新卒でないと入りにくいが、勤続年数は長い91社

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2位にランクインした明治安田生命(撮影:今井康一)

最近の企業の社員採用では、職務内容に合ったスキルを持つ人材を採用する「ジョブ型」を選択する会社が増えてきた。一方で、新卒一括採用などを重視する「メンバーシップ型」を継続する会社も多い。そういった会社では、むしろ新卒でないと入りにくい場合もある。

そこで今回は、『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2024年版の掲載データを使い、2023年4月新卒入社者(一部、通年採用や第2新卒等を含む)と、2022年度の中途採用者数の合計に対して、新卒採用者が占める割合を「新卒採用占有率」として算出した。

このうち採用人数が新卒・中途合計50人以上かつ新卒採用占有率が80%以上、平均勤続年数が15年以上の91社を新卒採用占有率が高い順にランキングした。新卒採用でないと入りにくいが、社員が長く働いている企業の一覧として活用していただきたい。

1位の企業は新卒採用占有率が97.8%


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1位は新卒採用占有率97.8%の伊予銀行。愛媛を中心に瀬戸内地方に展開する地方銀行だ。新卒採用人数は135人。中途採用はパートタイマー等からの登用制度により毎年数名を採用している。同行は2022年からジョブ型とメンバーシップ型の要素を融合したコース別人事制度や総合職の専門領域を細分化する「キャリアフィールド」という概念を導入している。

同業では岐阜県西部を地盤とする大垣共立銀行も新卒採用占有率が95.9%で3位にランクイン。同行は新卒採用の選考コースに、特定分野での秀でた取り組みや実績を評価する「バラエティ・タレントコース」を設けている。

2位は96.8%の明治安田生命(新卒採用人数300人、以下同)。「総合職(全国型)」「総合職(地域型)」間の職種変更制度や、結婚・介護等で転居が必要になった場合の勤務地変更制度、結婚・出産・育児・介護等で退職した場合の再雇用制度など、子育てや介護に配慮している点が特徴だ。

以下、4位は四国電力95.7%(67人)、5位はいなげや95.4%(62人)、6位は東北電力95.2%(238人)、7位は三機工業94.7%(89人)、8位は滋賀銀行94.5%(104人)、9位は宝ホールディングス94.4%(51人)、10位はNIPPON EXPRESSホールディングス93.7%(237人)と続く。

新卒採用人数が最も多かったのはスズキ

ランキング対象企業のうち新卒採用人数が最も多かったのは、52位スズキ(新卒採用占有率85.5%、以下同)で734人。続いて72位大和ハウス工業(82.5%)の684人だった。

また、平均勤続年数が長かったのは、41位めぶきフィナンシャルグループ(87.6%)で25.0年、9位宝ホールディングスが23.8年と続いた。最後に平均年収は、28位伊藤忠商事(91.2%)の1730万円、41位めぶきフィナンシャルグループの1234.5万円などが高かった。


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全体の新卒採用占有率は55.7%だった(対象は新卒・中途採用人数いずれかが1人以上の1067社、以下同)。同占有率は、『CSR企業白書』2022年版62.7%(1000社)、同2023年版60.6%(1015社)と低下傾向だ。

しかし、『CSR企業総覧』に掲載されている大手企業の採用は依然として新卒が中心だ。業種別に見ても、電気・ガス業83.7%(13社)、銀行業77.3%(30社)など、新卒採用を重視する業種は多い。

ただ、これらの企業が旧態依然とした雇用制度を敷いているというわけではない。とくにランキング上位には、人事制度の再構築や兼業・副業制度・社内FA制度などの導入、育児支援や在宅勤務など柔軟な働き方を後押しする制度の整備に取り組む企業も多い。勤続年数の長さからも良好な労働環境であると評価することもできる。




(山谷 明良 : 東洋経済データ事業局)