火曜ドラマ『くるり~誰が私と恋をした?~』©︎TBS

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 誕生日を祝ってもらって嬉しいと感じるのは、「自分の存在を肯定したい」気持ちの表れでもあるのかもしれない。それは記憶を失ったまこと(生見愛瑠)にとっては特にそうなのだろう。「誕生日を忘れられると、存在認められてないみたいな気持ちになりますよね」という言葉に「そんなことはないよ」と思いながらも、まことがそう感じてしまう理由も理解できるような気がしたドラマ『くるり~誰が私と恋をした?~』第4話(TBS系)。

参考:宮世琉弥が大事にしている“自然体でいること” 『くる恋』の“ストキュン”担当としての自信

 まことは父親との電話で、自分の家庭環境が複雑なものであることを察する。記憶喪失になっても親や友達から連絡がこないことから、まだまだ家族の事情も含めて手がかりは少ない。さらには5月5日の自分の誕生日に、誰からも「おめでとう」を言ってもらえないのかと孤独感に苛まれていた。それもそのはず、自分の居場所を見つけようと必死にあがいている今のまことにとっては、“初めての誕生日”といっても過言ではない特別な日なのだから。

 そんな中、まことはすっかりリングショップの常連客となった律(宮世琉弥)から突然デートに誘われる。律が指定してきた日付は偶然にもまことの誕生日。その話を聞いていた杏璃(ともさかりえ)が休みをくれた手前、戸惑いながらも律とのデートを承諾するのだった。

 しかし、みんながみんなまことの誕生日を気にしてくれるわけではない。仕事帰りに公太郎(瀬戸康史)の元を尋ねたまことは、いつも以上に愛想のない公太郎に違和感を覚える。彼は彼で、前回朝日と親しげにしていたまこととの距離を計りかねているようだった。元カレなのに、公太郎が自分の誕生日を覚えていないことにショックを受けるまこと。そして多少なりとも、“今のまこと”にとっても距離感の近い人物だからこそ、余計に公太郎の態度が気になったのだろう。

 一方で、まことはGWの予定を聞いてきた朝日(神尾楓珠)には、律と出かけることを隠し、仕事が忙しいと返信するのだった。今のところ絶妙に友達枠を抜け出せていない朝日だが、これから逆転する展開はくるのだろうか。

 そしてついにやってきた、律とのデート当日。金魚すくいから始まったデートは、律なりの記憶を失くす前のまことを意識した“無駄”を楽しむデートだった。何不自由なく育ったにもかかわらず、自分の会社を立てて努力をする律に、まことは感心を隠せない。起業を頑張ってきた理由を「ある人に認めてほしくて」と話す律には、いつも完璧な律の表情にほんのりと人間らしさが垣間見えた瞬間だった。

 杏璃から「美しいものを美しいと感じてほしい」と言われたことで、まことは“12色の色鉛筆じゃない世界”をより意識し始める。そんなまことの「美しいものがみたい」というリクエストに応えるべく、律が選んだデートの場所はチームラボだった。さっと手を繋ぎ、「あっち行こう」と自然にリードする律の姿は、今のところもっともまことの恋人候補に近いのかもしれない。公太郎とも朝日とも違う、ストレートな愛を伝えてくれる律との間に流れる心地よい空気感が、まことの心を癒しているようにも見えた。

 しかし、東京タワーを前にして、いよいよデートの一番いいところがこれから始まる……というところで律の会社で緊急トラブルが発生する。律はまことに申し訳なさそうな表情を見せるが、“今のまこと”だからこそできる彼女の対応に、律は感謝の気持ちを込めて「待ってて」といつもとは少し違う落ち着いたトーンで言葉を放つ。このシーンは、いかにも“恋が始まりそう”な2人の関係性の深まりを感じさせる印象的な場面だった。

 八木亜未プロデューサーも律がまことを抱き寄せるシーンの撮影について語っており、「『片手で……』という監督のオーダーに、男性スタッフは『?』でしたが、りゅびびは即理解してOKを出してくれました」と話している。“りゅびび”こと律役の宮世琉弥のナチュラルな抱き寄せに、キュンとした女子も多いかもしれない。

 ところが、仕事がなかなか終わらない律を待つまことの元に先にやってきたのは、公太郎だった。そこに朝日も加わり、律が到着する頃には偶然にも3人が集まることになり、香絵(丸山礼)のカフェで改めてお祝いをすることに。まことにとって、大切な人たちに囲まれた誕生日は、かけがえのない思い出になったことだろう。

 一方で、第4話のラストでは「あのさ、一目惚れって嘘だよね?」とたずねる公太郎に律が不敵に微笑む場面も。まことの記憶が少しずつ紐解かれていく中で、“恋人候補”として今回一歩リードしたように見えた律だが、彼には何やら真の目的がありそうな予感。さらには、朝日の「どっちが好き?」という発言から、まことは母親に関するものであろう記憶の一部を取り戻す。家族に恋人……まことに周囲の人の記憶がない今、本作の中に巧妙に仕組まれた“嘘”は、一体どこからどこまでなのだろうか。

(文=すなくじら)