日テレ→TBSへ異例の移籍…2回目放送『それって実際どうなの会』で露わになった「テレビ局の凋落」

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視聴者からは大歓迎の声が上がっていたが、業界内は騒然としている。

日本テレビ系で放送されていた深夜の人気バラエティ番組『それって実際!? どうなの課』は3月いっぱいで打ち切りとなった。

だが、どうしたことかTBS系で復活。6月3日にゴールデン枠で特別番組『巷のウワサ大検証!それって実際どうなの会』が突然、放送された。

タイトルが似ているだけでなく、内容もそっくり。出演者も進行を務めるMC・生瀬勝久に、大島美幸(森三中)、チャンカワイ、ザ・たっちのいつもの面々。ナレーションも同じだ。

6月26日には『世界くらべてみたら×それって実際どうなの会★グアムドンキ&一攫千金SP』と題し、堂々と2回目も放送が行われた。

業界関係者なら誰もがビックリ仰天する出来事だ。これが今、業界内で物議を醸している。

「同じ局内で番組の放送時間が移動することはあるが、他局に“移籍”するなんてことは見たことも聞いたこともないです」

と話すのは、キー局でバラエティ番組を担当するプロデューサーだ。

「放送が終了したドラマやアニメを他局が番販(番組販売)で買って放送することはよくあります。また、過去には歌番組が少しタイトルを変えて他局で放送されたり、『24時間テレビ』(日本テレビ系)に対する『27時間テレビ』(フジテレビ系)のようにパロディみたいな番組も確かにありました。

ただ、過去に放送されたものではなく、そっくりそのままの番組を新たに他局で制作した例はないですね。いったい何が起こったのかと、業界はとてもざわついています」

ただ、視聴者からは歓迎の声が多かった。

それもそのはず、夜遅い時間での放送ながら視聴率もよく、改編でゴールデンタイムに昇格するという噂が出ていたほどの人気番組だったからだ。

もし、放送した日本テレビと番組制作の中京テレビが了承していたのなら何も問題はないのだろうが、実際は激怒しているという。だが正式にTBSに抗議した様子は見られない。だからこそ、2回目も放送できたのだ。

別のテレビ局関係者にその辺の“裏事情”を聞いてみると、

TBSは抗議される筋合いはないと突っぱねることができる。片や日テレと中京が抗議できない理由があるんです。ちょっと複雑ですが、番組には書籍や写真と同じように著作権があります。しかしそれは“放送された番組”のこと。

ですから過去に放送された番組を他局で勝手に放送することはできません。ですが、“同じような番組”を他局で新たに制作しても違法ではないんです。番組販売と同じように、放送のフォーマットを販売することもあります。ただこれには著作権みたいなものはありません。海外の場合は番組がパクられた場合、フォーマット権の侵害だとして訴えることができるようですが、日本ではパクられても文句は言えないんです」

過去にはある“有名クイズ番組”が放送開始から何年かたってアメリカサイドに番組をマネしているのがばれ、フォーマットの侵害ということで、何億円か要求されそうになり番組が終了したことも。だが、日本では番組をパクっても“やったもん勝ち”状態だ。

「“良識の範囲”でならという“暗黙の了解”みたいなものが業界内にはある。『それって――』も法律的には問題はないようですが、内容だけでなく、タイトルも出演者もあれだけ“丸パクリ”では、業界のルールからは外れていますよね」(同・テレビ局関係者)

同番組がTBSで放送された経緯に関しては、同局が中京テレビを辞めたプロデューサーに“うちでやりませんか”と持ち掛けたという報道もある。これに関して、あるTBS関係者は呆れてものも言えないという。

「以前のTBSでは考えられなかったこと。仮に向こうから売り込まれても、テレビマンとしてのプライドがあれば受けないでしょうし、こちらから持ち掛けるなんてもってのほかです。やるにしても少し形を変えないと。露骨に“同じじゃないか”とか“盗作”とか言われることに何も感じないのが問題です。

TBSの編成は、昔と比べてレベルダウンが激しいと、内部でも言われている。深く考えないで判断したんでしょうね。その背景には、地上波は赤字だし、若者は見ないし、影響力もかなり低下しているという状況がある。だから、判断力も落ちてきているのだと思います」

さらに、そのウラには、テレビ局が抱える問題が見え隠れするようで、

TBSだけではないが、今やテレビ局は投資やいろいろ儲かりそうな分野に、素人にもかかわらず手を出している。特にTBSは『スクールIE』という塾をM&Aし、出向者はストレスフルになっています。

テレビを宣伝ツールに利用できることをアドバンテージにして、さまざまな分野の企業と組むことを考えている。年度初めの社長挨拶もテレビやラジオには触れず、売り上げが何億とか、事業拡大の話ばかりでした。放送局としては末期的ですよ」

TBSの現状を憂う。

’19年にはネット広告費がテレビの広告費を抜くなど、苦境に立たされているテレビ業界。「貧すれば鈍する」というが、“仁義なき”パクリ合戦は今後、ますます増えるかもしれない。

視聴者にとっては、本当に面白い番組が観られればいいだけなのだがーー。