夫の暴言

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日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。「レスじゃなければ、病気じゃなければ…」と追い詰められてしまった正美さん(仮名・36歳)。2人目妊活の苦労についてインタビューしました。結婚生活13年目の今年、夫との夫婦関係も変化があったといいます。詳しく伺いました。

人生でいちばんつらい時期、夫からの衝撃のひと言

卵巣の病気になり、薬を飲みながらも、無事に第1子を産んだ正美さん。しかし夫とのレス気味な関係が改善することはなく、悩んでいた矢先に起きた第2子の初期流産。大っ嫌いだった同僚の女性が幸せそうに赤ちゃんを抱いている姿を見て、絶望しました。

「もう自分でもどうしていいかわからなくて、夫が家に帰ってくるなり、その日の出来事を話しながら泣いちゃったんです。私の1人目の妊活のときに、同僚のあの女から私がどんな嫌味を言われたのか、どんな意地悪をされたのか、一気にぶちまけました。辛いという気持ちをはじめて外に吐き出せたような気がします」と正美さん。

「けれど、夫からこのとき言われたひと言が今でも忘れられません。『お前って、みじめな奴だな』って。どういうつもりでそんなことを言うの? って頭が真っ白になりました」

痛みをともに分かち合ってくれると信じて夫に打ち明けたのに、結果的にさらに傷口をえぐられ、なにも言葉が出なくなってしまった正美さん。レス解消どころか、夫と別れようかとさえ思ったそう。

2人目妊活の苦労は当事者にしかわからない

しかし正美さんが離婚を踏みとどまったのには意外な理由がありました。

「あの『みじめだな』って夫から言われた事件の直後くらいに、いつもの病院で経過観察していた卵巣の様子を診てもらったときのことです。男性のお医者さんだったんですが、だれにも相談できなかった2人目妊活のつらさとか、夫から心ない言葉を言われた話をしたんです」正美さん。

そうしたら先生は明るく「まぁ、そうはいっても子どもがひとりいるんだからいいじゃないですか。世の中にはひとりも授かれない人だっているんだから、それは贅沢な悩みだよ」と一蹴したそう。

「このとき、2人目妊活をしている女性の気持ちは、当事者じゃないとだれにもわかんないんだな。たとえ相手がお医者さんであっても。それを夫に求めるのは、初めから酷だったんだなって思ったら、なんかあきらめがついたんです」と正美さん。

もちろん、当事者の気持ちに寄り添ってくれる医師もいると思いますが、やはり1人目妊活と2人目妊活では、同じ女性同士であったとしてもなかなか話題にしづらいなと感じるほど、大きな隔たりを感じていたといいます。

妊活が終わったら夫婦関係が穏やかになった

そして年月は流れ3年後…、正美さんは排卵誘発剤を飲みながら、タイミング法でまた子どもを授かることができました。1人目のときと同様、夫はレスかつ非協力的な態度で、何度も腹立たしさを感じましたが、無事に出産までこぎつけて、希望していた2人の子どもの母親に。

「毎日バタバタで、朝なんかずっと怒鳴りっぱなしですよ」と笑いながら話す正美さん。あわただしくも幸せで穏やかな暮らしを送っているといいます。

「夫から言われた酷い言葉の数々…。せっかく用意したマカドリンクを『店に返してこい!』と怒鳴ってきたり、流産したての私に向かって『みじめな奴』って言い放ったり、そういうのは全部忘れることはありませんけどね」と正美さん。

「ただもう、今は子どもたちのおかげで満たされています。私がいつまでも怒って、家庭の雰囲気を暗くすることはしたくありません。本音はずっとムカついているけれど、その気持ちごと墓場まで持っていくつもりでいます」

今春から夫と週末婚。「逆にうまくいってます!」

結婚生活が13年目にさしかかった今年の春、正美さんの夫は山陰地方への異動を命じられ、現在単身赴任生活がスタートしました。現在住んでいる九州の家からは新幹線を使っても片道3時間ちょっとかかる距離。夫は向こうに単身用のアパートを借り、週末だけ自宅に帰ってきて家族と過ごしているといいます。

「結婚当初、縁もゆかりもない状況で引っ越してきた九州ですが、この地で子どもを産み、育てながら、今も同じ職場で働き続けています。はじめのころこそ人間関係がうまくいかず、ついてこなければよかったと後ろ向きな気持ちではありましたが、長く住んでみると、自然が豊かで近所の人もみな優しくて、本当に住み心地がいい場所です。大好きになりました」と正美さん。

子どもたちの学校を変えずにそのまま進学させてあげたいという気持ちもあって、今回は夫に単身赴任してもらうことになったそう。しかし、少し距離を置いたことで、夫との夫婦生活にも大きな変化があったとか。

「もう二人目の産後からは完全にゼロ。物理的に場所も時間もないっていうのもあったし、気持ちも冷めていたし、ただ家族ではいたほうがいいから淡々と一緒に暮らしていただけの状態でした。でも実際離れて暮らして、この間GWのときに久しぶりに会ったら、すごく新鮮な気持ちで逆に仲よくなったんです。お互い、好きだとか言葉にはしなかったけれど、やはり大切な人という気持ちは変わっていなかったことを確認し合えた。頻繁に会えなくなった単身赴任によって、レスも改善されました」

レスのつらさに悩んでいる方へ

うれしそうに話す正美さんに、同じようにレスで悩む女性たちへ、最後にメッセージもいただきました。

「レスの悩みひとつとっても、夫婦の数だけ本当にいろいろな状況があると思うんです。幸せそうに見えていたって、本人にしかわからないこともたくさん。だから周りと比べないほうがいいですよ」

正美さん自身、相談相手がいなくて、知らず知らずのうちに周りと比べて焦っていたのだそう。

「専業主婦だって、共働きの主婦だって、子どもがいる人もいない人も、なにかしら問題を抱えている。一生懸命がんばっている。辛い経験もしたけれど、そこから私はいろんなことに気がつかされました。周りと比べずに、自分のペースでゆっくり過ごせるよう意識して生きたいですね」