PCリュック「四次元かばん(R)Hack」開発経緯!東京都企業立地相談センター「sion works代表 井島 志乃氏」インタビュー

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東京都企業立地相談センターは、かばん、小物などの企画・製造・販売を手掛ける「sion works代表 井島 志乃氏」に取材を行い、その内容を東京都企業立地相談センターホームページにて2024年6月3日に公開しました。

次なる期待のアイテム、外出先でのノートPC操作を快適にするPCリュック「四次元かばん(R)Hack」を2024年6月2日(日)7:00から予約販売開始。

 

東京都企業立地相談センター「sion works代表 井島 志乃氏」インタビュー

 

株式会社sion works 代表 井島 志乃氏

 

■唯一無二のビジネス支援ツール開発で新風を吹き込むクリエイター

子どもの頃から「ものづくり」が好きだったという井島 志乃氏は、会社員生活を経て独立し、かばん、小物などの企画・製造・販売を手掛けるスタートアップ「株式会社sion works(シオンワークス)」を起業しました。

起業した場所は東京都江東区青海の「アジアスタートアップオフィスMONO」。

ここを選んだ理由や事業内容、展望などを取材しました。

 

●「1秒で名刺を取り出せる名刺入れ」が飛躍の契機に

「起業のきっかけは、ちょっとしたことから、とある武具かばんをつくる機会を得たことでした。

基本的に剣道の竹刀等の武具を持ち運ぶための武具かばんの選択肢は、限られた既成品のみ。

そのなかに気に入るものがなければ、自らの手でつくるしかありません。

それがものづくりを強く意識した出発点になりました」(井島 志乃氏、以下コメント同じ)

その後、会社員時代にビジネスツールとして親しんでいたかばん、小物などに領域をしぼって独立。

メガネケースやスマホバッグ、女性用の薄型財布などを開発、商品化しました。

なかでも特に人気の商品が名刺入れです。

親指で名刺をスライドさせたり、押し出したりすることでも素早く名刺を取り出せる。

外国人有識者が選定評価する「おもてなしセレクション2021」を受賞

 

「ビジネスシーンで初対面の挨拶の際に欠かせない名刺交換の時、名刺入れから名刺を取り出す時に、もたついてしまうことってありますよね。

初対面でお会いした方の第一印象は最初の3秒で決まると言われており、半年〜数年の間、お相手の潜在意識にその印象が残るとされています。

であるならば、もたつかず素早く交換できれば、きっと第一印象は良いはずですし、その後、お客様と良好な関係性を築くことにも期待できます。

そうしたことから着想したのが『1秒で名刺を取り出せて、相手に好印象を与えるための名刺入れ』です」

 

かくして完成したのが「Slide Thumb(R)(スライドサム)」です。

蓋を開けずに親指(Thumb)をスライドさせるだけで名刺を取り出せる構造で、厚さ約4mm、重さ16〜18gと超軽量。

複数の著名クラウドファンディングで話題となって成功を収めたほか、WEBニュース、トレンド情報誌など多くのメディアでも取り上げられ、注目を集めました。

種類は名刺が最大30枚入る「Slide Thumb(R)30」と最大50枚入る「Slide Thumb(R) 50」の2種。

素材は高品質の国産牛革「栃木レザー」と、発色が鮮やかな「イタリアンレザー」を使用。

どちらも本物の革を使用している証明書タグが添えられている

 

「基本的に同社商品はEC販売をしていますので、東京の巨大商圏は直接関係がないのですが、昨年『Slide Thumb(R)』を都内の有名家電量販店や百貨店などで展示・販売していただける機会を得ました。

お客様が実店舗で同社商品を手にとって確かめている様子を、自分の目で気軽に見に行けたのは、東京を拠点にしているからこその特典だったと思います」

 

●外出先でのノートPC操作を快適にするビジネスバッグで商機を拡大

順調に走り出した井島 志乃氏が、次なる期待のアイテムに位置付けているのが2024年6月に販売を開始したPCリュック「四次元かばん(R)Hack」です。

ビジネスパーソンの多くはノートPCを常時持ち歩いており、バス、電車などでの移動中やスキマ時間に、膝上にノートPCを置いて作業することが少なくありません。

井島 志乃氏が開発した四次元かばん(R)は、その“膝上ノートPC作業”の環境を大きく向上させ、快適なタイピングを実現するというものです。

 

「自社によるアンケート調査では、PCをリュックに入れて通勤通学をする人の移動中の座位時間は、1日平均30分以上あります。

彼らの約90%の人が移動中にPC操作をしたいと考えていますが、その作業はPCが膝上で安定しない、傾いてタイピングしづらい、前傾姿勢になりがちで肩、首が凝るなど、多くの困り事を伴います。

仮にこの30分間を快適な仕事時間に進化させて、1週間、1ヵ月、1年と積み重ねていけば、トータルの生産性向上に結び付くはず――それが四次元かばん(R)開発の背景です」

 

PC操作は、やはり“デスクの上”が理想的な環境。

四次元かばん(R)は、その環境を自分の膝上で再現するために、リュック背面に独自開発のPCスタンド「LTスライダー」を搭載。

LTスライダーがスライドしながら立ち上がることで、まるでデスクでタイピングをしているような距離と角度、快適性を実現しています。

また座って数秒でPC操作を始められるため、いつでもどこでもすぐに仕事に集中することができます。

販売開始前から本製品は高く評価されており、ものづくりピッチコンテスト「Tokyo ものづくり Movement 2023」で四次元かばん(R)の採択が決定。

事業化に係る開発支援金の上限1,000万円を獲得しました。

かばんの上でLTスライダーがスライドしながら角度が上がるため、デスク上と同じようにフラットな位置にノートPCを固定できる。

16インチまで対応可能。

国内特許登録は完了しており、加えて国際特許も出願中

 

ノートPC本体や周辺機器のほか、文具などもたっぷり入る。

PC操作中にもサイドポケットからリュック本体の物を取り出すこともできる

 

名刺入れや四次元かばん(R)、そのほかの商品開発を積み重ねて実績を上げてこられたのは、現在入居している、東京都江東区青海の「アジアスタートアップオフィスMONO」あればこそ、と井島 志乃氏は話します。

 

「何と言っても、入居者がすべての機械を無料で使える工作室の存在が大きいですね。

四次元かばん(R)のLTスライダーの試作造形は3Dプリンターなどが不可欠ですし、MONO事務局の橋渡しでコンテストや展示会・商談会などのチャンスをたくさんいただいています。

また、かばん、小物の素材である本革は、加工前、3平方メートル近くある非常に大きなサイズのため、一度にたくさんの加工をするにはかなりのスペースを要します。

ですが、MONOのワークスペースはゆとりがあり、問題ありません。

さらに、異なるジャンルである木材や金属などに詳しい入居者さんもいらっしゃるので、気軽にアドバイスをいただけたり、素材をお互いに融通し合ったりすることも。

私にとってここは理想的な環境ですね」

 

「『Tokyo ものづくり Movement 2023』で四次元かばん(R)の採択が決定したことも大きな自信になっています」と話す井島 志乃氏

 

オフィスを構えている「アジアスタートアップオフィスMONO」の展示スペースで撮影。

「ほかの入居企業さんと気兼ねなく意見や情報を交換することも多く、良い関係性を構築できていると思います」

 

●東京立地のメリット〜情報、人材、助成金…起業家を支援する充実の環境

最後に、東京立地のメリットについてお聞きしました。

 

「同社商品の根幹を成す“革”の取扱業者や加工業者の国内の集積地は、兵庫県(姫路・たつの)と、東京(浅草近辺)、和歌山の3ヵ所です。

浅草はMONOから30分ほどの場所にありますので、自分の目で直接素材を手にして確認ができますね。

また、素材だけでなく、新たな店舗や業者さんを紹介してもらい、短期間で知見や情報を集め、コネクションをつくることもできました。

環境に恵まれている点では、大規模展示会がひんぱんに行われる江東区有明の東京ビッグサイトが自転車で行ける距離にあるのも有利です。

交通費や宿泊費がかからず、日常業務の延長で気軽に出展でき、最新の業界動向を知ることができます。

さらに、MONOがあるお台場は自動運転バスなど次世代技術やサービスの実証実験場として活用されるため、気軽に参加して最新情報を得ることも簡単ですし、多様な文化施設、アートイベントなども多く、日常的にビジネスのインスピレーションを得ることができます」

 

ほかにも、売上状況や繁忙期に合わせた人材確保が比較的容易であるのも助かるとのこと。

 

「明日ちょっとお手伝いが欲しいな、と思った時に人材募集サイトなどで募集をすると、開始からわずか数分後には確定することも。

社員ではなくアルバイトや臨時のお手伝いで業務を回すことができます」

加えて、行政から多様な経済的支援を受けられるのも東京ならではと実感しているそうです。

 

「例えば、都産業労働局のクラウドファンディング活用助成金では、利用手数料の一部を助成していただきました。

また東京都中小企業振興公社のデジタル技術活用推進助成事業などの活用で、自前で高価なデジタル機器を購入する際にも、かなりの金額を助成していただいています。

私の場合、起業にあたって自己資金にあまりゆとりがなかったため、こうした支援は本当に助かりました。

そのほか支援事業に採択されていることから多くのバイヤーさんを紹介していただけて、消費者ニーズの動向や売れやすい商品づくりのアイデアをキャッチすることもできました」

 

ものづくりを支援する環境を整えたコワーキングスペース、行政・団体の手厚い支援。

sion worksにとって、東京はこれからも頼もしい味方になりそうです。

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