お笑い界の″最重要″番組『有吉の壁』で多くの芸人が次々ブレイク その後も売れ続ける「特別な事情」

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早朝、都内の商店街に集まった人気芸人たち。キング・松本人志(60)の不在によって激動する芸能界で、彼らを審査するあの芸人の存在感が、ますます大きくなっている――。

4月上旬、この商店街で行われていたのは、お笑いバラエティ番組『有吉の壁』(日本テレビ系)のロケだ。

「収録は朝の9時半頃からスタートしましたが、出演者たちは8時頃には現場入りし、入念に準備している様子でした。準備中もそれぞれの出演者が芸人仲間やスタッフと談笑するなど、和(なご)やかなムードで撮影が行われていましたね。商店街で撮影したせいか、立ち止まって撮影を見る通行人も多かったです」(収録現場の目撃者)

『有吉の壁』といえば、特番時代を含めると放送9年目を迎えた日テレの看板番組。″壁芸人″と呼ばれる若手芸人たちがお題に合わせた芸を披露し、有吉弘行(49)が「○」「×」で判定していく。

「『有吉の壁』は収録時間が非常に長く、出演者の数も多い。スタジオとは違って移動しながら番組が進行するため、スタッフは迅速に動かなければならずピリピリしている。その一方で、演者たちは穏やかな雰囲気で収録に臨んでいます。そのムードが功を奏してか、番組からブレイク、再ブレイクを果たした芸人もたくさんいますし、売れてからも『有吉の壁』に出演し続けている芸人は少なくありません」(日テレ関係者)

実際、「とにかく明るい安村」(42)や「もう中学生」(41)は同番組をきっかけに再び脚光を浴び、「チョコレートプラネット」は″TT兄弟″というキャラを生み出して地位を高めていった。

なぜ、同番組から芸人が次々とブレイクし、人気者となった後も出演を続けるのか。TVコラムニストの桧山珠美氏が語る。

「『ダウンタウン』や松本さんの番組は、後輩芸人たちが絶対に粗相できない緊張感があった。皆、松本さんに認められたいと思う一方、どこかで恐れをなしているような空気がありました。一方、有吉さんの番組では後輩たちが怖がったりする雰囲気はなく、自由にのびのびとやっている。番組内で有吉さんは判定を下しますが、×でも有吉さんが面白くイジってくれる。だからこそ、芸人たちも楽しみながら収録に臨めるのでしょう」

また、桧山氏は有吉と松本の違いについてこう続けた。

「松本さんは自分が一番面白いという自信からか、後輩を育てようという気はあまり感じない。実際、彼が育て上げた芸人はいないし、『ココリコ』や月亭方正さん(56)は番組で共演しても松本さんが引き立てたりはしない。有吉さんは自分が落ち目になった時に内村光良さん(59)の『内村プロデュース』で再ブレイクした経緯があるから、後輩にもっと売れてほしいという気持ちがある。『有吉の壁』のコンセプトは、その表れだと思います」

売れっ子を見抜くセンス

テレビ解説者の木村隆志氏は、同番組における有吉の立ち位置をこう分析する。

「『有吉の壁』の放送枠である夜7時台はファミリー層の視聴者が多く、毒を吐くタイプの番組は本来受け入れられづらい。ただ、番組を見ていると有吉さんの出演者に対する愛情が伝わってくるので、ゴールデン帯でも長く続いているんですよね。権威的な存在だった松本さんとは違って、有吉さんは後輩を泳がせて良さを引き出すタイプ。自分が笑いを取ることにはこだわらず、出演している後輩芸人を面白くすることに重点を置いています。
テレビ業界でも、松本さんより有吉さんの方が起用しやすいという評価がある。松本さんはギャラが高いし、企画に納得して出てもらうのも難しい。反対に有吉さんは、出された企画に沿いながらベストを尽くすというタイプですから」

自分よりも後輩のウケを優先する有吉のスタンスが、番組から売れっ子を生み出していく。ある日テレ関係者は、『有吉の壁』についてこうコメントした。

「有吉にハマれば売れるというわけではなく、『有吉の壁』に出演することでネタを考え続け、それが芸人のレベルアップにつながっているのではないでしょうか。ただその裏には、『有吉さんを笑わせたい』という芸人たちのモチベーションがある。後輩に慕われる有吉だからこそ生まれる空気です」

さらに、有吉は他番組のキャスティングにも影響を与えているという。

「『パンサー』や『シソンヌ』など、有吉が面白いと絶賛した芸人は売れていく印象がある。バラエティ番組のスタッフは『有吉の壁』で有吉が評価した芸人に注目していて、それがキャスティングに反映されている」(制作会社スタッフ)

今や有吉に認められることが、若手芸人の間では一つのステータスと化しているのだ。その空気は、収録の現場にも表れている。

「出演者たちはカメラが回っていない時も楽しそうでした。ヤンキーに扮してポーズをとる『チョコプラ』と『シソンヌ』を佐藤栞里さん(33)がスマホで撮って盛り上がり、それを有吉さんが笑いながら眺める。番組のコンセプトが、休憩中も体現されているような現場なんです」(収録に参加したスタッフ)

後輩にチャンスを――。かつて苦汁を舐めた有吉だからこそ生まれる愛情が、人気芸人を集結させる要因になっていた。

『FRIDAY』2024年5月3日号より