた。『2階にとりあえず上がれ』って。(浸水で)下はもう出られない」

「孫が2階から下の濁流を写真に撮って送ってくれた。窓をやぶってでも飛び降りられないか、逃げられないか話しているうちに(電話が)途切れて。たぶん流された濁流で」

「下は濁流で飛び降りようにも助かる見込みがないと判断して、家にとどまったと思う。それで家自体がもう…あれだけ大きな木を濁流で、家も流されますよ」

「とにかく孫を何とか見つけてあげないと、と思って、それだけですよ。なんとか生きていてくれればこんないいことない」

娘とビデオ通話したという母親には、自宅2階から撮ったとみられる写真が送られてきていた。

安否不明の喜三翼音さんの母親
「これが最後の画像です」

押し寄せる土砂。

安否不明の喜三翼音さんの母親
「『高いところに逃げてね』と言って『わかった』ってそれが最後でした」

今回の大雨で特に目立った、河川の氾濫による被害。石川県内ではこれまでに23の川で氾濫が発生している。

これは21日、輪島市で撮影された映像だ(視聴者提供)。水位は2メートル近くあるだろうか。茶色い水が住宅をのみこんでいく。

市内のショッピングセンターでは、駐車場が冠水した。瞬く間に増していく水かさ。

店員
「え〜どうしよう…」

店員
「警察の前は、もう通行止めや言うてる」

その後も水かさは増え続ける。ついには、ショッピングセンターの中にまで流れ込んだ。実はちょうどこの頃、ショッピングセンターのすぐ脇を流れる河原田川で、氾濫が発生していたのだ。

これは、その河原田川に設置されたカメラの映像だ(石川県カメラ)。普段は流れの緩やかな川。それが一転、増水しているのがわかる。水が押し寄せる中、人々は店を脱出。隣の市立病院へと逃れた。

またショッピングセンターの脇には、能登半島地震で被災した市民が身を寄せる仮設住宅が。地震から約9か月、ようやく落ち着いたはずだった住まい。住民は小さいバッグを手に、避難する。

住民
「家の中、心配なもんで、まだおるんだって」

警察
「人まだおる?」

住民
「うん、声かけてもらえますか」

市立輪島病院のロビーには、周辺から避難してきた約200人が身を寄せていた。毛布にくるまり、水がひくのを待つ。

仮設住宅から避難してきたという人は…

バンキシャ
「ご自宅は地震で…」

仮設住宅から避難してきたという人
「全壊です。やっとこちらの仮設に入って落ち着いてきたんですけど、まさかこれだけ雨が降るとは」

こちらの男性も、地震で自宅が半壊してしまったという。

男性
「今月18日に鍵をもらった。仮設住宅の鍵(入居の)段取りをしている最中だった。せっかく仮設住宅が当たったと思ったら、こういうことになるとは夢にも思わなかった。もう着の身、着のまま」

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22日。浸水した仮設住宅を再び訪ねた。

大崎トキ子さん(78)
「土足でどうぞ。どろどろやもん。すごいことになってます」

大崎トキ子さんと、孫の颯介くん(12)、詩乃ちゃん(7)。地震のあと、家族でここに身を寄せていた。

大崎トキ子さん(78)
「(窓からも)水が入ってきて…こっちの布団も全部水浸し。なんとかちょっとずつ上にあげたんですけど、間に合わんでびちょびちょです」

7月末に入居して、およそ1か月半。

大崎トキ子さん(78)
「ちょっと慣れてきた頃に、またこんなことになりました。もうショックで。やけくそになって開き直っています。そんな状態ですね。しょうがないもんね、こればっかりは。誰も恨みようがないし。大変だなと思って。しゃべってたら涙出てくるわ」

仮設住宅を出て、自宅の様子を見に行く。

大崎さん
「地震の時、土台がずれてしまって」

濁流はここにも押し寄せていた。そこへ、1人の女性が。

颯介くんと詩乃ちゃんの母親
「ああ〜よかった!」

颯介くんと詩乃ちゃんの母親だ。出張で家族の元を離れていたが、急いでかけつけた。

颯介くんと詩乃ちゃんの母親
「どうなるかと思って…よかった…ごめんね」

子どもをしっかりと抱きしめた。

颯介くんと詩乃ちゃんの母親
「びっくりです、聞いていた以上で。命が助かっただけ本当によかった」

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22日、珠洲市でも朝から横殴りの雨に見舞われていた。

バンキシャ
「非常に雨風が強くなってきました。道路は冠水してあたり一面、川のようになっています」

市内を流れる若山川。

竹花和志 記者 NNN取材団
「川の流れで堤防が削られて、住宅が流されそうになっています」

想像を上回る被害…。珠洲市では、48時間雨量が観測史上最大の394ミリを記録。これまでに7つの河川が氾濫した。

これは、21日午後、撮影された映像(視聴者提供)。画面奥には、車体が半分ほど浸かった車が。そこへ…

「おっおっおっ、1人助けに行った人いるぞ」

車へ近寄っていく人。実は、車内に高齢者とみられる2人が取り残されていたのだ。

撮影者
「あっドア開けた」

すると…

撮影者
「あ!出てきた」

自力で運転席から1人。もう1人はおんぶされている。

撮影者
「地震で被災して…雨で被災して…」

ゆっくりと歩みを進める。

撮影者
「おじいとおばあ、おんぶしとるよ」

撮影者によるとその後2人は、消防によって保護されたという。

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22日午前、土砂崩れも起きている。

竹花和志 記者 NNN取材団
「道路は完全に冠水していて、あちらの家は地域住民によると土砂崩れで押し出されたということです」

近くの山肌が崩れ、住宅が押し流されたという。

これは8月の様子。車が通れる道があったことがわかるが、そこに土砂で住宅が押し流され、道をふさいでいた。

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バンキシャが訪ねたのは、珠洲市に住む秋房さん夫婦。妻の和佳奈さんは妊娠6か月だという。

秋房 大介さん(28)
「ここから出るのは危ないと思ったので、21日は一日中家にいた」

大雨の影響で周辺の道が寸断され一時“孤立状態”に。周辺では、断水した家もあったという。

和佳奈さん(24)
「対策だけしておこうって」

秋房さん
「水を貯水タンクにためたり」

元日の地震以降、意識していたという災害への備え。

秋房さん
「備蓄していますね。地震の時から」

さらに、22日になって通れる道を確認し、食べ物や飲料水などの備蓄を増やしていた。

石川県内では、今回の記録的大雨で地盤が緩んでいるところがあり、引き続き土砂災害などに厳重な警戒が必要だ。

*9月22日放送「真相報道バンキシャ!」より