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【第1話】から読む。

前回からの続き。私は就職してひとり暮らしをしているアヤ(21歳)です。母は感情の起伏が激しく、怒ると手がつけられなくなるところがありました。私はいつも母の望む言葉を探し、母の機嫌を損なわないようにふるまってきました。ただそんな生活をこれ以上続けられないと思い、短大を出ると実家から遠く離れた場所で就職をしたのです。はじめて体験する「母の顔色を気にしなくていい生活」は、想像以上に快適! そんな生活に慣れると、母の元に戻りたいとは思えなくなりました。帰省をめぐって母に一方的に叱られ、私はとうとう「娘をやめる」と母に絶縁宣言をしたのでした。



「言えるじゃん……」ようやく母に歯向かうことができた自分が、信じられませんでした。母からはその後、何度も何度も着信がありました。スマホの「お母さん」という文字が目に入ると、昔のことが思い出されます。



「私はもうお母さんに振り回されないで生きていくんだ」そう決意すると、私は着信が鳴りやまないスマホを置きました。それ以来、私は母と連絡を取っていません。私のことを気遣ってくれていた姉には、母とのやりとりの一部始終を話しました。



「ごめんね……アヤの大事な入試時期に、私の出産がかぶっちゃって……」「ううん、お姉ちゃんを選んだのはお母さんだもん。お姉ちゃんのせいじゃないよ。でもね……もうお母さんに振り回されたくない」私が決意したようにそう伝えると、姉もうなずいてくれました。「うん。それでいいよ」



「大丈夫。お母さんのことは私が見ているから。アヤのこと、気付いてあげられなかった代わりに、これからは私がお母さんからアヤを守る盾になる。その代わり、お母さんと会わなくても私とは会ってくれる?」「うん。お姉ちゃん、ありがとう」「良かった……」



母と過ごしてきた日々は、息の詰まる毎日でした。幸せなときがまったくなかったといえば嘘になりますが、その幸せの中でも私はいつも気を張って過ごしていた気がします。母に絶縁を言い渡しても、なかなか抜け出せないのが「親子」の宿命でしょうか。けれど自分らしく生きていくために、私は振り返らず前へ進んでいくつもりです。



こんなことくらいで母を捨てた私は、親不孝かもしれません。あれから母からの連絡はパタリとなくなりました。母なりに私のことを考えて、私の絶縁を受け入れてくれたのかもしれません。母と離れたことに一ミリの後悔も感じていませんが、いつか時が経ってもう一度話したいと思えるようになったら、私たちは親子をやり直すことができるのでしょうか……? 「子どもが幸せになる」ことが親孝行だとしたら、私が母に絶縁を言い渡すことが最大の親孝行なのだと、母に分かってもらえていると嬉しいなと思います。

原案・ママスタコミュニティ 脚本・渡辺多絵 作画・猫田カヨ 編集・井伊テレ子