ウニクレディトがコメルツ銀株取得、独銀行再編巡る議論再燃

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Christian Kraemer Tom Sims John O'Donnell

[フランクフルト/ベルリン 12日 ロイター] - イタリアの大手銀行ウニクレディトがドイツのコメルツ銀行買収に向けた「最初の一手」を打ったことで、ドイツ国内では銀行業界の将来を巡る議論が再燃している。ドイツ政府はコメルツ銀株の追加売却を停止し、国内最大手ドイツ銀行の出方にも注目が集まっている。

ウニクレディトは今週、コメルツ銀株の9%を取得したと発表した。一部はドイツ政府が売却した分だった。消息筋らによると、意表を突かれたドイツ政府高官らは不快感を示し、コメルツバンク幹部も反発している。

ウニクレディトのアンドレア・オーセル最高経営責任者(CEO)は12日、コメルツ銀との経営統合に関心があるが、急いではいないと発言。いずれにせよコメルツ銀株の取得は適切な投資だと述べた。

コメルツ銀は、2008年の金融危機後に政府が救済に乗り出したほどの重要行。ドイツにおける数少ない大手民間銀行のひとつで、中堅企業に多額の融資を行っている。

ホーエンハイム大学の銀行専門家、ハンスペーター・ブルグホフ氏は、コメルツ銀とウニクレディトが統合すれば「競争が妨げられ、ドイツ、特に中堅企業にとって好ましくない」と述べた。

投資家の間では、ウニクレディトに対抗してドイツ銀がコメルツの買収に乗り出す可能性も注目されている。

JPモルガンのアナリストチームは顧客向け資料で、この組み合わせは「ドイツ銀とドイツの利益に最もかなう」との見解を示した。

ただ、ドイツ銀とコメルツ銀の統合は実現可能性が低いとの見方もある。ドイツ銀は5年前、ドイツ政府の要請でコメルツの買収を検討したが、断念したと消息筋が当時ロイターに語った。

ドイツ政府高官が当時ロイターに明かしたところでは、買収すればコメルツ銀が保有するイタリア国債などの評価を調整する必要があり、数十億ユーロ規模の損失が発生することが大きなハードルのひとつになった。