ブロギレーツ(Blogilates)というフィットネスブランドとポップフレックス(Popflex)というアクティブウェア商品ラインの創設者であるキャシー・ホー氏は、バイラル化することで偽造の商品リストが生まれる可能性があると理解している。

同氏は、ホー氏の愛してやまないテイラー・スウィフト氏が自分の新曲「フォートナイト(Fortnight)」をプロモートする短い動画でポップフレックスの人気商品であるピルエットスコートをはいたとき、模造品が急増する予感がした。

このスコートはPopflexactive.comで15分間のうちに売り切れた。そのあとで、マーケットプレイスに数百のリストが出現しはじめた。しかし、TikTok、インスタグラム、Xなどのソーシャルプラットフォームに合計1700万人のフォロワーを抱えるホー氏が予測しなかったのは、これまでになかったようなレベルの人工知能による細工だった。

AIによる偽造品の問題に悩むクリエイター



Amazonの一部のリストは同氏の商品の写真を使用し、ほんの少しだけ修正して偽造品検出の手法をかいくぐった。Amazonのある出品者は、ホー氏がスカートを制作しているリールを使用し、ホー氏の顔をAIで生成した顔に置き換えて動画を複製した。また別の動画では、ホー氏のモデルがスコートを着ていたが、手が変形されてねじれていた。

これは不気味な情景だったし、ホー氏からすると窃盗だった。そして、さらに大きな問題、すなわちAIはクリエイターからさらに色々なものを奪いとるため使用可能だということを示唆していた。同氏はこの件についての動画を自分が使用しているすべてのソーシャルプラットフォームに投稿した。これらの動画は数百万回再生され、デュープ文化についての同氏の懸念に注目が集まった。

「結局のところ、自分の目の前で自分のものが盗まれていくことは正しいと思えない」と、同氏は米モダンリテールに語った。

偽造品の流通とブランドの対応に関する課題



多くの買い物客は、デュープと呼ばれるものについて、欲しいが定価を支払えない、または支払いたくない商品の安価な、人気のある代替品と考えている。しかし、その需要は偽造品にまっすぐつながっている。

シガン州立大学(Michigan State University)の偽造規制および商品保護センター(Center for Anti-Counterfeiting and Product Protection)は、2023年に行った世界的な顧客への調査から、顧客の10人に7人近くは過去1年間に1回以上、だまされて偽造品を購入したことがあり、一方で約半分は偽造品と知ったうえで購入したことが明らかになっている。

アディダス(Adidas)やポップソケッツ(PopSockets)など一部のブランドは、出品者に対して、偽造商品の製造と販売を行っているとして訴訟を起こしている。

Amazonとエプソン(Epson)はつい今週、24ほどの出品者が同社の名前を使用して偽造品のプリンター用インクを販売していると主張して提訴した。

また、ホカ(Hoka)やカーハート(Carhartt)などの企業の商品が、当の企業が関知せず同意もしていないのにマーケットプレイスで販売されている、いわゆる「グレーマーケット」にも対処する必要がある。

偽造品のリストにブランドからの本物の写真が含まれているのは一般的だが、これには業者にとっても逮捕される危険を伴う。クリエイターが著作権侵害でリストを報告し、そのリストが禁止される可能性もある。現在では悪意のアクターが、盗まれたコンテンツの正確な複製に見えないよう、AIを使用してそれらの画像を改変できる。

偽造品の増加とクリエイターの対応の課題



一部の業者はさらに、AIツールを使用して偽造商品を作り出している。作家であるジェーン・フリードマン氏は、AIで作成された本が自分の名前で販売されているのを目にした。

リスクコンサルティング企業ケーツー・インテグリティ(K2-Integrity)のシニアマネージングディレクター兼調査ディレクターを務めるブライアン・カール氏は、偽造品がAIツールを使用して顧客にリーチし、リストに本物として掲載する方法を見つけ出すようになってきていると、ことし初頭にインタビューで米モダンリテールに語った。

「環境は変化し続けている」と、同氏は述べている。

ホー氏が模造品や偽造品を非難するのはこれがはじめてではない。同氏は2023年1月に、ファストファッションプラットフォームであるシーイン(Shein)がピルエットスコートを模倣していることを問題にし、同社と対談することになった。

ホー氏は、この最新の模造品の問題が解決したあとも、AmazonやTikTokなどの企業がクリエイターに負担を負わせない堅牢なポリシーを作り上げるよう、声を上げ続けていくと語る。

「これらの会社と協力できるように常に接触を保っていきたいと考えている。当社は毎日数百ものリストを相手にモグラたたきをできるほど規模が大きくないからだ。ひとつの模造品を潰すと、別のものが出てくる。当社には大規模なチームもないし、偽造品専門の部門もないので、手に負えない」と、同氏は述べている。

知的財産保護のための取り組み



ホー氏とポップフレックスは、同氏の知的財産を保護するためいくつもの手段を講じ、数千ドルを投資した。可能な限り多くのリストを個別に報告するとともに、インスタグラム、TikTok、YouTube、Threads、Xで1700万人を超える熱心なフォロワーにも同じことをするよう呼びかけている。

法的には、ホー氏は2024年1月に純白色のピルエットスコートについてパテントを登録済みだ。これは、偽造品のリストを迅速に削除させるのに役立ってきた。また、すでにデュープインフルエンサーにより偽造品が制作されているのを見たというピルエットドレスなどのほかのデザインについてもパテントを申請中だ。

同氏は、次のバイラルヒットが何になるかの直感に頼って、デザインが作成された瞬間から予防的に保護を行いたいと考えている。

「自分の作品に愛情を抱いているため、作品を保護しなくてはならないと感じている。私は市場に出ているすべてのデザインひとつひとつに関わっている。それらを文字どおりスケッチし、すべてのフィッティングに関与している。2年以上の開発期間のあいだ、ずっと一緒にいた存在だ」と、ホー氏は述べている。

AmazonとTikTok、偽造品問題に対する取り組みを強化



Amazonは、ホー氏が提起した問題について話し合うため、ホー氏に接触する予定だと、米モダンリテールに語った。また、同社は店舗での偽造品やIP侵害を厳しく禁じているとも繰り返した。同社はこの問題に対してより予防的に対処するための手段を講じている。

ことし初頭には約70万の偽造アカウントの作成をブロックしたと、同社は述べている。

「当社は偽造品や、知的財産を侵害する商品がリストに掲載されることを防止するため、予防的な対策を採用しており、出品者が販売する商品をリストした瞬間から、当社の高度なテクノロジーによって偽造、詐欺、濫用の可能性が継続的にスキャンされる。これには、商品についてその後提出される変更も含まれる」と、スポークスパーソンは述べている。

一方TikTokは、コミュニティガイドラインにおいて、他者の知的所有権を侵害するコンテンツを許可しないと記載している。同社は人々に対して、誰かが「新しくクリエイティブな変更がない」コンテンツを複製した疑いがあるときは、著作権や商標に関する報告を行うよう求めている。

商品のリストの面において、TikTokは独自のAI駆動の検出ツールスイートがあり、TikTok Shopで偽造品が販売されていれば停止させると述べている。また、知的所有権を侵害するコンテンツや商品フラグ付けプロセスを迅速化するため、知的所有権に関するドキュメントをアップロードすることをブランドに求めている。

2023年後半の6カ月に、6万8000件を超えるIP停止の通報をブランドから受け取って処理したとTikTokは述べている。これは、1日あたり平均で約373件だ。

「当社には偽造商品とオリジナルでないコンテンツの両方に対する明確なポリシーがあり、ポリシーに違反しているものはプラットフォームから取り除く」と、スポークスパーソンは米モダンリテールに語った。

フォロワーやプラットフォームとの協力を通じて偽造品問題に取り組む



一方、ホー氏にも自分自身で対応しなければならないことがある。同氏の1700万人のフォロワーは2つの両極のあいだに位置する傾向がある。同氏の最大のサポーターの一部は、偽造品のリストの報告を助け、新たに出てきたものを教えてくれる。

ほかのフォロワーは、何が問題なのかを理解していない。一部のフォロワーは、ワークアウト用のスコートを作り出したデザイナーはホー氏が最初ではないと指摘した。デュープリストの方が安価で、ホー氏の60ドル(約9360円)の商品を買えないので、デュープのほうを選ぶと述べたフォロワーもいる。

しかしホー氏は、デュープがそれほど安い理由を理解していないか、気にしていない人が多いと述べる。多くのデュープは13ドル(約2030円)で販売され、これは60ドルで販売されるポップフレックスの商品の製造に同氏が支払う金額より安い。

「これだけ安価な製造のプロセスで、多くの人々が搾取され、傷付いている。みんな自分たちが悪いことをしていると知りたくないので、こういうことを話すとフォロワーを失う。自分たちが非難されたということを知りたくないのだ」と、同氏は述べている。

ホー氏は今後、プラットフォームやほかのクリエイターと協力して、マーケットプレイスがIP窃盗や偽造品に対する保護を行うためのポリシーの改善に努めたいと願っている。過去1週間に多くの友人やフォロワーが、「模造は賛辞」であり、多くの大手ブランドは偽造品を放置しているとホー氏に語った。

ホー氏は今週、自分の作品が奪いとられるなかで平和と精神の明晰さを見いだす方法に取り組んでいると、インスタグラムに投稿した。しかし同氏は、プラットフォームやデザイナーと協力し続け、「ファッションの無法地帯」に変化をもたらしたいと述べた。

マーケットプレイスを監視している人のなかには、同氏の話に耳を傾け、クリエイターが自分たちを保護するための新しいツールを作り出すのを支援する人がいない現状に変化を起こしたいと、米モダンリテールに語った。

「自分の考え方を変える必要があるといつもいわれる。それもわかるが、多くの独立のアーティストやデザイナーのために戦おうとすることもできると感じている」と、ホー氏は述べている。

[原文:After a Taylor Swift viral lift, Popflex faces off against AI-enabled counterfeits on Amazon & TikTok]

Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:坂本凪沙)