自身のYouTubeチャンネルでは、野球に興味をもってもらうため、見ず知らずの10人とキャッチボールを(バウアーの公式YouTubeチャンネルより)

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「バウアーがいる場合といない場合」

 横浜DeNAベイスターズ・春季キャンプ第1クール最終日の2月4日、昨季のセ・リーグ最多勝投手の東克樹(28)が初ブルペン入りした。変化球も交えて30球程度だったが、途中からともに最優秀バッテリー賞を受賞した捕手の山本祐大(25)がパートナー役に代わると、球速、変化球のキレも一気に増した。

【写真を見る】バウアー戻ってこい!? ベイのキャンプはこの盛り上がりだ(横浜DeNAベイスターズの公式Instagramより)

 遠巻きに見ていた三浦大輔監督(50)は、ひと安心といった表情だった。

「カブスと契約した今永昇太(30)と、トレバー・バウアー(33)の抜けた穴をどう埋めるかが、今シーズンのカギとなります。当然、東が背負う責任も大きくなりました」(スポーツ紙記者)

 その裏で三浦監督は、球団OBの解説者やフロントスタッフに、こんなことをこぼしていたそうだ。

自身のYouTubeチャンネルでは、野球に興味をもってもらうため、見ず知らずの10人とキャッチボールを(バウアーの公式YouTubeチャンネルより)

「バウアーがいる場合と、いない場合の両方の先発ローテーションを考えている」

「DeNAは1月23日に監督、コーチ、フロント職員が集まりスタッフ会議を開きました。そのときも、バウアーがいる場合といない場合の両方の話が出ました」(球団関係者)

 昨シーズンの今永の成績は7勝4敗。バウアーは10勝4敗。2人合わせて41登板4完投17勝分を埋めなければならない。バウアーはメジャー復帰を模索中だが、DeNA帰還もありえない話ではない。2月中旬に始まるメジャーリーグのスプリングキャンプが近づくにつれ、その可能性は高まってきたといってもいい。

 三浦監督を始めとするコーチ、フロントスタッフが「いる場合」も想定して話をしたということは、バウアー側から残留の可能性があることを聞かされているからではないかとも思えるのだ。

メジャー復帰は「ない」

「米球界を追われる原因ともなった女性への性的暴行の疑惑は相手側との和解が成立し、解決しました。でも、MLBでは関係者の多くがバウアーのメジャー復帰は『ない』と見ています。彼が現役生活を続けたいと思うのならNPBか、メキシコなどの海外リーグに行くしかないでしょう」(米国人ライター)

 米テレビ局Fox Newsの番組「America's Newsroom」は1月4日(日本時間5日)、バウアーをゲストに招き、MLB帰還への思いを質問した。「代理人が何球団かと話をしてくれたが、契約のオファーやキャンプでの招待選手の話はない」と打ち明けている。その一方、MLB復帰を強く望んでいることを明言し、これまでの私生活での反省も語っていた。

 しかし、この放送の数日後、かつてレッズ、ナショナルズでゼネラルマネージャーも務めた、MLB解説者のジム・ボウデン氏が、硬派なメジャーリーグ情報でも知られるYouTubeチャンネル「Foul Territory」にリモート出演し、「私見だが」と前置きした上で「彼のメジャーでのキャリアは終わった」、「本当に終わったかって? Absolutely not!(絶対にない)」と語気を強めて言い切った。

「もう、MLBで彼にオファーをするチームは1つもないよ。私は16年間GMを務め、その間、球界の誰よりもセカンドチャンスをあらゆる選手たちに与えたつもりだ。でも、私が今もそういう役職にいたとしても、バウアーにはチャンスは与えられない」

 ボウデン氏は、WHIP(1イニングあたり何人の出塁を許したか)1.15、QS(6イニング以上投げ、自責点3以下)率は78.95%と、素晴らしい成績をバウアーが残し、かつ日本球界の仕来りやチームに馴染もうと努力していた様子も伝えていた。しかし、バウアーのメジャー復帰に関しては完全否定したのである。

「女性への暴行の騒動は疑惑であっても、相手側との和解が成立しても、MLBは独自に制裁を加えるルールを設けています。同じような罪を犯したものの、過去には復帰が叶った選手もいました。しかし、バウアーはサイ・ヤング賞にも選ばれた有名選手なので、メディアによる疑惑の扱いも大きく、報道量も多かった。その影響もあるのだと思います」(前出・米国人ライター)

 MLB時代についたあだ名「変人」の片鱗も、この直後に見せていた。

 21年、静岡県富士宮市で2人が死亡する交通事故があった。その実刑判決を受けていた米海軍の男性が23年12月に米国へ移送され、24年1月12日に釈放された。そのニュースを見たバウアーが、「Welcome home(おかえりなさい)」とSNSに投稿したのだ。死者が出ている事件である。後日、「愛する人を失ったご家族に苦痛を与えるつもりは全くありません」と謝罪もしたが、バウアーのYouTubeチャンネルにも批判コメントが殺到した。

NPBで投げるしかないのか

「野球ファンは誰もがその実力を認めていますが、米国でのバウアー人気について言えば、好きか嫌いかで聞くと、アンチの方が多い。スタンドのファンがブーイングをしたら、マウンドからボールを投げる暴挙もあったし、綿密な調整をして次の登板に備えるので面白みがないと思われているようです。でも、オフにはたくさんのボランティア団体に寄付もしています。彼の日本での背番号は『96』でしたよね? 寄付するボランティア団体の数も96なんです。日本では96マイル(約155キロ)から取ったと報じられましたが、米国では寄付するボンティア団体の団体数から取ったと解釈されていました」(前出・同)

 独自の調整方法も米国では面白みがないと言われたかもしれないが、日本での評価は違う。DeNA投手陣は敬意を示し、他球団のファンも好意的に見ていた。「トップレベルで野球がしたい」とは言っていたが、NPBのほうが居心地も良いのではないだろうか。

 2月2日に配信されたポッドキャスト番組「PBD Podcast」に出演した際、バウアーは「リーグ最低年俸(74万ドル=約1億840万円)でプレーする覚悟もできている」とまで言い切っている。

 その番組内でのやり取りが興味深い。司会者はバウアーの熱い語り口とは対照的に、冷静な口調でこう聞き返した。

「世論はどういうことに問題を感じているのだろう?」

 バウアーはひと呼吸を置いてから、呟いた。

「私と契約すると、(チームが)女性を軽視しているように見られてしまう。考え方は人それぞれだが、チーム内の伝統、雰囲気を乱すかもしれない。スポンサーが辞退する可能性だってあるしね」

 ボウデン氏がGMを務めたレッズは、バウアーにとっても古巣だ。レッズの“大先輩”は感情的に「Absolutely not!」と言うだけだったが、オファーのない理由はバウアー自身がいちばん分かっているようである。

デイリー新潮編集部