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Amazonはアメリカ最大の小売業者で、「世界で最も影響力のある経済的・文化的勢力のひとつ」としてアメリカの経済社会に君臨しています。そんなAmazonのお膝元で、シリコンバレーが気づかないうちに中国のEC企業のSheinとTemuが大きく業績を伸ばしていることが報じられました。

How Shein and Temu Snuck Up on Amazon - by Louise Matsakis

https://www.bigtechnology.com/p/how-shein-and-temu-snuck-up-on-amazon

Sheinは低価格帯の女性向けファッションを専門とする中国のECサイトで、Temuは中国製のインテリアや家庭用品を手頃な価格で提供しているECサイトです。

eコマースと中国に詳しいフリーランスのジャーナリストのルイーズ・マツサキス氏によると、アメリカにおける2024年4月のTemuの月間アクティブユーザー数は4700万人、Sheinは2900万人で、合算するとAmazonの6600万人を超えているとのこと。Amazonは、プラットフォームへのアクセス数は増加傾向にあるとしていますが、市場調査会社の集計では、Temuがローンチした2022年9月の7000万人から減少しています。



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アクセス数だけでなく収益も着実に伸ばしており、Sheinは2023年の収益が約450億ドル(約7兆円)を突破したとしているほか、Temuの親会社のPDD Holdingsは2024年第1四半期の収益が140%増加したと発表しました。

しかし、シリコンバレーの大企業らはSheinとTemuの台頭に気づいておらず、両社がアメリカに上陸してからしばらくの間はほとんどノーマークだったとのこと。

アメリカの通販業界が中国企業の進出に不用心だったのは、SheinとTemuがあまり情報を出さないのに加えて、「男性優位のベンチャーキャピタルやテクノロジー業界が目を向けない支持層から人気を集めたから」とマツサキス氏は分析しています。

あるレポートによると、Sheinの平均的なユーザーは30代前半の女性で、Temuのユーザーも大半が女性とのこと。



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また、PDD Holdingsの創業者であるコリン・フアン氏は2018年のインタビューで、「都市部の富裕層だけでなく、『北京五環路』の外に住む人々、つまり郊外に住む中低所得層にもアピールしたい」と話したことがあります。

ターゲット層を自社サイトに呼び込むため、SheinとTemuはデジタル広告に巨額の予算をつぎ込みました。The Wall Street Journalの調べによると、Temuは2023年にInstagramとFacebookの広告だけで20億ドル(約3100億円)近くを費やしたとのこと。

こうした数字を反映してか、Metaは2023年の業績をまとめたレポートで、中国からの総収益は前年比でほぼ倍増した一方、アメリカからの収益の増加率は6%に満たなかったと報告しました。

また、SheinとTemuは積極的なマーケティングに加えて、友だちや家族を紹介すると大幅な割引や無料製品が提供されるキャンペーンで新規顧客を集めています。こうしたプロモーションは良くも悪くも派手で、中国のECサイトに精通しているマツサキス氏が知人から最もよく尋ねられる質問は「このサイトは本当に合法?」なのだそうです。

マツサキス氏は破竹の勢いを見せる中国系ECサイトの使用感について、「SheinやTemuでのブラウジングは、ショッピングモールというよりもアーケードやカジノの中に居るようで、両社とも滞在時間などの指標を最大化するようにプラットフォームを設計しています。つまり、実店舗に足を運ぶ面倒を省くツールではなく、エンターテインメントの一形態とみなしているのです」とコメントしました。