毎月、映画とワインのマリアージュを提案していく連載、ほろ酔いシネマ。

今月は、チョコレートが物語のカギを握る、心温まる大人のドラマ『ショコラ』。

本日はバレンタインデー!ワインと映画とチョコレートで、甘い夜を過ごしてみては?

▶前回:Vol.12「『「キングスマン」シリーズ』×イギリスのサン・ジュリアン」


バレンタインデーには、チョコ主題の名作を


新谷:今回、柳さんにはジュリエット・ビノシュ主演の『ショコラ』を観ていただきました。

:ジュリエット・ビノシュといえば『ポンヌフの恋人』。彼女、取り立てて美人というわけではないけど……ワンコ系の愛嬌ある顔でぼくの好みですねぇ。

新谷:ビノシュは『ポンヌフの恋人』のあとハリウッド映画にも多数出演するようになって、1996年の『イングリッシュ・ペイシェント』ではアカデミー助演女優賞を受賞しています。

この『ショコラ』では2000年のアカデミー主演女優賞にノミネートされましたね。

:とてもいい映画でした。なぜか「コメディドラマ」にカテゴライズされてるんですが、そんなお笑い要素あったかな。

嵩倉:いったい、どんなストーリーなんですか?

新谷:時代は1959年、フランスの片田舎が舞台です。北風の吹くある寒い日、赤いコートを着た母娘がやって来ます。

ビノシュ演じる母親のヴィアンヌはその村でチョコレート店を開き、悩みを抱える村人たちの心をチョコレートの魅力でつかんでいくのですが、信仰に厚く保守的な村長のレノ伯爵と対立。

そこにジョニー・デップ演じるジプシーのルーがやって来て……という展開ですね。


今月のワインシネマ『ショコラ』


チョコレート店を開くため、フランスの小さな村にやってきたヴィアンヌとその娘。懐疑的だった街の人々も、ヴィアンヌが作るチョコレートに癒され、それぞれの悩みを解決していく。

言わずと知れた名作の他、『サイダーハウス・ルール』などで知られる名匠ラッセ・ハルストレムが描く大人のドラマ。




想像以上にドラマチック!チョコレートは人の体も心も癒してくれる


いろいろな種類のチョコレート、そしてジュリエット・ビノシュとジョニー・デップの演じる旅人同士のロマンスにうっとり。

チョコレートの食べ過ぎは……という罪悪感も解放してくれます!



:劇中、ボートに乗って現れた彼らを、娘のアヌークが「海賊」と呼ぶシーンがありますが、まさかその3年後、本当に海賊を演じることになるとは(笑)。

新谷:はい、ジャック・スパロウ!さらに2年後、『チャーリーとチョコレート工場』に出演するのもなにかの縁かと。

:この映画『ショコラ』も脇を固める俳優がすごくて、チョコレート店の建物の家主で、娘と折り合いの悪い老婆役を、「007」シリーズでMを演じたジュディ・デンチが演じます。

またその娘を「マトリックス」シリーズのトリニティー、キャリー・アン・モスが演じてますね。

新谷:監督はスウェーデン人のラッセ・ハルストレムで、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』『ギルバート・グレイプ』などを撮った名匠。

ちなみに奥さんは、作中、夫のDVに悩み、ヴィアンヌの家に逃げ込んできた女性、ジョゼフィーヌ役のレナ・オリンです。


じつは意外と難物なワインとチョコのペア


:物語の最後、教会を中心にカメラがどんどん引いていって村全体が見えてくるじゃないですか。すると集落の周りがブドウ畑なんですよ。それで撮影地はどこかと調べたら……。

嵩倉:どこでした?

:フラヴィニー・シュール・オズランという人口300人程度の小さな村なんだけど、なんと、ブルゴーニュ地方の一部だった。

嵩倉:ほぉ!すると、今回はブルゴーニュ・ワイン?

:ダメダメ。

嵩倉:なんで?

:今回は新谷さんから、チョコレートに合わせるというミッションをいただいてるから。ところが、昔からチョコレートはワインの敵とされているんだ。

新谷・嵩倉:えーっ!

:チョコレートにはポルトガルのトウニー・ポートとか南仏ルーション地方のバニュルスとか、甘口の酒精強化ワインが定番だけど、2時間の上映中、ずっと甘口のポートを飲み続けるのはつらい。

嵩倉:ブルゴーニュがダメな理由はなんですか?

:やっぱり酸だね。ブルゴーニュで栽培されるピノ・ノワールという品種は酸味が強いので、チョコレートの甘味とバッティングしてしまう。ただ……。

嵩倉:ただ?

:カリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンならいけるかも。ブルゴーニュほど酸は高くないし、タンニンも果実味の中に溶け込んでる。

しかもテイスティングコメントにしばしば「カカオ」と書き込むくらい、香ばしいフレーヴァーのものが多いからね。

新谷:例えば?

:このクインテッサ。ナパ・ヴァレーのプレミアム・カベルネのひとつで、数パーセント含まれるカルメネールがスパイシー。

ちょっと値は張るけど、「チョコレートは私が用意するから、ワインはこれをお願い」って男性にリクエストすればオーケー。


「QUINTESSA QUINTESSA 2019(クインテッサ クインテッサ 2019)」


1989年、ナパ・ヴァレーのラザフォードに設立されたクインテッサ。

ボルドーのシャトーコンセプトをお手本に、造られるワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンをベースとした赤ワイン「クインテッサ」のみ。

敏腕コンサルタントとして名高いミシェル・ロランが携わる。

49,500円/ファインズ TEL:03-6732-8600



嵩倉:え〜ん、そんな神様みたいな殿方がいないから、いまだに義理チョコ配りまくってるのに〜。


マリアージュをお届けするのはこの3人!


幅広い分野の雑誌で執筆を手掛け、切れ味あるコメントに定評があるワインジャーナリスト。今月のワインセレクトにはかなり苦戦!疲れたのでチョコ食べよう……。




デパ地下でたんまりチョコレートを買い込み、ワイン&チョコ&映画という至福の冬時間を満喫中。昨年からシナリオ講座に通学、いつかワインの話も書きたい。




本連載の担当になって7年目に。ワインの知識は着実に積みあがっていると信じ、柳氏にしがみつく日々。ジョニー・デップは、出演作を全網羅するほどに大好きな俳優。


▶このほか:老舗と新店が共存する「日本橋」。新たな賑わいをみせる、この街のいまに迫る!