◆“治療迷子”の果てに…

 現在、サチさんは「ソマティック・エクスペリエンシング」を始め、「EMDR」などの身体的なトラウマ治療を継続中だという。

「まず心理教育を通して、自分はダメだっていう考えの修正を図るんです。ある程度土台が整ってきてからEMDRのスタートです。トラウマ記憶を思い起こしながら先生が左右に振る指を目で追うんです。“パルサー”っていう、振動する道具……黒いたまごみたいなんですけど……それを手で握ったこともあります」
 
 サチさんは手元のスマホで素早く検索し、「あったあった」と“パルサー”のサイトを見せてくれた。

「ちょっとうさんくさいですよね(笑)。科学的なエビデンスに基づいたトラウマ治療なことははっきりしてるんですけど、見た目怪しげだなーって。だからこそ、公認心理師・臨床心理士2つの資格を持ってることは必須なんですよね。有資格者で、研修でトレーニングを受けた人でないとEMDRはやっちゃいけないことにもなってますしね」

 トラウマがより複雑になるほど、治療の完成までの道が長いことは事実だろう。余計な回り道をせずに済む人が一人でも増えれば幸いである。

<TEXT/二階堂ゆり>

【二階堂ゆり】
ライター。東京都在住。ギャグ漫画をこよなく愛する。好きな作品は『スナックバス江』、『無能の鷹』など。分野は医療や福祉、学問が中心だがなんでも書きまくりたいと思っている。積極的に取材も行う