『地球の歩き方』と『ムー』が異色のコラボ。予想以上の反響も、いったい誰が買っているのか…編集長を直撃
このツアーを通じて、結婚にまで至ったカップルも誕生しているというから『ムー』は少子化対策にも貢献しているのかもしれない。
しかし、そんな「熱い読者」がいると書くと、この記事を読んでいる読者は驚くかもしれない。なにせ近年はQアノンなり暇アノンなりのネットを通じて一線を越えてしまった「ヤバ過ぎる陰謀論者」が溢れているからだ。
ところが、日本のオカルトを担ってきた『ムー』読者のリテラシーは驚くほどに高いという。
◆ネタ探しは「毎号大変」
号によってネタが矛盾する理由は、まずネタ探しに困っているからである。
「本当に大変なんです。面白いネタがあれば、すぐに飛びつきます。でも、単に奇妙な話を集めるだけじゃダメなんです。読者が『へえ、そうなんだ』と思えるような、ちょっとした裏付けや考察も必要なんです」
三上氏は、ネタ探しの裏話も教えてくれた。
「海外のミステリースポットを取材に行ったことがあるんです。現地に着いてみたら、噂ほど不思議でも何でもなくて。でも、そこで暮らす人々の話を聞いていると、また違った魅力が見えてくる。そういう意外性も『ムー』の醍醐味なんです」
◆創刊45年の歴史を支えてくれたのは…
さて、創刊から45年を数えた『ムー』は、これからの展望をどう描いているのか。
「テーマを絞った特集を考えています。例えば『縄文街道』とか。ただ、先ほど話したように、ネタ探しは本当に大変です。面白いネタがあれば、すぐに飛びつきますよ」
最後に、『ムー』の魅力について三上氏はこう語った。
「『ムー』は単なるオカルト雑誌ではありません。人々の好奇心、知的探求心を刺激する雑誌なんです。読者の方々も、ただ信じるのではなく、クリティカルに読んでくれている。そんな読者との関係性が『ムー』の45年の歴史を支えてきたんだと思います。デジタル時代になって、情報の流れが速くなりました。でも、それだけに『ムー』のようなじっくり考えさせる雑誌の価値も高まっているんじゃないでしょうか。これからも、時代に合わせて進化しながら、『ムー』らしさを守っていきたいですね」
いま絶望の2024年。人々は現世を諦めて異世界に旅立つか、陰謀論を信奉し世界を自分の思い通りに変えるかの選択肢を迫られている。そうした時、『ムー』と『地球の歩き方』は、二者択一ではない回答をもたらすきっかけを与えてくれるかもしれない。
<取材・文/昼間たかし>
【昼間たかし】
ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』