低温でじっくりコーヒーを抽出する水出しコーヒーは、酸味や苦味が少ないまろやかな味わいが特徴ですが、作るのに12〜24時間かかるという問題があります。そんな水出しコーヒーの抽出にかかる時間を超音波で劇的に短縮する技術を、オーストラリアの研究チームが発表しました。市販のエスプレッソマシンに超音波発生装置を取り付けるだけで実現したこの技術により、家庭でも手軽に水出しコーヒーが楽しめるようになると研究者らは語っています。

Coffee brewing sonoreactor for reducing the time of cold brew from several hours to minutes while maintaining sensory attributes - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1350417724001330

Hear that? That’s the sound of an ultrasonic cold brew coffee ready in under three minutes

https://www.unsw.edu.au/newsroom/news/2024/05/Ultrasonic_cold_brew_coffee_ready_under_three_minutes

超音波でコーヒー抽出している様子は、以下のムービーから見ることができます。

Ultrasonic Cold Brew Coffee in Under 3 Minutes - YouTube

水出しコーヒーの作り方はシンプルで、ひいたコーヒー豆に水を加えて抽出し、ろ過すれば完成です。



しかし、この方法には抽出に半日から1日かかるという欠点が存在します。



超音波を使うと抽出を加速させられることが以前から知られていたため、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学、クイーンズランド大学、シドニー大学の研究チームは、それをさらに効率化させる方法を模索しました。



その結果、エスプレッソマシンのフィルターバスケットに超音波を送るトランスデューサーを取り付け、フィルターバスケットを強力な超音波リアクターにする方法にたどり着きました。



ニューサウスウェールズ大学のフランシスコ・トルヒーリョ氏は「超音波は音響キャビテーションによって抽出プロセスを加速します。ひいたコーヒーの近くで音響キャビテーションの気泡が崩壊すると、マイクロジェットが発生し、コーヒーの粉に穴をあけて粉砕するのに十分な力が生じます。これにより、通常12〜24時間かかる抽出時間を、3分以内に短縮できました」と説明します。



研究チームが超音波で1〜3分で抽出したサンプルと、通常の24時間の水出しコーヒーを比較する官能試験を実施したところ、1分間のサンプルは24時間の水出しコーヒーとほぼ同じ味わいとの評価を受けたものの、香りはわずかに及ばなかったとのこと。一方、3分間のものは香りが同等でしたが、わずかに苦味が強くなってしまいました。



この結果から、研究チームは「24時間の水出しコーヒーに匹敵するものを作るには、飲む人の好みに応じて1〜3分間の超音波処理を行うのが理想だということがわかりました」と結論づけています。



トルヒーリョ氏は「私たちは、この手法を既存のエスプレッソマシンに適用できることを実証しました。特に重要なのは、この画期的な進歩により大型の装置がなくてもコーヒーショップやレストラン、ひいては家庭で24時間抽出のコーヒーに引けを取らない水出しコーヒーが提供できるようになったことです」と述べました。