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(MCU)『&ウルヴァリン』が世界的に大ヒット中だ。本記事時点までに全世界累計興収は11億4,475万ドルを突破。R指定映画として歴代1位となった。鑑賞者が絞られるR指定ながらも、2024年公開作の中でも第2位まで上り詰めている事実は快挙と言えるだろう。

MCUとしては、『アントマン&ワスプ:クアントマニア』やが不振に苛まれた2023年の印象を払拭した。まさにマーベルの救世主となったわけだが、その裏にはディズニーによる巧みなマーケティング戦略があったことを、米が紹介している。

本作のマーケティングでは、主演・製作のライアン・レイノルズも全面的に協力した。レイノルズは役者のみならず、自身のジンブランド「アヴィエーション・ジン」や通信事業者「ミント・モバイル」のオーナーとしても成功、カリスマ的な起業家としての一面も持つ。ビジネス界でのレイノルズは、天才的なマーケティングの才能が評価されている人物だ。

その手腕は『デッドプール&ウルヴァリン』の宣伝活動でも発揮された。レイノルズによれば、本作では「デッドプールのR指定マーケティングという直感」を避けることを意識。曰く、「特定のコメディ、アクション、スーパーヒーローといったジャンルに偏るのではなく、すべての顧客を意識したマーケティング」を心がけ、幅広い企業とタイアップした。

彼らがタイアップ相手に選んだのは、トマトチャップなどでお馴染みのハインツ、レストランやアミューズメントの有名チェーンであるデイブ&バスターズ、ナショナルジオグラフィック、映画専門チャンネルのターナー・クラシック・ムービーズ、恋愛リアリティショーのバチェロレッテ、ビールブランドのハイネケン、制汗剤のオールド・スパイスなどだ。こうしたコラボレーションによって「僕たちがどれだけ幅広いことをやろうとしているかを伝えることができた」とレイノルズは振り返っている。

旧20世紀フォックス時代の『デッドプール』前2作では、このような企業パートナーはほとんどいなかったという。『デッドプール&ウルヴァリン』では、撮影を開始した段階から、ディズニーのチーフ・ブランド・オフィサーを務めるアサド・アヤズがレイノルズやショーン・レヴィ監督、マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギと密に連携し、パートナー企業のリストを戦略的に組み上げたという。こうした大々的な取り組みは、R指定映画としては異例なのだそうだ。

タイアップ企業の数はMCU作品としては最大級だといい、中でも話題となったのはハインツだ。この企業はハリウッド映画と組むことは滅多にないそうだが、本作ではデッドプールとウルヴァリンが赤色と黄色であることにかけて、同社のケチャップとマスタードが素晴らしいコンビであることを相乗的にアピールした。アヤズも「文化的な流れに、すごく良い形で乗ることができた」と気に入っているようだ。

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その他にも本作は、アメリカで話題になりかけていた「奇妙でユニークな映画ポップコーンバケツ」のトレンドに素早く飛びつき、ウルヴァリンが大口を開けたポップコーンバケツをリリースしたり、デッドプールのお尻を再現したXboxのコントローラを発表したりと、SNSでバズを起こす仕掛けをいくつも作った(実際、いずれもバズった)。

また、レイノルズとヒュー・ジャックマン、ショーン・レヴィ監督は大々的なワールド・ツアーに繰り出し、各地の大きなイベントにも参加。韓国では最大の音楽フェスティバルであるウォーターボム・フェスティバルに登場した(いわゆる“番宣”らしくなく、レイノルズとジャックマンが素で楽しんでいるような様子が大事なポイントだ)。

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アヤズによれば、本作のプロモーションの肝は「出来るだけ幅広い観客を獲得すること」であり、特に「『デッドプール』を観たことがない人、あるいはマーベル映画を観たことがない人や、最近しばらくマーベル映画を観ていない人」が意識されたということだ。レイノルズの制作会社マキシマム・エフォートの共同設立者であるジョージ・デューイによれば、ディズニーはこの過激なR指定映画のマーケティングに「驚くほど協力的」で、「ディズニーはいつも物事の幅を広げてくれる」と、大々的な取り組みについて語った。

©︎ THE RIVER

『デッドプール&ウルヴァリン』の宣伝が数多くのポジティブな話題を作り出し、R指定映画、かつ『X-MEN』シリーズ含む過去のマーベル映画の知識も試される物語ながらも10億ドル突破の大ヒットとなったのは、マーケティングの天才であるライアン・レイノルズが自ら主導した部分も多いことや、起死回生を図るディズニーの大きなバックアップがあったおかげだろう。人気者であるレイノルズ&ジャクマンを惜しみなく活用したことや、どんなユーモアも許されるデッドプールだからこそうまく機能したタイアップもあった。デッドプールは型破りで異端児的なキャラクターだが、その活路をメインストリームの領域にまで大きく押し広げて成功した『デッドプール&ウルヴァリン』の宣伝からは、学びたいところがたくさんあるはずだ。

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