【多田文明】国民生活センターも注意を喚起...「引きこもりの無職長男(30代)」の相談で「オンライン占い」に100万円以上使った60代女性が見た「地獄」

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悩みや不安があるときに、ついつい頼ってしまいがちな占い。最近では時間構わず、どこにいても手軽に占いができる電話やオンラインツールを利用した鑑定サービスも人気だという。しかし、そこには思わぬ「落とし穴」が潜んでいて――。

2ヵ月で50万円近くをオンライン占い

「気が付いたら2ヵ月で電話占いとチャット占いで50万円近くを使っていました……今、考えるとなんであんな大金を使ってしまったのか、と後悔しかありません」

都内に住む会社員のかすみさん(仮名・20代)はそう後悔を口にする。

依存症状態だった」と振り返るかすみさん。発端は2023年11月のこと。交際相手と別れたことが原因だった。

かすみさんの元交際相手はたかしさん(仮名・20代)。大学時代に出会い、就職してしばらく経ってから交際を始め、付き合って5年。かすみさんはそろそろ結婚も視野に入れていた。

しかし、昨年の秋ごろからたかしさんの様子がおかしくなっていった。「もしかしたら浮気をしているのでは」と不安になったかすみさんはデートの途中で思い切って訪ねてみた。

すると、たかしさんはあっさりと浮気を認めたという。ショックを受けたかすみさんに対し、追い打ちをかけるように「結婚するつもりはない。別れたい」と言い放ち、かすみさんの追及にも黙ったまま。何を話すわけでもなく、その場を立ち去ったという。

「混乱していましたし、信じられなくて……私のなにが不満だったのか、なんで浮気したのか、何も話してくれなくて、一方的にフラれました……」

連絡を送っても返事はなく、電話にも出てもらえない。復縁を願っていたかすみさんが手を出したのが「オンライン占い」だった。

「初回無料」という売り文句につられて……

かすみさんがハマったのは大手オンライン占いサービス。初回無料、という売り文句につられ、アクセスしてみたという。

「『彼と復縁できる』って言われたんです!こちらから伝えていないことも当たっていて、『この占い師は信用できる』って思ってしまったんです。昼間は仕事をしたり、友達と会っていたからまだよかったんですが、夜になると悲しくなってしまって……友達からは『次に行ったら』って言われていたけど、諦められなかった。そんな時に話を聞いてもらえるのも良かったし、チャットだったら後から読み返せるので、使いやすかったんです」

かすみさんはたかしさんと復縁したい一心で占いサイトにアクセスを続けた。このサイトにはほかにも複数の占い師が在籍していたことから、次々に占い師を変え、復縁できるかを占い続けたという。

「1回5000円以上使っていましたし、多い時で3万円近く。ほかにも縁結びや復縁の祈願には1回1万円近くのお金を払っていました」

しかし、いつまで経ってもたかしさんからの連絡はこない。不安定になればなるほどお金を使ってしまったという。

オンライン占いにハマるのはなにも若い人だけではない。

東海地方に住む圭子さん(仮名・60代)は、無職で引きこもる長男(30代)の将来を憂いて、オンライン占いにハマったという。

1通のメール往復に1500円

「サイトの広告で知り、初回は無料なのでお願いしてみたんです。当たるって評判だってサイトに書いていたし、口コミも『信じていたら当たった』とか『人生が変わった』って書いてあったんで、信用できるな、と思い鑑定をお願いしました。鑑定はメールです。メールは往復1回で1500円かかりました。先生からメールで相談するとそれの答えを貰うのに1500円、開運の待ち受けをもらうのにも、また別にお金がかかりました」

占い師は圭子さんに「今は辛くても続けていけば息子さんの仕事が決まり、結婚して幸せな将来を送れるはずです」と告げたという。

占いや祈祷を続けても息子の様子はまったく変わりませんでした。まだ足りないって思っていたのに、たくさんお金を使ったことで、息子は怒って私を責めてきて……。私のカードが上限を超えてしまい、家の貯金にも手を出しました……夫がそれに気づいて『離婚だ』って……家庭が崩壊しそうです」

そういって圭子さんは大粒の涙を流した。この占いサイトには計100万円以上をつぎ込んだと明かした。

復縁のほかにも片思い、不倫といった恋愛に関する悩み事に関する相談占いの大半を占めている。家族、子どもの問題、仕事などその悩みは多岐にわたり、かすみさんや圭子さんのように数十万、数百万円をつぎ込んでしまった事例は後を絶たない。

そのため、国民生活センターなども注意を呼び掛けている。

「恋愛や仕事、人間関係などに悩んで占いにハマり、依存的になってしまう人はこれまでも問題になってきました。さらに、オンラインでいつでもどこでも簡単に占いができるサービスによって拍車がかかっています」(スピリチュアル事情に詳しいライターの当山みどりさん)

手軽さゆえの落とし穴

従来のような占いの館や占い師の自宅などでの対面での占いであれば、店舗が開いている時間や、予約が取れたときなど、その時間は多少なりとも限られていた。しかし、オンライン占いであれば時間も場所も気にすることなく、占ってもらうことができる。

オンライン占いとは、主に電話やzoomなどのオンラインツールを使った鑑定と、チャット機能を利用した文字での鑑定に分けられる。こうしたサービスは大手ポータルサイトをはじめ、数多く存在しており24時間365日、いつでも複数の占い師が待機している。

その手軽さがゆえに落とし穴も潜んでいる。

「1回数万円、月100万円近く使う人も珍しくはありません。店舗の場合、悪質でない限り、占い師や運営スタッフが客に注意をうながすこともできました。ですが、オンライン占いは歯止めが効かなくなる危険性がある」(前出の当山さん、以下「」内も)

多くがクレジットカードによる事前決済のため、次々に課金を重ねてしまい、金額が膨れ上がってしまう。気が付いた時にはすでに高額を支払った後だ。

「生年月日や住んでいる場所など占いに必要な情報と称して個人情報を聞き出されていることも危険です。口コミで『当たる』とか『願いがかなった』と書いてあってもサクラの場合が多く、本当にその占い師の実力だったのかは判断できない。

デタラメを伝えられ、お金を取られたとしても裏付ける証拠を示すのが難しく、詐欺とは言いにくい。限りなくグレーに近いのです」

詐欺や悪質商法の問題に詳しいジャーナリストの多田文明さんも「一般的にも占い詐欺とは言い切れない」と難しさを口にする。

「かねてから詐欺的な手法が非常に横行しやすいジャンルでした。悩みや不安に付け込まれるとおカネをたくさん取られてしまいがちになるんです。

ただし、すべての占いが悪いとは言えません。相手の事情を考えてアドバイスをしてくれる良い占い師になら問題ないんですが、悪質な占い師や業者の場合は困ったことになります。悩みの相談料として高額を請求されることはよくあるんです」

つづく後半記事『国民生活センターも注意喚起するが被害者が続出...専門家が明かす《オンライン占い》の「善良な占い師」の「見分け方」』では、悪質な占い師の手口についてさらに解説する。

国民生活センターも注意喚起するが被害者が続出...専門家が明かす《オンライン占い》の「善良な占い師」の「見分け方」