その謝罪、逆効果になっていませんか? Photo by Ryosuke Konno

写真拡大

「謝罪」に必要な要素を知っていますか?
国立国語研究所の教授が、「雑な文章」を「ていねいな文章」へ書き換える方法をbefore→after形式で108項目教える『ていねいな文章大全』から、「謝罪に必要な三要素」を紹介します。(構成/今野良介)

謝罪のはずが言い訳に

次の文章は謝罪になっているでしょうか。

【Before】
お約束の日は実際には水曜日だったにもかかわらず、木曜日と勘違いし、お約束の時間に伺うことができませんでした。
水曜日と木曜日、字の形が似ており、近視の私には認識がつらいことがあります。
なぜ、こうした似たような字が連続する曜日に使われているのか、ただ恨めしく思うばかりです。

事実の確認はできていますが、真摯な反省は見られません。きちんとした謝罪がなく、かわりに言い訳だけが示されています。

書いた当人は言い訳という気持ちはないのかもしれませんが、自分の責任ではなく、文字のせいにしているため、申し訳ないという気持ちは伝わってきません。

さらに、再発防止策も示されていないので、この謝罪を受け取った人は、「この人はきっとまた同じことをするのではないか」と感じ、信用を落とすのではないでしょうか。

以上の点を改善すると、一例として次のようになりそうです。

【After】
先日は、お約束の日を間違って覚えており、お約束の時間に伺うことができず、まことに申し訳ありませんでした。(謝罪)
実際には水曜日だったにもかかわらず、よく確認せず、木曜日と勘違いしてしまいました。(事実の確認)
大事なお約束であり、もう一度ていねいに確認しておけば、こうした間違いをして、長い時間お待たせすることもなかったわけで、重ねてお詫び申し上げます。(真摯な反省)
今後は、きちんと確認することに加え、数日前にリマインダーをお送りすることで、大事なお約束の日時を確認するように努めます。(再発防止策の提示)

文章にはその目的におうじてかならず入れなければならない要素があります。

感謝でも、依頼でも、報告でも、忠告でも、その目的に応じた要素を考え、それを満たした文章を書くようにします。

謝罪という目的の場合は、事実の確認、真摯な反省、再発防止策の提示という三つがその必須要素になり、それによって謝罪が形になります。

謝罪の文面では、かならずその三つの要素が揃っているかどうかを確認のうえ、送付する必要がありそうです。

拙著『ていねいな文章大全』では、このほか「怒りや抗議への対処法」など、コミュニケーションスキルとしての文章表現の指針を豊富に紹介しています。