佐久間由衣&木南晴夏&武田玲奈
 - 写真:高野広美

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 2022年、伊藤理佐の漫画を原作にしたドラマ「おいハンサム!!」がオンエアされると、吉田鋼太郎演じる源太郎と妻・千鶴、そして三姉妹の「伊藤家」の独特の家族観が大きな話題を呼び、2024年にはシーズン2が放送され、ついに『映画『おいハンサム!!』』として劇場公開となった。仕事に、恋に、人生に迷い、もがき苦しみながらも父の「ハンサム」な助言によって成長していく長女・由香役の木南晴夏、次女・里香役の佐久間由衣、三女・美香役の武田玲奈が、本シリーズならではの“撮影あるある”を語り合った。(取材・文:磯部正和)

「おいハンサム!!」撮影あるある

Q:ドラマ2シーズン、劇場版と続く人気シリーズに成長しましたが、撮影現場での“あるある”がありましたら教えてください。

木南:セリフの変更が多いです。しかもリハーサル、テストを重ねているにもかかわらず、本番直前になって「ゴメンなさい。やっぱりこのセリフで」と急に言われるんです。特に最後の方は、セリフ変更が間に合わないから「口頭で言います」と突然言われることもありました(笑)。

武田:ドラマ、映画を通して、伊藤家でトランプをするシーンがありますが、あれも急に現場でやることになったんです。確かト書きにもなかったと思う。

木南:急遽「トランプやろう」ということになって、小道具さんが慌てて買いに行かれていました(笑)。

武田:そうそう、トランプ待ちが1時間ぐらいありましたよね。

木南:普通だったら「ないですね」と言ったら諦めるというか「ないならしょうがないね」となりそうなところを、山口雅俊監督の現場は諦めない(笑)。なので思いついてしまったら、私たちには「じゃあ、待ちます」という選択肢しかない(笑)。

佐久間:その意味では「おいハンサム!!」の現場は待ち時間がよくありましたよね。特に食べ物のシーンの前は。その時間を有効活用しようと、各自やるべきことをやっています。あとは食べるシーンが多いので、とにかく撮影前はお腹を空かせて現場に臨むというのもあるあるですね。

武田:ドラマや映画の台本を読んだとき、だいたい「このシーンは変わるだろうな」と想像できるのもこの現場ならではです。

木南:台本が割とざっくりしていて。「●●みたいなことをしゃべります」といった感じで、かなり流動的な現場です(笑)。

佐久間:逆に何も言われずに台本通りに進んでいくと「本当に大丈夫なのかな」と不安になるぐらいで(笑)。順調に進んでいくのは本来いいことであるはずなのに、変な感覚になるのもこの現場ならではかもしれません。

ミチルの旦那さんってどんな人?ここが気になる!

Q:母・千鶴(MEGUMI)が毎回「いってらっしゃい」の表現を変える、渡辺さん(太田莉菜)はいつも黒い服を着ているといった小ネタも人気ですが、個人的に気になっていることはありますか?

木南:(浜野謙太演じる)大森さんのおなかがだんだん大きくなっているとよく言われます。一応、浜野さんはおなかの中にモノを入れているのですが、ご本人のおなかのアップダウンの影響もあるような気がします(笑)。ご自身にも撮影中は「太ろう」という思いがあるようなのですが、一方で「でも太りたくない」という自我もあるようで。その葛藤が端から見ているとおかしかったです(笑)。

佐久間:(藤原竜也演じる)原さんが里香をどう思っているのか……というのは気になりました。

木南:それはあるね。つかず離れず、いい感じを楽しむみたいな? どんな思いなんだろうね。

佐久間:ある意味、ズルいですよね。結局、里香は彼に振り回されるだけ振り回されて自爆してしまうみたいな(笑)。

木南:あとすごく気になっているのは、藤田朋子さん演じる(伊藤家のご近所さん)ミチルの存在。彼女のご家庭って全く出てこないですよね。旦那さんはいるのか、子供はいるのか……謎だらけで。

武田:でもシーズン2で、(人気洋菓子店のパティシエ)ムッシュ(高橋克典)に熱を上げているとき、旦那さんがいる的な話はありました!

木南:そうだ、確かに! でもまったく背景が描かれていないのがすごく気になって。

Q:大森と由香の関係も気になります。

木南:由香が劇場版で大森さんのことをあるモノに例えているのですが、あれが由香なりの答えなのかなと。捨てたいと思っているけれど、捨てられないし、捨てさせてくれない……みたいな。腐れ縁というのがぴったりな関係なのかなと。大森さん的には渡辺さんのことが大好きなので、完全に元カノという感じなんじゃないですかね。

大森、ユウジ、原さん、恋人にするなら誰?

Q:三姉妹を取り巻く男性たちとして、大森、原さん、ユウジ(須藤蓮)らさまざまなタイプが登場しますが、恋人にするなら誰を選びますか?

木南:消去法でいくとユウジかな。原さんは既婚者だからないし、大森さんもすごく素敵な方だけど渡辺さんという好きな人がいるし。自分のことを見てくれないというのは、好きになってしまうと結構辛いじゃないですか。ユウジは美香がバイオレンスなことをしても、不思議な理由で出て行っても、ずっと美香のことを思い続けてくれるという一途さがあって。優柔不断で弱いところもあるけれど、消去法でユウジ。

武田:わたしもこの3人の中だとユウジかな。翔子(逢沢りな)さんとのことなど、グレーなことをやらかして美香を怒らせたりしているけど、まだギリギリセーフですし、浮気も未遂というか。こっちが強くいけば何とかなる部分もありますから(笑)。

佐久間:わたしは大森さんかな。大森さん、ちょっと変ですが考え方とかは、とても伊藤家に近い部分がありますよね。おなかが出ていて可愛らしい部分はありますが、メンタルはハンサムですよね。大森さんってやっぱりイイ男だと思います!

木南:あんな人が近くにいたら笑っちゃいますよね(笑)。

Q:佐久間さん的に原さんはダメですか?

佐久間:原さんは状況が許してくれないですよね。既婚者でなければ価値観も合いますし、たい焼きを半分にする方法などを聞いても里香のこだわりをちゃんと解決してくれる人だったんですけど。結婚していること以外はすごく合うような気がします。残念ですね……。

心に刺さった源太郎の「ハンサム」な名言

Q:父・源太郎には数々のハンサム発言がありましたが、特に心に刺さった名言は?

木南:わたしはシーズン1の最終回かな。お父さんが「過去に起こったかもしれないことや、未来に起こるかもしれないこと。それを知りたいのか、知りたくないのか。それはどちらでもいい。ただ日々の選択のなかで無数に枝分かれする可能性の道のうち、いま現実に歩くその道を歩き続けなさい。そしてこれからも選び続けなさい。生き続けなさい」というセリフはすごく好きですね。とてもいまの自分を肯定してもらえているような気がします。

佐久間:わたしはシーズン1の3話の冷蔵庫地図の話ですかね。食べ残しのネギを見て、お父さんの「人生には必ず終わりが来る。誰にとっても必ず途中で終わりが来る。だからやり残したことを後悔しても始まらないんだよ。ぴったりがなんだ。ある時点でぴったりだったとしても明日からどうする。やり残しを恐れずに前向きに生きろ、前向きに倒れろ。やり残してこその人生だ。娘たちよ、やり残しのある人生こそ、素晴らしい人生だ」というセリフですね。何でもやり遂げることが美徳とされていますが、何かをやり残すことがポジティブに捉えられて、すごく素敵だなと思ったんです。

武田:わたしはシーズン2の最終回ですね。選択肢がたくさんあるなかで迷ったときの「自分が本当は何を望んでいるのか、自分にとって必要なものは何なのか、幸せとは何なのか。虚心坦懐、素直になって考えてみるといい」というセリフが心に残っています。わたしは優柔不断で悩むことが多いのですが、お父さんの言葉で、まずは自分の気持ちに正直になろうって思えたんです。

劇場版のお気に入りシーン

Q:劇場版で印象に残っているシーンについてお聞かせください。

武田:お父さんが劇中歌の「エンピツが一本」(作詞・作曲 浜口庫之助)を歌うシーンがすごく好きです。台本が変わりすぎて、もともとあったシーンなのか記憶が定かではないんですけど、こんなシーンがあったんだという驚きと、特に前半がかなりエピソードが詰まっているのであそこで落ち着いた気持ちになれるというか。ホッとしました。

木南:わたしはお母さん(千鶴)と里香が京都の喫茶店でしゃべっているシーンがすごく好きでした。お母さんが食べているナポリタンがすごく美味しそうというのもあるのですが、あの年で娘がお母さんに相談できる関係がとてもいいな、羨ましいなと思ったんです。

佐久間:わたしも木南さんがおっしゃったシーンはすごく印象に残っています。これまで伊藤家のお母さんとして見ていたのが、あのときは違う存在に見えたんです。エプロンをしている“お母さん”ではなく一人の女性としての顔が見られた気がして、とても不思議な感覚でした。

Q:映画は公開されましたが、どんなところを観て欲しいですか?

木南:伊藤家の人々はもちろん、登場する人たちがとても個性的で不思議なのですが、どこかにいそうだなと思える人たちなんですよね。彼らが試行錯誤しながら日常を過ごしている姿がとても愛らしい。そんな人間模様や、三姉妹の恋愛模様も楽しみにしていただければ。映画を観たあと、美味しいご飯を食べながら語り合っていただけたらうれしいです。