仮想通貨取引所のCEOを務めるハムスターになるだけで、仮想通貨が稼げるとうたうゲームアプリの「Hamster Kombat」が、プレイヤー総数2億人を突破する人気を集めています。

How a 'Hamster' crypto craze has taken over Iran ahead of presidential elections | AP News

https://apnews.com/article/iran-presidential-election-bitcoin-hamster-kombat-934a398a0d2074c04bbf0112d701086f



What is Hamster Kombat, A New Crypto Tap-To-Earn Game

https://www.ccn.com/education/crypto/hamster-kombat-explained-telegram-tap-to-earn-game/

Telegram Game Hamster Kombat Hits 200M User Milestone

https://www.coinspeaker.com/telegram-game-hamster-kombat-200m-user/

‘Hamster Kombat’ Slammed by Iran Official as Telegram Game Claims 200 Million Players - Decrypt

https://decrypt.co/236798/hamster-kombat-slammed-iran-telegram-game-200-million-players

Hamster Kombat is dangerous, agree officials in Russia, Ukraine and beyond

https://therecord.media/hamster-kombat-clicker-game-concerns-russia-uzbekistan-ukraine

2024年6月になって、イランの首都テヘランでは、赤信号待ちをしているタクシードライバーやバイカー、歩行者などが必死にスマートフォンの画面をタップしている様子が見られます。スマートフォンを必死にタップしている人々がプレイしているのは、Hamster Kombatと呼ばれるアプリゲームです。

Hamster KombatはTelegram内で直接起動できるJavaScriptベースのアプリ「Telegram Mini Apps」で構築されたアプリで、プレイヤーはゲーム内の仮想通貨取引所を運営することで、実際の仮想通貨を獲得できるとされています。ただし、記事作成時点で仮想通貨が配布されているわけではなく、将来的にゲーム内通貨を独自の仮想通貨と交換できるようになり、ユーザーは金銭を得られるようになるという計画です。



なお、Hamster Kombatは2024年3月にサービススタートしたばかりのゲームですが、2024年6月24日時点ですでに2億人のユーザーを抱えています。なお、6月5日にユーザー総数1億人に到達したばかりであるため、わずか1カ月足らずで1億人のユーザーを集めたということになります。





そんなHamster Kombatのプレイヤー人口が特に多い国のひとつがイランです。Hamster Kombatがイランで人気を高めていることについて、「イランのHamster Kombatユーザーは、自分たちが大金持ちになることを夢見てこのアプリをプレイしています」「アメリカによる制裁により不況に直面してきたイランでは、長らくビットコインのような仮想通貨に対する関心が高まってきたという背景があります」とAP通信は指摘しています。このようなアプリにイラン国民が夢中になっている現状について、AP通信は「イランが直面している、西側諸国の制裁によって足かせをはめられた経済、根強い高インフレ、そして雇用の不足といった厳しい現状を浮き彫りにするようです」と報じました。

テクノロジー分野での人権擁護活動などを行うMiaan Groupでディレクターを務めるアミール・ラシディ氏も、「正直言って、これはイラン国民の必死さの表れです」「いつか価値あるものになるかもしれないという小さな希望を抱いて、イラン国民は何にでもしがみつこうとしています」と述べ、イランでHamster Kombatの人気が高まっている理由は同国の不況が原因であると語っています。

一方、政府関係者の間では微妙に意見が異なる模様。イラン軍副司令官のハビボラ・サヤリ少将は、「敵国によるソフト戦争の特徴のひとつがHamster Kombatです」「これは大統領候補の計画に国民が注意を向けないようにするための西側諸国の取り組みです」と述べ、Hamster Kombatが西側諸国による選挙妨害工作のひとつであると主張しました。

イランの国営テレビ局が発行する日刊紙のJameJamでは、イラン国内でHamster Kombatの人気が高まっていることは「一夜にして金持ちになり、努力せずに富を得られるという夢の表れ」であると記されています。JameJamは「働いて成功することでお金を稼ごうとするのではなく、このようなゲームに頼って近道や思いがけない利益を求めるような社会は、徐々に努力と起業家精神を失うことにつながるでしょう」と国民に向け警告しています。



Hamster Kombatの人気が高まっているのはイランだけではありません。Telegramの人気が高いロシア・ウズベキスタン・ウクライナといった国々でもHamster Kombatへの関心が高まっており、これらの国の政府関係者はユーザーに同アプリを利用しないよう呼びかけています。

ロシアの政府当局はHamster Kombatについて、「金銭面での潜在的なリスクが存在する」と指摘しており、子どもにとって危険性があると警告。ロシアの有識者の中にはHamster Kombatを「ねずみ講」と指摘する人もおり、「そんな単純な方法で大金を稼ぐことはできないと覚えておく必要があります。普通のゲームのように扱い、この種のゲームに多くの時間を割くことは避けましょう」とアントン・トカチェフ氏は語りました。また、タタールスタン共和国で児童権利委員を務めるイリーナ・ヴォリネツ氏も、「このゲームの制作者は娯楽を目標にしておらず、広告を含めた収益を気にしています」と指摘しています。

また、ロシアメディアのNEWS.ruが、14歳の少年がHamster Kombatでハイスコアを獲得するために3時間ごとにアラームをセットしていたため、両親が精神科医に助けを求めたと報じています。

ウズベキスタンの政府当局は、Hamster Kombatのプレイヤーがゲーム内通貨を仮想通貨取引所で金銭に引き換えようとした場合、15日間の拘留または罰金を科すとユーザーに警告しました。なお、ウズベキスタンには仮想通貨の取得・販売・交換に関する厳しい規制が存在します。

さらに、ウクライナの国立戦略コミュニケーションセンターは、「ユーザーデータがロシアのサーバーに保管されたままであり、ユーザーを危機にさらす可能性がある」と警告しています。



なお、AP通信がHamster Kombatの開発者に対してコメントを求めたところ、身元や事業計画に関する質問には答えなかったそうですが、「ゲーム内で仮想通貨は提供していません」「我々はゲームの仕組みを通じてユーザーに仮想通貨について勉強してもらいたいと思っています」という回答を得られたそうです。

Hamster Kombatの開発者については、ウクライナメディアのAinが「ロシア最大のドメイン名登録業者であり、ホスティングプロバイダーでもある、メディアグループRBKの一部であるRU-CENTERによって登録されているアプリ」と報告しています。

ロシアの独立系メディアであるTHE BELL.は、「Hamster Kombatの共同創設者のひとりは、自動車販売プラットフォームCarPriceの創設者で、ロシア人IT起業家のエドゥアルド・グリノビッチ氏」と報じています。