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基本的にタフな設計の5.5L V型12気筒

クラシック・フェラーリとして、注目度は上昇傾向にある550 マラネロ。長期間ガレージで保管されてきた例より、定期的に公道で乗られてきた例の方が、初期のメンテナンス費用は抑えられる可能性が高い。

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4カム48バルブのV型12気筒エンジンは、550 マラネロのリリースまでにアップデートを受けており、ボッシュ・モトロニック社製インジェクションとECUの制御下で485psを発揮。低回転域から滑らかに吹け上がり、4000rpm以上でパワーが炸裂する。


フェラーリ550 マラネロ(1996〜2002年/英国仕様)

当時の試乗評価で指摘された唯一の弱点は、燃費だけだった。基本的にタフな設計ではあるが、念のため包括的な点検・整備を正規ディーラーや専門ショップで受けることをオススメしたい。

その予算は、英国では最低でも3000ポンド(約57万円)程度は必要。状態にもよるが、1万ポンド(約189万円)前後を用意しておいた方が、万が一の修理にも対応できる。

また予め、あらゆる箇所からの液体漏れがないか確かめたい。主なチェックポイントは、パワーステアリングラックのパワステフルード漏れ、エンジンのバンク部分からのラジエタークーラント漏れ、エンジン上部や後端からのエンジンオイル漏れなど。

トランスミッション・フルードクーラーからの、フルード漏れも要観察。1997年式から1998年式の場合は、燃料タンクからのガソリン漏れにも注意したい。走行時にエンジンから不自然な振動が出る場合は、クランクプーリーの故障が疑われる。

驚異的なコーナリングスピードに圧倒される

クラッチは、普通に乗っていれば8万km程度は交換不要。シフトレバーは、冷間時に動きが渋くなる場合は珍しいものの、温まるまでは2速だけ硬くなることはあるようだ。

550 マラネロでも、多くのフェラーリのように、アフターマーケット製のエグゾーストシステムが組まれていることが珍しくない。触媒が備わらないアイテムは、車検に通らないので注意したい。


フェラーリ550 マラネロ(1996〜2002年/英国仕様)

タイヤは、丁寧に走らせれば2万km前後は使えるが、積極的に扱えば早く摩耗する。18インチのピレリPゼロで、フロントは225/40、リアが295/35というサイズだ。適切な承認アイテムを履きたいところ。

キーは、フォブ部分がブラックのものが2本、レッドのコントローラー付きが1本、合計3本付いていることを確かめる。特にレッドのキーがない場合、アラームのコーディングに大きな費用がかかってしまう。

エアバッグの警告灯が消えない場合は、バッテリーの不調が原因かもしれない。これは比較的安価に交換できる。

本調子なら、操縦性は完璧。ブレーキは揺るぎない。シャシーバランスは秀抜で、コーナリングスピードは驚異的に高い。それでいて、足回りは柔軟に動き、乗り心地は素晴らしい。グランドツアラーとして、走行中の車内は思いのほか静かでもある。

さも当然のように高速で突き進み、目的地まで極めて短時間で安楽に到着できることを知れば、上品な550 マラネロへ圧倒されるに違いない。

購入時に気をつけたいポイント

ボディとシャシー

基本的にボディは腐食しにくい。スチール製フレームにアルミニウム製パネルが巻かれている、ボンネットとトランクリッドのリップ部分は、化学反応で腐食しがち。フロントガラスとリアガラスは、ボディから剥がれる場合がある。

アルミホイールは、オリジナルはスピードライン社製だった。だが、亀裂が入ることを理由にリコールがかかり、BBS社製へ置換されている。クリア層は剥がれやすい。

エンジン


フェラーリ550 マラネロ(1996〜2002年/英国仕様)

タイミングベルトの交換は、3年毎が指定されている。ラジエター・クーラントやエンジンオイルの漏れ、クランクプーリーの不調、アンダートレイのダメージなどがないか調べたい。

電気系統

エアコン・コンプレッサーのシールからガス漏れする可能性がある。フロントガラス付け根の排水口が詰まり、ECUへ雨水が流れていないか観察する。

トランスミッション

トランスアクスルは基本的に堅牢だが、初期型ではフルード不足に注意。クラッチのミートポイントが不自然に手前過ぎないか、レリーズベアリングからの異音がないか確かめたい。クラッチは、普通に乗っている限り8万km程度は耐える。

インテリア

柔らかいレザーは、収縮やひび割れが生じやすい。ダッシュボードやエアバッグカバー、メーターパネル周辺は特に傷みやすい。シートアジャスターの動作や、サイドボルスターの裂けにも注意。

ドアハンドルやスイッチ類など、プラスティック製部品のコーティングは粘つきがち。専門ショップへ依頼すれば、解決可能だ。

クラシケ認証

フェラーリの公式クラシック認証制度、クラシケを取得済みの個体なら一層望ましい。しっかり手入れされ、優れた状態にあることを示している。550 マラネロで取得している例は、まだ珍しいようだ。

フェラーリ550 マラネロのまとめ

極めて高性能なFRのフェラーリ、550 マラネロ。長距離を疲れ知らずで運転でき、落ち着いた雰囲気を好む人には好適なクラシック・フェラーリだ。安価に購入・維持できるモデルではないものの、素晴らしいカーライフを過ごせるはず。

予め、近年の整備記録は充分に確かめたい。購入後に、高額の修理へ追われる可能性を避けるために。クラシケ取得には費用がかかるが、信頼性を高められ、車両価値も上昇する。


フェラーリ550 マラネロ(1996〜2002年/英国仕様)

購入後は、念のため専門ショップで点検を受けたい。恐らく多くの情報を有するはず。

良いトコロ

スペアパーツの入手は難しくなく、専門ショップでの整備も受けやすい。より年式の古いスーパーカーより扱いやすく、ランニングコストも抑えられる。フェラーリ・ファンにとっては、理想的な高性能グランドツアラーだといえる。

良くないトコロ

フェラーリだから、専門ショップでのメンテナンスは不可欠。ガレージで長期間保管されていた車両の場合、走り出せるまでに高額が必要になることも。

フェラーリ550 マラネロ(1996〜2002年/英国仕様)のスペック

英国価格:14万9701ポンド(新車時)
生産数:3083台(合計)
全長:4550mm
全幅:1935mm
全高:1258-1277mm
最高速度:299-320km/h
0-97km/h加速:4.2秒
燃費:3.9-6.0km/L
CO2排出量:−
車両重量:1693kg
パワートレイン:V型12気筒5474cc 自然吸気 DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:485ps/7000rpm
最大トルク:57.8kg-m/5000rpm
ギアボックス:6速マニュアル(後輪駆動)