2000年代初頭には、流行に敏感な消費者が1カ所でお気に入りのブロガーをチェックできるRSSリーダー、ブログラビン(Bloglovin')があった。

今もブログラビンは存在するが、この1年間で多くの元ブロガーがサブスタック(Substack)に乗り換えた。このプラットフォームは、RSSフィードと同様に、作成されたコンテンツを集約してファンが1カ所でコンテンツクリエイターをチェックできるようにするが、その形式は定期的なニュースレターだ。

クリエイターはサブスタックにコミュニティや感性が似ているファッションファンの新しいハブを見いだしつつあり、一部はブログの初期の頃を思い起こさせる活発なコメント欄で活気づいている。

クリエイターたちが生計を立てる手段として



サブスタックの人気ファッションコンテンツハブには、レアンドラ・メディーン氏の「シリアルアイル(The Cereal Aisle)」(登録者数10万人以上)、ローラ・ライリー氏の「マガザン(Magaisin)」(登録者数2万人以上)、ベッキー・マリンスキー氏の「今買うべき5つのアイテム(5 Things You Should Buy)」(登録者数1万人以上)などがある。

サブスタックは、多くのライターに目的を達成するための手段、すなわち、独立したライターまたはクリエイターとして生計を立てるための新しい方法を提供している。ライターは決して儲かる職業ではないが、ファッション雑誌のラッキーマガジン(Lucky Magazine)の元編集長で現在は「ある年代の女の子たち(Girls of a Certain Age)」というサブスタックを運営しているキム・フランス氏は、「サブスタックのおかげで雑誌時代のライターと編集者がキャリアを取り戻すことができた。本当に素晴らしいことだ」と述べている。

サブスタックのライフスタイルパートナーシップのリーダーであるクリスティーナ・ロフ氏は、「ファッションと美容の分野のライターは現在、サブスクリプションモデルを利用して、懸命に作成したコンテンツの対価を仲介者の存在なしに受け取っている」と述べた。

「ここでも、多くのクリエイターがアフィリエイトリンクを使用し、ブランドパートナーシップを実行しているが、多くのライターはサブスクリプションモデルに自由があると理解し、広告なしで正直な意見を得るために読者が直接料金を支払うということに気づいている」。

通常は月額5ドルから8ドル(約765円から1220円)になるサブスクリプションの販売に加えて、サブスタックのライターにはアフィリエイトリンクの形式で収益を増やすチャンスもあり、ブランドもまたこのチャンスの恩恵を受けている。

インスタより高いエンゲージメントのレベル



設立からわずか4カ月のファッションブランドであるネリーアトリエ(Nelle Atelier)の創業者のマデリーン・コーエン氏は、サブスタックやTikTokを通じて同社のプチサイズデニムの売上を大きく伸ばしたと語った。これらのプラットフォームでは、インスタグラムやインスタグラムストーリーに比べて、フィット感についてより多くのストーリーテリングや説明が可能だという。

コーエン氏は、ネリーアトリエがサブスタックで成功したのは、このプラットフォームではエンゲージメントのレベルが高いためだともしている。お金を払って買ったサブスタックの投稿は腰を据えて読むが、インスタグラムではストーリーをすぐにクリックし、それほど注意を払っていないという。

さらに、サブスタッカーのパートナーシップは、サンプルの提供やアフィリエイトパートナーシップの開始を目的としてクリエイターにリーチアウトするのではなく、クリエイターから直接問い合わせを受けて確立されることが多いとコーエン氏は述べている。ネリーアトリエに接触した最初のクリエイターは「ジェーンオンジーン(Jane On Jean)」のライターであるジェーン・ハーマン氏だ。

ハーマン氏がはじめてネリーアトリエを知ったのはニュースレターのコメント欄だ。コメント欄では、おすすめについて意見が激しく交換され、アイテムが販売されることさえもある。それ以来、ハーマン氏は多数の投稿でこのブランドについて言及し、Vogue.comで称賛している。

その後コーエン氏がギフトを贈ったほかのサブスタッカーには、「モールヒル(Molehill)」のライターであるビブ・チェン氏や、前述の「マガザン」のライターであるエム・シーリーカッツ氏などがいる。その後、この両氏はそれぞれのサブスタックで、同ブランドについて言及している。

コーエン氏は、初期段階のビジネスに対するサブスタックの影響について「ブランドをフィーチャーしたサブスタックが発行された日は、通常、平均販売量が3倍から5倍になる」と語った。

ブランドもニュースレター掲載を望むように



一方、ファッションチェーンのフリーピープル(Free People)は、公式サブスタックパートナーシップを試しているところだ。

「我々のチームは、この数カ月のあいだにお気に入りのインフルエンサーたちがサブスタックをはじめたのを見てきたし、自らサブスタックのニュースレターを購入した結果、これは当社のインフルエンサーマーケティング戦略のなかでテストすべき新しいプラットフォームだとわかった」と、フリーピープルのブランドマーケティングディレクターであるリビー・ストラチャン氏は語った。フリーピープルは最近、エミリー・サンドバーグ氏の「フィードミー(Feed Me)」で初のサブスタックニュースレタースポンサーシップを実施した。

「エミリー氏から当社にアイデアの働きかけがあった」とストラチャン氏は述べた。「エミリー氏はニュースレターで、自身の休暇をテーマにしようと計画していたので、着用したいと思う製品を自由に選んで特集できるようにした。同氏は記事全体でアフィリエイトリンクを利用し、当社による短い『提供』の宣伝文を付けて、発行前に承認を求めた」。

ストラチャン氏は、このスポンサーシップによって「当社のクリックスルーと売上が大幅に」増加したと述べたが、詳細は明らかにしなかった。今後もフリーピープルはサブスタックのクリエイターと協力する新しい方法を試し続けるという。

フランス氏は、5月にサブスタック「ある年代の女の子たち」を開始する前に、同名のブログを12年間運営していた。サブスタックの利点のひとつとしてコミュニティへの参加があり、読者は、感性が似ているほかのライターやより広範なファッションコミュニティのメンバーと比較しながら同氏の作品を見つけることができる。

「インターネットの忘れられた片隅にあるささやかなブログではなく、より大きなネットワークの一部になった」と同氏はいう。「常にかなり強力なコミュニティとともにあったが、サブスタックの活発なコミュニティには非常に感銘を受けた。もっと稼げる可能性もあった」。フランス氏は、この移行により購読者の一部を失い、ブログの月間ユニークユーザー数2万1000人からサブスタックの購読者数1万4000人になったが、収入の落ち込みは見られなかったと述べた。収益可能性に関して、サブスタックの大きな違いは有料購読者にある。アフィリエイトリンクはブログとサブスタックで同じように機能する。

同氏はサブスタックでスポンサー付きコンテンツを提供していないが、サブスタックの人気が高まるにつれ、ブランドが関心を持ちはじめていると語った。たとえば、アパレルブランドのメイドウェル(Madewell)は、衣服を送ると申し出てきた。「サブスタックに所属するようになってから、より大きなブランドからの連絡が増えた」という。「ブランドは、どこかの知らないブログに掲載されるよりも、サブスタックのニュースレターに掲載されることを望んでいる」。

アフィリエイト収入は主目的ではない



フランス氏は、投稿を通じてショッピングをすることに慣れている、ブログの確立されたフォロワーベースのおかげで、サブスタックのアフィリエイトリンクを通じて収入を得るという点では、早い段階で優位に立てたと語った。

読者は主に40歳以上で、ライフスタイルブランドのアンソロポロジー(Anthropologie)、百貨店チェーンのノードストローム(Nordstrom)、ファッションブランドのセザンヌ(Sézane)、アパレルチェーンのジェイクルー(J.Crew)などの小売店でショッピングをするのを好んでいる。「大人のヘムラインを持つドレス(Dresses with grown-up hemlines)」というタイトルの季刊投稿は、アフィリエイト売上をもっとも促進するもののひとつだという。

同氏は、ライクトゥーノウイット(Like To Know It)のようなアフィリエイトショッピングプラットフォームと比較して、サブスタックでなら付けることができるアイテムに関する追加のコンテキストを読者が高く評価していると述べ、「読者は、試着室での友人になってほしいと思っている」と付け加えた。

ジュエリーブランドのドーシー(Dorsey)の創業者でCEOのメグ・ストラチャン氏は、2023年1月にサブスタックのニュースレター「今日のスタイル(What I Put On Today)」をローンチした。同氏のサブスタックは無料のままで、有料の投稿を発行したことはない。ストラチャン氏は、2023年4月にアフィリエイトプラットフォームのショップマイ(ShopMy)ではじめてアフィリエイトリンクのテストを開始し、それ以降の追跡可能な売上が13万5000ドル(約2065万円)をはるかに超えていると、米グロッシーに明かした。

しかし、アフィリエイトリンクはニュースレターに含まれる製品へのリンクのほんの一部だという。同氏のアフィリエイト収益を牽引しているトップの小売業者は、ラグジュアリーオンライン小売業者のマイテレサ(MyTheresa)だ。

「自分自身をクリエイターだとは思っていない。素晴らしいコートが大好きで、似たコートを探している人とリンクを共有しているにすぎない」とストラチャン氏は述べた。「ほかの会社やデザイナーを手軽に支援できる方法だ」。

さらに、これは穴を埋めることでもあると同氏はいう。「インスタグラムでのショッピングの欠点のひとつは、ストーリーが24時間で消えることで、もうひとつは、ストーリーの外でリンクを見つけられるようにする絶好の場所がないことだ。また、私がインスタグラムで共有するものの焦点は、私が着ているものではなく、私の会社である」。

[原文:For creators and former bloggers, Substack offers a renaissance - and a new revenue stream]

SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:分島翔平)