新しいホテルが誕生するごとに東京の景色が変わっていくが、2023年は動きが大きかった。

インバウンドが完全復活し、カジュアルからラグジュアリーまで個性を放つホテルが次々と誕生。

東京のホテル業界が大きく変わろうとしているうねりの中で、ホテルをこよなく愛する、東京カレンダー副編集長・中野&ライター・大石が、いまの情勢を総括した!

・副編集長 中野愛子
ラグジュアリーホテルを愛して20年弱。久々の海外泊ではナイル川を数日かけてクルージング。エジプトの太陽を浴びつつ船上のプールで遊んだあとのシャンパンは最高でした!

・ライター 大石智子
雑誌編集者を経てライターへ。ホテル、食、酒、インタビュー記事を執筆する。温泉街から南米最南端まで、これまで泊まったホテルは800軒以上。バルコニーのあるホテルが好き。

(※掲載内容は取材当時のものです)


2023年は、ホテルが未知の世界を東京にもたらした年!



【Trend 01】強いブランドの開業ラッシュで、東京ホテル界の勢力図が一変した!


中野:2023年は、外資の新規やブランド力の強いホテルの開業ラッシュでしたね。

大石:初上陸、「ブルガリ ホテル 東京」の第一印象、40階は久々に衝撃でした。



4月に開業した「ブルガリ ホテル 東京」の40階にあるバイタリティプール。古代ローマの浴場のモザイクにヒントを得た扇模様が


中野:客室フロアへの扉が開く瞬間!

大石:私、絶対にほわ〜って浮かれた笑みを浮かべたはず。あの瞬間を味わうためにまずバーに遊びに行ってほしい。

中野:実際は『ブルガリ バー』への動線は扉の手前なので、雰囲気だけでも。

大石:いまの宿泊価格だと気軽には泊まりづらいですが、世界観を知るためにバーを大推薦。

お酒の価格は他ホテルと変わらないし、やっぱり「ブルガリ ホテル」はどの都市も王者の風格がある。

中野:各都市でハイレベルといえば、エディションも。12月12日に「東京エディション銀座」がソフトオープン!



本オープンは24年2月予定の「東京エディション銀座」。外壁にもグリーンがあしらわれ道ゆく人の目を奪う


大石:上海に行った時、他のホテルの広報さんに「エディションのバーはイケメン客が多いから!」と推されて(笑)。

確かに客層がその街の華やかなトップ層の印象。銀座もお洒落な人が集まりそう。

中野:カクテルも格別だし、音楽もいい感じですしね。「ホテル虎ノ門ヒルズ」は?昨夜行ってましたよね?



12月6日に開業した「ホテル虎ノ門ヒルズ」のパノラマコーナースイートは東京タワーをベッド正面に望む


大石:客室前の廊下の色味に惹き込まれました。なかなか見ないニュアンスの赤茶で。

あと全客室に浄水器専用の水栓をつけたラグジュアリーホテルは初。蛇口をひねってそのまま飲料水を飲めます。

中野:もはやミネラルウォーターのボトルを置かないってことですか?

大石:はい、これがサステナブルかつ楽かと。追加ボトルを頼む手間が省けます。

中野:ラウンジもあるんですよね。

大石:そこも他にはない空間で、チェックアウト前後に休める個室やシャワーブースがあるんです。イメージは航空会社のファーストクラスのラウンジ。しかも全宿泊客が利用できるという。


中野:2023年開業のホテルって完全に未知のものを見せてくれるところが多くて、「TRUNK(HOTEL) YOYOGI PARK」の、あの代々木公園ビューも、よくこの立地に気づいて実現したな、と。



9月の開業後、満室続きの「TRUNK(HOTEL) YOYOGI PARK」。宿泊は24年に期待


大石:あそこまで樹齢の長い木々が目の前に茂るインフィニティプールって唯一無二だし、森抜けに高層ビルが見えるコントラストも面白い。プールが6階という絶妙の高さだから成せる絶景です。

中野:その景色に合わせるように客室もナチュラルな素材感で、1日泊まるだけでも、すっかり癒されそう。

大石:立地でいうと渋谷の旧ドン・キホーテ跡地の「ホテルインディゴ東京渋谷」や歌舞伎町の映画館やボウリング場跡地の「HOTEL GROOVE SHINJUKU」と「BELLUSTAR TOKYO」は、字面だけでワクワクします。

もしも自分が旅行者だったら、あのカオスだけどお洒落な空気感の東京を楽しんでみたいかも。



「ホテルインディゴ東京渋谷」は8月に開業。大規模複合施設の上層階に位置する


中野:歌舞伎町の2軒は、都市開発している企業が造ったホテルで、立地が流石にインパクト大とも感じました。

大石:確かに。あと2023年の取材は本当にインバウンドに混じりながらでしたね。その分料金が上がるのは致し方なし。

中野:自粛中に幻のような特価を体験したけど、宿泊のハードルが上がった(涙)。



5月開業、「BELLUSTAR TOKYO」のモダンフレンチ『Restaurant Bellustar』。天井には植物など繊細なモチーフの球体アートが


大石:海外の富裕層やメディアが戻ってきたのも、2023年初めて開催された「世界のベストホテル50」で「アマン東京」が世界5位、「星のや東京」が世界39位に選ばれた要因ですよね。

宿泊体験が投票の前提となるアワード。ブランド力で上から選ぶか、日本らしさを期待して高級旅館にするか、そういう選択の理由がありそうですから。

中野:世界5位は快挙だし、「星のや東京」はいまニーズが大復活してますね。


【Trend 02】いまホテルを楽しむなら、特別感あるバーがいい


大石:パッと見カジュアルな服装でも、絶対に超富裕層だろうという欧米人を東京と京都のラグジュアリーホテルでよく見るんですよ。勝手に有名DJかIT系だと思ってるんですけど。

そういうご時世だから、都民は等身大のホテル遊びとしてバーを楽しむのがいいのかなと。



「キンプトン新宿東京」のルーフトップにあるバー『86』。アメリカ禁酒法時代から着想を得たカクテルや、アジアンソウルフードを提供する


中野:ホテルで飲むお酒の一杯って、ラグジュアリーな空間込みの価値があって、やっぱり美味しい。

「キンプトン新宿東京」のルーフトップ『86』や、大規模改装したばかりの「ウェスティンホテル東京」のバーなど、既存ホテルの新しいバーもできていますしね。



12月4日に施設全体の大規模改装を終えて再オープンした「ウェスティンホテル東京」。スカイバー『エスカリエ』では渋谷の『The SG Club』が創作したカクテルを用意


大石:改めてデートの待ち合わせや2次会でホテルのバーを推したい。提案されたら絶対に嬉しいですよね!!

中野:個人的願望ですね(笑)。



「ザ ロイヤルパーク キャンバス 銀座コリドー」内の紹介制バー「Champagne Bar Room312 by LILI LA YULI」。予約の上、2階バーカウンターでルームキーを受け取り店へ入る。シャンパンをグラスで10種類ほど提供


中野:ホテルのバーって立地的に夕焼けが綺麗なところも多いし、キャパも大きいからふらりと入りやすいし、バーテンダーの全体レベルも高くて、いいことづくめ。


【Trend 03】インバウンド向けの洒落たホテルは穴場感あり!


大石:最近はビジネスユースだと思っていたホテルのバーも遊びが効いてきて、11月に開業したばかりの「メルキュール東京羽田エアポート」のバーも意外なほど鮮やかなデザインだったりするんですよ。

「メルキュール」ってどこもシンプルな内装のイメージでしたが、場所によって個性があるんだなと。インバウンド向けでしょうけど、空港好きだし、一度泊まってみたい。



羽田空港からクルマで8分の位置に開業した「メルキュール東京羽田エアポート」。ワークスペースも充実


中野:メルキュールは24年4月、国内に23軒一気に開業するそうですよ。カジュアルなホテルのインバウンド狙いも熱い。

同じく11月開業の「SAKE Bar Hotel 浅草」は、“日本や日本酒を存分に味わいたい外国人のためのホテル”と銘打っていて、お酒の品ぞろえにも期待。日本人だけど行ってみたい!



「SAKE Bar Hotel 浅草」は、神奈川県伊勢原市の酒蔵、吉川醸造の「雨降///あふり」をメインに日本酒を存分に楽しむことができるホテル。チェックイン時に渡される枡を持って宿泊者限定ラウンジへ行くと、その日おすすめの日本酒が飲み放題となる


大石:帰る心配いらない系……。最後にひとつ気になっていることが。新しいホテル、ほとんどがベッドサイドにUSBポートを付けてたのに、タイプCが使えず胸が痛みます。

逆に8月に開業した「ザ・リッツ・カールトン福岡」がタイプCだったのは、やるな!と。

中野:では、24年以降のホテル予想は、タイプCが増えるということで。

大石:地味な〆ですが、そんなとこです。


地方の宿もハイレベル!中野と大石が注目しているのはココ



― 大石CHOICE ―
「Simose Art Garden Villa」


「醍醐味は世界的建築家・坂 茂氏の泊まる建築作品、名作のリメイクとなるヴィラに宿泊できること。

美術館の屋上テラスから見る大竹コンビナートの夜景に見惚れますし、ギャラリーも見応え十分!」


■施設概要
施設名:Simose Art Garden Villa
住所:広島県大竹市晴海2-10-50
TEL:0120-907-090
料金:1泊夕朝食、客室内ドリンク、美術館チケット、送迎付2名 130,000円〜



― 中野CHOICE ―
「蛙〜KAWAZU」


「岐阜県の造園文化の発展に寄与した曽根氏庭園(磁叟庵庭園)内に2023年秋に開業した、1日1組の会員制オーベルジュ。美しい日本庭園の中で、悠久の時を感じたい。

オーナーで料理人の永井敏人氏の料理も気になります」


■施設概要
施設名:蛙〜KAWAZU
住所:岐阜県瑞浪市陶町猿爪1104
TEL:090-4412-2424
料金:年間会員費 100,000円〜、1泊1名 88,000円(オールインクルーシブ)〜の会員制宿