G7からフルボッコ、台湾にも盾突かれ…「メンツ丸つぶれ」習近平が繰り出した「八つ当たり」衝突の内幕

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ロシアと並ぶ主敵認定

6月13日からイタリアで開かれたG7サミットは14日に共同声明を採択して閉幕した。共同声明の内容は中国問題に対する言及が多く、中国に対する懸念や批判が盛り沢山となったが、特に注目すべきなのは以下の3つのポイントであろう。

1)中国とロシアの関係について、「ロシアへの支援に深い懸念を表明する」とし、ロシアの軍需産業を支援する中国に対し、「深刻な代償を支払わせる」と警告。

2)EV=電気自動車などの中国の過剰生産の問題について懸念を示すとともにG7として連携して対処すると表明。

3)インド太平洋地域の情勢をめぐり、中国による南シナ海や東シナ海での海洋進出に対する「深刻な懸念」を示し、武力や威圧による一方的な現状変更の試みへの強い反対を表明。

G7共同声明は結局、ロシアに対する批判の他は、その矛先を主に中国に向けた。今のところでは、中国はロシアと並んでG7にとっての主敵となっている感がある。

G7からの批判に対し、中国外務省報道官が17日、「中国を中傷し、事実に基づかず法的根拠もない主張は、偏見と嘘に満ちている」と強く非難したが、このようなヒステリックな反応からも、G7の中国叩きは北京の政府にかなり痛かったことが分かる。

そしてその6月17日、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は訪問先の米国の首都ワシントンで講演を行い、ウクライナを侵攻するロシアを支援し続けるなら中国は代償を払うことになると警告した。今までEU首脳や高官が中国に対して同じ警告を発したことがあるが、今回、軍事同盟であるNATO高官が中国を名指して警告したことは意味は重大。

7月にはワシントンでNATO首脳会談が開かれる予定だから、この会議でNATOは、ロシア支援の中国に対して具体的な制裁措置を打ち出す可能性もある。落ちこぼれのプーチンの肩を持つために、習近平中国はとうとう、NATOにとっての宿敵となっていくのである。

さらに楯突く台湾に「死刑方針」を出したところで

そして6月20日、台湾の頼清徳総統はまたもや、中国に楯突くような快挙に出た。その日、頼総統が就任から1ヶ月を迎える記者会見で再び、「中国に隷属しない」との主張を繰り返したのである。

それに先立って16日、頼総統は台湾の陸軍士官学校百周年式典に出席して「中華民国の生存と発展のために戦うことこそが陸軍士官の使命」だと語り、中国の軍事脅威に立ち向かって台湾を守る決意を示した。

頼総統が先月の総統就任式で「中国に隷属しない」と述べて事実上の「独立宣言」を行った後、中国共産党政権が頼総統のことを敵だと認定して凄まじい批判キャンーベンを展開した。さらに、台湾を囲んでの軍事演習を実行して軍事的恫喝を行った。しかしそれに対して、頼総統は一歩も引かずに、上述の二つの機会を利用して中国に敢然と立ち向かう姿勢を明確に示した。まさに痛快ではないのか。

こうした中で6月21日、中国政府は「台湾独立派」に対し、「死刑」も含めた「処罰方針」を発表したが、中国の警察権が全く及ばない台湾人を相手に「処罰」や「死刑」云々といっても実際の意味は何もない。おそらく台湾の人々にはそれが、「おぼえていろ」というヤクザ流の虚勢を張る恫喝にしか聞こえないのではないか。

フィリピンへ八つ当たり、その反動は更に大きく

こうして中国はEUに叩かれてNATOに警告され、台湾にも楯突かれて狼狽するばかりであるが、一方の習近平政権はまともにEUとNATOに対抗できずにおり、台湾に対してもどうすることもできなかった。言葉上の罵倒以外になす術もない状態である。

しかし、それでは国内向けでは習近平がメンツを失って政権の立場がなくなるから、それを避けるためには八つ当たりの矛先をどこかに向けていく以外にない。

こうした中で19日、中国海警局の船舶が南シナ海でフィリピン海軍のゴムボートに意図的に衝突し、フィリピン海軍兵士の一人に重傷を負わせた。それと同時に中国政府は、海警局の船がフィリピンの船に立ち入り検査を行ったとする写真を公開したが、それは明らかに国内向けに、「政権が対外的によくやった」との宣伝を行うためのものである。

しかし、こうした八つ当たりの国内宣伝工作でフィリピンとの緊張を高めていけば、それが本格的な衝突を招く可能性もあり、習近平政権はいつものような危険な「火遊び」をしているが、それに対して黙っていられないのはアメリカである。

6月21日、米国海兵隊のエリック・スミス総司令官は、一部メディアの取材に応じた中で、海兵隊としては今後数年内に、海兵沿岸連隊=MLRをグアムにも配備し、中国を念頭にフィリピン周辺に迅速に展開できるようにする考えを明らかにした。

四面楚歌の中での習政権の火遊びは結果的に中国包囲網のさらなる強化を招き、「敵は北京にあり」というのはいずれか、国際社会の合言葉となる日が来るのである。

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