米カリフォルニア州ロサンゼルスにある南カリフォルニア大学(2024年4月16日撮影)。(c)Robyn Beck / AFP

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【AFP=時事】米国の南カリフォルニア大学(USC)が、イスラム教徒の学生による卒業スピーチを、安全上の懸念を理由に中止した。卒業スピーチをする学生の選定をめぐり、大学は親イスラエル団体から抗議を受けていた。

 米国ではイスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマス(Hamas)による紛争が昨年10月に勃発して以降、これに絡む政治問題が高等教育の場をも揺るがしている。

 USCの卒業生総代は、志願する数多くの成績優秀者の中から大学当局によって選ばれ、卒業式で最大6万5000人を前にスピーチする。

 今年の卒業生総代に選ばれていたアスナ・タバスム(Asna Tabassum)さんは、ネット上で「反ユダヤ主義的、反シオニスト的な発言」をしたとして攻撃されていた。

 同大のアンドリュー・グスマン(Andrew Guzman)総長は15日、「遺憾なことにここ数日、総代選出に関する議論が憂慮すべき色合いを帯びてきた」と述べ、5月10日に行われる卒業式をスピーチなしで行うと発表した。

 さらに「ソーシャルメディアと中東の紛争に激しくあおられた感情は、USC外の多くの人々の声をも巻き込み、安全に関わる重大リスクを懸念せざるを得ないほどの高まりを見せている」と述べた。

 現地紙ロサンゼルス・タイムズは、同大の安全・リスク管理を担当するエロール・サザーズ(Erroll Southers)上級副学長の談話を引用し、大学側は電子メール、電話、手紙による脅迫を受けていると伝えた。

 大学の決定についてタバスムさんは、「私の声を封じ込めるためのヘイトキャンペーンに屈した結果」だと批判。「反イスラム、反パレスチナの声は、万人の人権に対する揺るぎない信念を持つ私を人種差別的な憎悪のキャンペーンにさらした」と声明で非難した。

【翻訳編集】AFPBB News

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